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7月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―
- 2022年06月30日更新
7月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! あなたが観たいのは、どの映画!?
LINE UP 7/1(金)公開『ヘタな二人の恋の話』 7/1(金)公開『モガディシュ 脱出までの14日間』 7/1(土)公開『リコリス・ピザ』 7/2(土)公開『宇宙人の画家』 7/2(土)公開『シネマスコーレを解剖する。コロナなんかぶっ飛ばせ』 7/2(土)公開『初仕事』 7/2(土)公開『マルケータ・ラザロヴァー』 7/8(金)公開『X エックス』 7/9(土)公開『WANDA/ワンダ』 7/15(金)公開『キャメラを止めるな!』 7/16(土)公開『Blue Island 憂鬱之島』 7/29(金)公開『アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台』 7/29(金)公開『C.R.A.Z.Y.』 |
『ヘタな二人の恋の話』
注目の新シネマレーベルが放つ、ささやかでかけがえのない恋の話
“生きづらい世の中を懸命に生きる若者たちの恋とセックスを描く” 新レーベル、「マヨナカキネマ」第一弾作品。新鋭・佐藤周がメガホンを執り、いまおかしんじの脚本で、生きるのがヘタな男女の出会いから別れまでの7年間を描く。道で泥酔する綾子(街山みほ)を家に連れて帰った祐太(鈴木志遠)。行きずりで始まった恋だが、人とのコミュニケーションが不得手な二人は、時に支え合いながら日々を重ねていく。年月の経過とともに変化していく関係性やセックスの在り方。あることをきっかけに、想い合いながらも不可避となっていく別れ……。甘美なだけではない生々しい恋を描きながら、そこには愛の核心のようなものが浮かび上がる。冷蔵庫のモーター音などのなにげない日常の描写が、ささやかでかけがえのない恋を彩るように心に残った。(min)
2022年7月1日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/日本/86分/R15+)監督:佐藤周 脚本:いまおかしんじ 出演:街山みほ、鈴木志遠、川瀬陽太 ほか 配給:キングレコード © 2022「ヘタな二人の恋の話」製作委員会
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『モガディシュ 脱出までの14日間』
凄まじい緊迫感で描かれる脱出劇
ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの決死の脱出を描く。2021年度韓国映画No.1の大ヒット作。1990年、ソマリアの両国大使館は国連加盟を目指しロビー活動にあけくれ、それぞれの妨害工作もエスカレートしていた。そんななか内戦が激化。暴徒の襲撃を受け大使館を追われた北朝鮮のリム大使は、敵対する韓国大使館に助けを求める……。オールモロッコロケを敢行。首都モガディシュの街で繰り広げられる当時の光景を、凄まじい緊迫感で見事に再現した。一方、90年代初頭の空気感、ユーモアや人情、カーアクションなどのエンターテインメント要素もふんだんに盛り込み、映画としての面白さもさらに追求。韓国映画のパワーを目の当たりにできる。生き残るために南北が手を取り合うという実話ベースの物語だが、一筋縄ではいかない関係性のなかにほろ苦さと少しの希望が感じられた。(吉永くま)
2022年7月1日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/韓国/121分)原題:모가디슈 英題:ESCAPE FROM MOGADISHU 監督:リュ・スンワン 出演:キム・ユンソク、ホ・ジュノ、チョ・インソン ほか 配給:ツイン、 カルチュア・パブリッシャーズ © 2021 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS & FILMMAKERS R&K All Rights Reserved.
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『リコリス・ピザ』
ちぐはぐな2人が織りなすビターな青春模様
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などで世界的な評価を受けてきたポール・トーマス・アンダーソン監督が、原点に回帰するようなちょっぴりビターな青春映画を編み上げた。1970年代のハリウッド近郊。学校アルバムの撮影会場でカメラアシスタントをしていたアラナは、子役として活動している高校生のゲイリーと出会う。ありったけの言葉で言い寄ってくるゲイリーに根負けしたアラナは、ゲイリーとのデートに応じるが……。どことなくちぐはぐな2人の関係を中心に、ショーン・ペンやブラッドリー・クーパーといった演技派が演じる風変わりな大人たちが絡んで、奇妙なエピソードが次々と描かれる。『ザ・マスター』などアンダーソン作品の常連だった俳優、フィリップ・シーモア・ホフマンの忘れ形見でゲイリー役の新人、クーパー・ホフマンの新鮮な演技も見ものだ。(藤井克郎)
2022年7月1日(金)より全国公開 公式サイト
(2021年/アメリカ/134分/PG12)原題:LICORICE PIZZA 脚本・監督:ポール・トーマス・アンダーソン 出演:アラナ・ハイム、クーパー・ホフマン、ショーン・ペン、トム・ウェイツ、ブラッドリー・クーパー ほか 配給:ビターズ・エンド、パルコ © 2021 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.
