1月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―

  • 2022年01月01日更新

1月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! 2022年の幕開けに観たいのは、どの映画!?

LINE UP
1/8(土)公開『春原さんのうた
1/14(金)公開『アイム・ユア・マン 恋⼈はアンドロイド
1/14(金)公開『シチリアを征服したクマ王国の物語
1/14(金)公開『フタリノセカイ
1/15(土)公開『安魂
1/15(土)公開『異物 -完全版-
1/15(土)公開『サイキッカーZ
1/15(土)公開『ひかり探して
1/21(金)公開『さがす
1/22(土)公開『三度目の、正直
1/28(金)公開『きみは愛せ
1/28(金)公開『クレッシェンド 音楽の架け橋
1/29(土)公開『誰かの花
1/29(土)公開『テレビで会えない芸人


『春原さんのうた』

ただ当然のように存在する心揺さぶる情景

4首の短歌を原作にした前作『ひかりの歌』が高い評価を受けた杉田協士監督が、再び短歌をモチーフに珠玉の作品を織り上げた。美術館の仕事を辞めてカフェでアルバイトを始めた沙知は、川沿いのアパートの部屋に引っ越す。新しい環境で新生活に臨む沙知だったが、心の片隅にはある人の残像がいつまでも消えずにいた。原作は東直子の短歌「転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー」。この歌から杉田監督が自由に発想したのと同様、映画自体も見る者それぞれの想像に委ねる。前の住人を訪ねてきた女性が爪弾くギター、突然涙を流すおじさんとおばさんなど、何の説明もなく描かれるドラマになぜか心が揺さぶられる。誰もがマスク姿の街の風景もただ当然のように存在するだけだが、それでも確かな物語が感じられるから不思議だ。(藤井克郎)

2022年1月8日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/120分)脚本・監督:杉田協士 出演:荒木知佳、新部聖子、金子岳憲、伊東沙保 ほか 配給:イハフィルムズ ©Genuine Light Pictures


『アイム・ユア・マン 恋⼈はアンドロイド』

ほんの少し怖さが見えるロマンティックなファンタジー

映画『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』メイン画像ダン・スティーヴンス主演のドイツ発ロマンティックムービー。第71回ベルリン国際映画祭で銀熊賞<最優秀主演俳優賞>を受賞。博物館で楔形⽂字を研究する学者アルマは研究資⾦を稼ぐため、とある企業の極秘実験に参加する。そこに現れたのは紺碧の瞳で彼女を熱く⾒つめるハンサムなトム。彼はアルマの性格とニーズに完璧に応えられるようプログラムされた⾼性能AIアンドロイドだった……。理想的過ぎるがゆえに、”物”であることを認識せざるを得ない。だが、寂しさを癒してもくれる。そんなトムの存在はアルマの中で徐々に大きくなる。2人の微妙な関係は、切なく甘い。近い将来、アンドロイドが恋の相手になる日は来るのだろうか。AIが思いやりや優しさを学習したり、悲しみを感じたりし始めたらどうなるのか。不思議な余韻の中、現実味のあるファンタジーにほんの少し怖さも感じた。(吉永くま)

2022年1月14日(金)より全国順次公開 公式サイト 本編特別映像
(2021年/ドイツ/107 分/PG-12 )英題:Iʼm your man  監督:マリア・シュラーダー 出演:ダン・スティーヴンス、マレン・エッゲルト、ザンドラ・ヒュラー ほか 配給:アルバトロス・フィルム © 2021, LETTERBOX FILMPRODUKTION, SÜDWESTRUNDFUNK


『シチリアを征服したクマ王国の物語』

人間と力を合わせて平和を築き上げたものの……

1945年に発表されたディーノ・ブッツァーティの児童文学を原作に、イタリア出身の漫画家でアーティストのロレンツォ・マトッティ監督が、繊細な色使いに大胆な構図の個性的なアニメーションに仕立てた。吹雪に見舞われた旅芸人のジェデオンと助手のアルメリーナが洞窟で暖を取っていると、冬眠から起こされた老クマがやってくる。ご機嫌を取ろうと、ジェデオンはシチリアのクマ王国の物語を語るが、この話には続きがあった。一頭一頭が躍動するクマたちの描写もさることながら、背景がびっくりするくらい美しく、特に影の部分のグラデーションが見事。せっかくクマが人間と力を合わせて平和な王国を築き上げたのに、その後日談には現実社会への風刺が込められている。単に楽しいだけのアニメーションになっていないのが素晴らしい。(藤井克郎)