『宇宙人の画家』
理解を超えた筋立てで破天荒にほとばしる映像感覚
カナザワ映画祭2020の「期待の新人監督」に選ばれた保谷聖耀監督が、そのスカラシップで撮影した作品。中間部のモノクロ画像にアニメーションや特殊効果も駆使して、映像的に凝りに凝った意欲作に仕上がっている。〈虚無ダルマ〉が支配するK市にアメリカのスパイ、ジョージ・ワタナベが送り込まれる。殺し屋に襲われた隣人のアイを救出したワタナベは、アイとともに〈虚無ダルマ〉が探している謎の機械、達磨光現器の調査に乗り出すが……。光現器を巡る攻防の途中で突然、画面はモノクロに変わり、中学校を舞台にしたいじめの物語に転換。どうやらここで登場する漫画がカラーパートのストーリーのようなのだが、何ら説明がないまま大スペクタクルへと突進する。筋立てはまるで理解不能ながら、破天荒な勢いで縦横無尽にほとばしる映像感覚に圧倒された。(藤井克郎)
2022年7月2日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/97分) 監督・編集・動画:保谷聖耀 出演:渡邊邦彦、丸山由生立、呂布カルマ ほか 配給:ブライトホース・フィルム © 2022,Eiga-no-kai
『シネマスコーレを解剖する。コロナなんかぶっ飛ばせ』
ミニシアター愛から浮かび上がる大衆文化の脆弱性
名古屋に39年続くミニシアター、シネマスコーレのコロナ禍での奮闘ぶりに密着したドキュメンタリー。名古屋テレビの製作で、同局の菅原竜太ディレクターが監督を務めた。1983年に若松孝二監督が創設したシネマスコーレは、開業時から支配人を務める木全純治と、奇想天外なイベントを仕掛けてきた副支配人の坪井篤史の個性あふれる2人を中心に、全国でも知る人ぞ知る存在の映画館だ。だが2020年、新型コロナウイルスの感染拡大で客足が激減し、生き残りを懸けて木全支配人らの挑戦が始まる。同館の日々の表情を追うだけでなく、奥田瑛二らゆかりの人々へのインタビューに過去のお宝映像もちりばめて、シネマスコーレがいかに大切な場所かを描出。たっぷりのミニシアター愛に加えて、図らずも日本の大衆文化の脆弱さが浮かび上がってくる。(藤井克郎)
2022年7月2日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/日本/93分) 監督:菅原竜太 出演:木全純治、坪井篤史、奥田瑛二 ほか 配給:メ~テレ(名古屋テレビ放送)、シネマスコーレ ©メ~テレ
『初仕事』
赤ん坊の死体撮影に挑むカメラアシスタント
写真館でアシスタントとして働く山下は、初めての撮影の仕事を任される。それは亡くなったばかりの赤ん坊の写真を撮るというものだった。赤ん坊の父親で依頼主の安斎を訪ねると、若い山下が来たことであからさまに不愉快そうな態度を示される。安斎役として出演もしている小山駿助監督の初長編で、2020年のTAMA NEW WAVEコンペティション部門でグランプリを獲得した。死体の写真を撮るという禁忌的な題材をモチーフに、現代の若者の人生観、死生観を、迷い、悟り、不安といった要素をちりばめて探る。遺体が置かれた1階の薄暗くじめじめした空間に比して、写真の撮影場所にした2階は白を基調とした無垢なイメージと、命と美の捉え方にはっとさせられる。対立とも融和とも異なる微妙な人間関係の描写に挑んだ意欲に感じ入った。(藤井克郎)
2022年7月2日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/日本/94分) 監督・脚本・絵コンテ・編集:小山駿助 出演:澤田栄一、小山駿助、橋口勇輝 ほか 配給:ムービー・アクト・プロジェクト ©2020 水ポン
『マルケータ・ラザロヴァー』
殺伐とした世界で生きる可憐な少女
チェコ映画史上最高傑作といわれる作品で、55年の時を経て日本初公開される。チェコ・ヌーヴェルバーグの巨匠フランチシェク・ヴラーチルが映画化。13世紀半ば、動乱のボヘミア王国。オボジシュテェの領主の娘で修道女となることを約束されていた少女マルケータは、父ラザルと敵対する盗賊騎士コズリークの息子ミコラーシュと恋に落ちる。だが、増大する王権と二つの部族間の衝突は激化していく。原作は映像化不可能といわれた同名小説で、撮影は極寒の山奥で548日間にもわたったという。荒涼とした土地、いびつな人間関係、戦いに身を投じる粗野な男たちの荒々しい息遣い。殺伐とした空気のなかで、運命に翻弄されながら生きるマルケータの姿は可憐な花のようだ。激動の渦に巻き込まれ、変化していく彼女の心情が胸に刻み込まれる。全編に散りばめられた不穏な気配や崇高さを感じさせる音楽も、叙事詩的世界に誘ってくれるだろう。(吉永くま)
2022年7月2日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(1967年/チェコ/166分)原題:Marketa Lazarová 監督・脚本:フランチシェク・ヴラーチル 原作:ヴラジスラフ・ヴァンチュラ 出演:マグダ・ヴァーシャーリオヴァー、ヨゼフ・ケムル、フランチシェク・ヴェレツキー ほか 配給・宣伝:ON VACATION © 1967 The Czech Film Fund and Národní filmový archiv, Prague
『X エックス』
ホラーから最も縁遠い存在がもたらす究極の恐怖
1979年の米テキサス州。女優の卵のマキシーンは、プロデューサーのウェインや自主映画監督のRJらと、B級映画の撮影で田舎の農場を訪れる。老農場主に宿泊場所の納屋に案内された一行は、無許可でポルノまがいの撮影を始めるが……。『ミッドサマー』のA24の製作で、能天気な若者たちに恐怖が忍び寄るという『悪魔のいけにえ』以来のアメリカンホラーの伝統に、若手のタイ・ウェスト監督が挑んだ。ホラー映画史上、最も恐怖から縁遠いと思われる存在をこんなにも怖く見せる驚きの描写に、思わず座席から飛び上がりそうになる。一方で、芸術映画を気取ったRJの撮影術など笑いの要素もたっぷりで、ホラーとコメディーとエロスに社会性も加味された遊び心が楽しい。意外な二役を演じる主演のミア・ゴスを含め、作り手の果敢な攻めの姿勢にうなった。(藤井克郎)
2022年7月8日(金)より全国公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/アメリカ/105分/R15+)原題:X 監督・脚本:タイ・ウェスト 出演:ミア・ゴス、ジェナ・オルテガ、ブリタニー・スノウ ほか 配給:ハピネットファントム・スタジオ ©2022 Over The Hill Pictures LLC All Rights Reserved.
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『WANDA/ワンダ』
漂うように生きるヒロインの不思議な魅力
バーバラ・ローデン監督・脚本・主演の日本劇場初公開作品。巨匠エリア・カザンの妻でもある彼女のデビュー作にして遺作で、世界の映画人から「忘れられた小さな傑作」と呼ばれている。ペンシルベニア州。夫に離別され子供も職も失い、持ち金もすられてしまったワンダは、薄暗いバーで知り合った傲慢な男デニスと犯罪の共犯者として逃避行を続けることになる-。うつろな表情と弱々しい声、ふわふわしてつかみどころがないワンダは、酒をおごってくれる男を渡り歩き漂うように生きる、16mmフィルムで撮影され、2010年に「低予算の質感を残すよう配慮して」修復された作品の画質は、懐かしさと新鮮さの両方を感じさせ、彼女の生き様にもぴったり合う。自立や煌めきを求めるヒロインとは対極にあり、どこにでもいそうでどこにもいない。人生に光が当たることなく陰影さえ薄いワンダに、なぜこんなに魅了されるのだろう。その姿が心に焼き付いて離れない。(吉永くま)
2022年7月9日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(1970 年/アメリカ/103 分 )原題: WANDA 監督・脚本:バーバ ラ ・ローデン 出演:バーバラ・ローデン、マイケル・ヒギンズ、ドロシー・シュペネス ほか 配給:クレプスキュール フィルム © 1970 FOUNDATION FOR FILMMAKERS
『キャメラを止めるな!』
大ヒット日本映画のフランス版パロディー
2018年に大ヒットを記録した上田慎一郎監督の『カメラを止めるな!』がフランスでリメイク。構造や展開はそのままに、オリジナルへのオマージュとパロディーが込められた痛快娯楽作に仕上がっている。「早い、安い、質はそこそこ」が売りの映像作家、レミーは、テレビで生放送するゾンビ映画の監督を引き受ける。日本でヒットした企画のリメイクだったが、集まったキャスト、スタッフは一癖も二癖もある連中だった。冒頭の30分ノーカット劇中劇など日本版を踏襲するが、役名が日本人の名前だったり、諧謔味はよりパワーアップ。たった2館のミニシアターからスタートした日本映画が、『アーティスト』でアカデミー賞を受賞したミシェル・アザナヴィシウス監督の手でリメイクされ、今年のカンヌ国際映画祭のオープニングを飾ったというだけでも感涙ものだ。(藤井克郎)