2022年1月14日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/フランス、イタリア/82分)原題:LA FAMEUSE INVASION DES OURS EN SICILE 監督・グラフィックデザイン:ロレンツォ・マトッティ 日本語吹き替え版:柄本佑、伊藤沙莉、リリー・フランキー ほか 配給:ミラクルヴォイス ©2019 PRIMA LINEA PRODUCTIONS – PATHÉ FILMS – FRANCE 3 CINÉMA – INDIGO FILM


『フタリノセカイ』

トランスジェンダーの青年と恋人の10年にわたる愛の軌跡

映画『フタリノセカイ』メイン画像結婚や子どもという現実問題に悩みながら、幸せな未来を模索し続けるシスジェンダーのユイとトランスジェンダーの真也。自身もトランスジェンダーである飯塚花笑監督が、フタリの10年にわたる愛の軌跡を描く本作は、性同一性障害者の苦悩や、同性婚を認めていない日本の婚姻制度、戸籍上の性別を変更するための性別適合手術をめぐる問題などを浮き彫りにしつつも、愛する人と一緒に生きたいと願うすべての人々に通じる普遍的な思いと葛藤を活写する。ユイを演じたのは、『茜色に焼かれる』(石井裕也監督)で第46回報知映画賞の新人賞に輝いた片山友希。トランスジェンダーの真也役に挑んだのは、話題の映画やドラマへの出演が続く坂東龍汰。若手実力派として注目を集める二人が、繊細で複雑な感情の機微をみずみずしく表現する。常識や固定概念にとらわれず、ユイと真也が選びとった未来への希望に胸が震えた。(min)

2022年1月14日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/83分/PG-12 )監督・脚本:飯塚花笑 出演:片山友希、坂東龍汰、松永拓野 ほか 配給:アークエンタテインメント ©2021 フタリノセカイ製作委員会

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『フタリノセカイ』飯塚花笑監督×片山友希さん×坂東龍汰さんインタビュー


『安魂』

死に別れた息子の魂を探し求める父の悲しみ

中国の人気作家、周大新の実体験に基づく小説を、『こどもしょくどう』の日向寺太郎監督が全編中国ロケで映画化した。一人っ子政策で生まれた息子、英健の幸せを願う作家の唐大道は、英健が連れてきた恋人が農村出身であることを理由に別れさせる。父親に反発する英健だが、程なくして急病で他界。悔やみきれない大道は、息子の魂はまだ近くにいるはずと探し回るが……。河南省の古都、開封の味わいある町並みを舞台に、家族の喪失の物語が時に神秘性を伴って描かれる。『うなぎ』(今村昌平監督)などのベテラン脚本家、冨川元文の予定調和ではない筋立てと、大道を演じた実力派俳優、ウェイ・ツーの実直な演技が、日向寺監督の温もりのある描写で絡み合い、合作ならではの深みをもたらしていた。(藤井克郎)

2022年1月15日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/中国、日本/108分)監督:日向寺太郎 出演:ウェイ・ツー(巍子)、チアン・ユー(強宇)、ルアン・レイイン(欒蕾英)、北原里英 ほか 配給:パル企画 ©2021「安魂」製作委員会


『異物-完全版-』

異色オブ異色! 世界を熱狂させる宇賀那健一監督の新境地

『異物 完全版』異物_小出薫『サラバ静寂』などの宇賀那健一監督が、新年早々、自身の新境地ともいえる作品を日本に放つ。ある日突然現れた “異物” に翻弄される人々の姿を描くエロティック不条理コメディ『異物』をはじめ、『適応』『増殖』『消滅』の4つの短篇からなる本作は、海外ではすでにシリーズ累計20ヵ国70以上の映画祭に入選し、11のグランプリを獲得。イタリア国営放送の映画番組に監督と主演の小出薫で出演した際には、司会者から「35年の番組の歴史の中で一番の作品」とまで言わせしめた異色オブ異色の作品だ。奇怪なフォルムの生物=異物の出現によってあぶり出されるのは、いつの世にもある理不尽さと、それに右往左往する人間の愛すべき滑稽さ。クローネンバーグ、ジャームッシュ、スピルバーグ……さまざまな映画へのオマージュを節々に感じさせながら、コメディとも、ラブストーリーとも、ホラーともつかぬストーリーが展開する。掴みどころのない作品の温度感を絶妙に体現したキャストたちの個性と魅力も必見だ。(min)

2022年1月15日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021 年/日本/61 分)英題:”Extraneous Matter-Complete edition” 監督・脚本:宇賀那健一 出演:小出薫、田中俊介、石田桃香、吉村界人、田中真琴、宮崎秋人、ダンカン、高梨瑞樹、田辺桃子 ほか 配給:Vandalism ©『異物-完全版-』製作委員会

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『サイキッカーZ』

カラフルな個性と木場明義監督の愛が溢れる人気シリーズ長編版!

映画『サイキッカーZ』長編版_画像1脱力系の笑いで国内外の映画祭を席巻した短編超能力コメディ『サイキッカーZ』シリーズが、待望の長編映画となってスクリーンに帰ってきた。今作では超能力者集団「サイキッカーZ」結成の前日譚と、メンバーたちの日常がモキュメンタリータッチで描かれる。過去2作に続き、主人公の“炎の使い手アキラ”を演じるのは、中山雄介。さわやかな笑顔とたゆまぬ努力で「サイキッカーZ」のリーダーとして奮闘するアキラだが、その微笑みには報われる実感を持てぬまま歳月を重ねていく夢追い人の悲哀が滲む。コロナ禍で制作された本作のキャストはなんと総勢75名! 役者や映画監督など、自主映画ファンにはたまらない顔ぶれが次々に登場するのも本作の魅力だが、そこには一人でも多くの役者やスタッフに活躍の場を提供したいという、木場明義監督の熱い映画愛が込められている。ユルい笑いを随所に散りばめつつ、うだつが上がらぬ日常を懸命に生きる人々へのエール、多様な個性が混ざり合うことで生まれる無限の可能性を、カラフルな色彩で表現したようなエンディングが美しい。まさか『サイキッカーZ』にホロリとする日が来るとは……! 新年の幕開けに、笑って元気をもらえる一作だ。(min)

2022年1月15日(土)より全国順次公開 公式Twitter 予告編動画
(2022年/日本/79分)監督・脚本・編集:木場明義 出演:中山雄介、吉見茉莉奈、鈴木まゆ、嶋村太一、美南宏樹、小島彩乃、安楽涼 ほか 製作・配給:イナズマ社

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『ひかり探して』

嵐の夜に失踪した少女の謎を追う女刑事

台風の夜、離れ小島に一人で暮らしていた少女、セジンが姿を消した。職場復帰を目指す女性刑事のヒョンスは、セジンが断崖から身を投げて自殺したことを確認するため、島に向かう。1981年生まれの女性、パク・チワン監督の長編第1作で、離島を舞台に暗く重苦しいサスペンスが展開する。裕福な家庭で育ったセジンが島に来た理由は何なのか。ヒョンスはなぜ刑事職を離れなければいけなかったのか。それぞれの過去が少しずつ明らかになるにつれて、時を隔てた2人の思いが重なっていく。激しい暴風雨の描写にうら寂しい島の情景、1人暮らしのそっけない部屋、口の利けない神秘的な女性の存在、と不気味な要素がいっぱいで、これに社会性がありそうでなさそうなミステリーが絡む。韓国女性監督の層の厚さに、改めて感じ入った。(藤井克郎)

2022年1月15日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/韓国/116分)原題:내가 죽던 날 英題:The Day I Died: Unclosed Case 監督・脚本:パク・チワン 出演:キム・ヘス、イ・ジョンウン、ノ・ジョンイ ほか 配給:スモモ、マンシーズエンターテインメント ©2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved


『さがす』

父が失踪した中学生の娘に訪れる意外な結末

自主映画の長編第1作『岬の兄妹』が大いに評判を呼んだ片山慎三監督が、やはり自らのオリジナル脚本で商業映画に挑んだ。だらしのない父親と2人で暮らす中学生の楓はある日、父の智が姿を消したことに気づく。必死になって捜す楓の携帯に、智から「捜すな」とメールが入るが……。楓の行動に焦点を当てた序盤から一転、徐々に時をさかのぼる後半になるにつれて、智の失踪の理由や周辺の人々とのつながりが次第に明らかになっていく展開が鮮やか。この手の因縁話はトリッキーでファンタジー色が強いというのが相場だが、題材が意外なほどダークで、しかも今日的な社会性を伴っているということに驚いた。片山監督の練りに練った語り口に加え、楓を演じた伊東蒼の巧みさ、空撮を駆使した映像の多様さなど見どころいっぱいだ。(藤井克郎)

2022年1月21日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/日本/123分/PG-12) 監督・脚本:片山慎三 出演:佐藤二朗、伊東蒼、清水尋也 ほか 配給:アスミック・エース ©2022『さがす』製作委員会


『三度目の、正直』

記憶喪失の青年をめぐって起きる家族内の摩擦

『ハッピーアワー』で濱口竜介監督と共同脚本を務めた野原位監督の劇場第1作。未婚のパートナーの連れ子である高校生の蘭が留学し、寂しい思いをしていた春はある夜、公園に倒れていた記憶喪失の青年を介抱する。実家に連れていった春は青年を「生人(なると)」と名付け、しばらく住まわせることにするが、母親も弟も春の行動が理解できなかった。春だけでなく、精神科医のパートナーも別れた元夫も、ラッパーの弟もその妻も、みんないわくありげな背景を抱えつつ、心の中にしまい込んで生きている。それがふとしたきっかけで表面に出てきたときの摩擦を、野原監督はあえて醜さをあらわに描き切る。春を含めて共感できない人物だらけだが、それはとりもなおさず現代人の誰しもの姿だからだと気づかされて愕然とした。(藤井克郎)

2022年1月22日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/112分) 監督・脚本・編集:野原位 出演:川村りら、小林勝行、出村弘美 ほか 配給:ブライトホース・フィルム ©2021 NEOPA Inc.


『きみは愛せ』

若者三者三様の愛とセックスの物語

2021年公開の劇場第1作『愛うつつ』で愛とセックスの矛盾を描いた葉名恒星監督が、さらにこのテーマを重層的に掘り下げた。カナザワ映画祭「期待の新人監督スカラシップ」の第1回作品。親友の朋希と同居する慎一は、朋希の妹の凛を憎からず思っているが、凛には好きな人がいることを知っている。愛にもセックスにも興味がないように振る舞う慎一に対して、ぎらぎらと脂ぎった朋希は次々とセックスを重ねるが、心には空虚さを感じていた。「愛だな、愛」が口癖の朋希に対して、本当の愛を追求しているのはストイックすぎる慎一の方かもしれない。そんな三者三様の愛に関する物語は、意外な結末に向かって疾走する。飄々とした風情に本音を見え隠れさせた慎一役の海上学彦の巧さが光る。(藤井克郎)

2022年1月28日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/日本/103分) 脚本・監督:葉名恒星 出演:海上学彦、細川岳、兎丸愛美 ほか 配給:映画の会 ©2020「きみは愛せ」製作委員会


『クレッシェンド 音楽の架け橋』

パレスチナ問題の根深さを奏でる混成オーケストラ

世界的な指揮者のスポルクは、紛争中のパレスチナとイスラエルから若手の音楽家を集めてオーケストラを編成し、平和を祈るコンサートを開くというプロジェクトを引き受ける。オーディションで選出した双方の実力差は歴然で、練習では争いが絶えない。スポルクは両者の融和を図るため、南チロルで3週間の合宿を行うことにするが、スポルクにとっても自分の過去に向き合う必要があった。イスラエル人とアラブ人が混在する実在のオーケストラから着想を得て、イスラエル出身のドロール・ザハヴィ監督が映画化。音楽の持つ力を信じたいという希望と、それでもパレスチナ問題は解決が困難という絶望が織り交ざって、重みのあるハーモニーを奏でる。せりふを全く排したラストシーンに息が詰まった。(藤井克郎)

2022年1月28日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/ドイツ/112分)原題:CRESCENDO #makemusicnotwar 監督・脚本:ドロール・ザハヴィ 出演:ペーター・シモニシェック、ダニエル・ドンスコイ、サブリナ・アマーリ ほか 配給:松竹 © CCC Filmkunst GmbH


『誰かの花』

緻密な脚本で強烈に揺さぶる、それぞれの “正義”

横浜シネマ・ジャック&ベティ30周年企画映画。今作が長編第2作となる奥田裕介監督が、“正義” と“赦し”というテーマを実力派キャストを迎えて描く。強風が吹き荒れる日、団地のベランダから植木鉢が落下し、下を歩いていた男性に直撃する。主人公の孝秋(カトウシンスケ)は同じ団地に住む認知症の父親を心配して駆けつけたが、父の忠義(高橋長英)は何事もなかったかのように自宅にいた。だがベランダの窓は開き、忠義の手袋には土が……。これは不幸な事故なのか、それとも……? 交通事故で兄を亡くし被害者遺族として苦悩してきた孝秋が、一転して父への疑念に苛まれていくという皮肉。愛する者を守るために事実を隠す孝秋の思いは “罪” なのか——?  サスペンスフルな緊張感を途切れさせず、何気ないシーンの一つひとつにまで観る側の正義を問うかのような細やかな演出を施し、さらに終盤に向っては“赦し” という難題にも果敢に挑む。奥田監督はこの緻密な脚本を描くために、一体どれほどの心血を注いだのか。俳優陣の力演とともに、子役の太田琉星の存在感にも舌を巻いた。(min)

2022年1月29日(土)より全国順次公開(2021年12月18日〜24日 横浜 シネマ・ジャック&ベティ先行上映終了)公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/115分)英題:Somebody’s Flowers 脚本・監督:奥田裕介 出演者:カトウシンスケ、吉行和子、高橋長英、和田光沙、村上穂乃佳、篠原篤、太田琉星 ほか 宣伝・配給:GACHINKO Film © 横浜シネマ・ジャック&ベティ30周年企画映画製作委員会

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『テレビで会えない芸人』

彼はなぜテレビの世界と決別したのか

映画『テレビで会えない芸人』メイン画像テレビでは見かけないが公演はいつも満席だという芸人、松元ヒロ。社会風刺コント集団「ザ・ニュースペーパー」の元メンバーで、かつてはテレビ出演も多かった彼だが、なぜ今はテレビに出ないのか、なぜテレビと決別したのか。そんな“テレビで会えない”芸人が追求する笑いや生き方を鹿児島テレビが追う。普段は優しい表情で穏やかに話す彼だが、政治や社会問題、時にタブーにも切り込むそのネタは極めて鋭く強烈で、それらに対して見て見ぬふりをしたり、当たり障りのないことしか言えなかったりする自分の心に突き刺さる。なかでも、 日本国憲法を擬人化した演目「憲法くん」の凄みは圧巻。権力に忖度しない気骨と、人に対する温かさを持ち合わせるベテラン芸人の魅力を存分に引き出しながら、彼を通じて生温いバラエティ番組や同調を良しとする社会の風潮に一石を投じるドキュメンタリーだ。(吉永くま)

2022年1月14日(金)より鹿児島ミッテ10、ガーデンズシネマにて先行公開、1月29日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021 年/日本/81分)監督:四元良隆、牧祐樹 プロデューサー:阿武野勝彦 出演:松元ヒロ 製作:鹿児島テレビ放送 配給:東風 © 2021 鹿児島テレビ放送

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