2022年7月15日(金)より全国公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/フランス/112分)原題:Coupez! 英題:Final Cut 監督・脚本:ミシェル・アザナヴィシウス 出演:ロマン・デュリス、ベレニス・ベジョ、竹原芳子 ほか 配給:ギャガ © 2021 – GETAWAY FILMS – LA CLASSE AMERICAINE – SK GLOBAL ENTERTAINMENT- FRANCE 2 CINÉMA – GAGA CORPORATION
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『Blue Island 憂鬱之島』
インタビューと再現ドラマでたどる香港の苦難
イギリスから中国に返還されて25周年となる香港は今、独自性の危機に直面している。だが香港はこれまでも数々の苦難の歴史を潜り抜けてきた。イギリス統治下の1967年に起きた「六七暴動」をはじめ、文化大革命の時代に大陸から香港に避難してきた人たち、1989年の天安門事件の余波、さらには2014年の雨傘運動など、当事者のインタビューに現在の民主化運動の活動家による再現ドラマを交えて、多角的に香港の今を見つめる。例えば民主化活動で逮捕、拘束された学生、ケルヴィン・タムが演じるのは、「六七暴動」で投獄された経験を持つ人物の若かりし頃だ。反中国、親中国と思想は異なるものの、外圧に抵抗する思いは同じで、世代を継いで変わらぬ香港人の気概が伝わってくる。『乱世備忘 僕らの雨傘運動』のチャン・ジーウン監督の長編第2作。(藤井克郎)
2022年7月16日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/香港、日本/97分) 監督・編集:チャン・ジーウン 配給:太秦 ©2022Blue Island project
『アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台』
境遇改善を求めて演じる『ゴドーを待ちながら』
1985年にスウェーデンで実際に起きた出来事を基に、演劇畑出身のフランスの脚本家、エマニュエル・クールコル監督が映画化した。役者として芽が出ないエチエンヌは、刑務所の演技ワークショップの講師を依頼される。集まった囚人は5人だけで、これまでは子どもだましの寓話しかやってこなかった。エチエンヌは自分の名声も高めたいと、サミュエル・ベケットの不条理劇『ゴドーを待ちながら』をテキストに選択。当初は不協和音の連続だったが、やがてエチエンヌの情熱が実を結び、囚人たちによる舞台公演の幕が開く。いつまでも現れないゴドーを待ち続ける、という演劇の設定と、出所する見込みのない囚人たちの境遇を重ね合わせた脚本が巧みで、程よい笑いも織り込んでテンポよく見せる。意外な結末をどう捉えるかは評価の分かれるところか。(藤井克郎)
2022年7月29日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/フランス/105分)原題:UN TRIOMPHE 監督・脚本:エマニュエル・クールコル 出演:カド・メラッド、ダヴィッド・アヤラ、ラミネ・シソコ ほか 配給:リアリーライクフィルムズ ©2020 – AGAT Films & Cie – Les Productions du Ch’timi / ReallyLikeFilms
『C.R.A.Z.Y.』
60~80年代を生きる父と息子のヒストリー
『ダラス・バイヤーズクラブ』や『カフェ・ド・フロール』を送り出し、昨年12月に逝去したジャン=マルク・ヴァレ監督の2005年作品。1960年、カナダ・ケベックの保守的な中流家庭に生まれ、5人兄弟の4男として育ったザック。思春期になると、「男らしくあれ」という父親の理想と、同性に惹かれていく自身のアイデンティティとの隔たりに葛藤するようになる-。1960年代から80年代の音楽やファッションを散りばめた本作では、ザックと父親のもどかしい関係を主軸に一家のヒストリーが紡がれる。苦悩するザックを理解せず自らの価値観を押し付ける父親も、ザックに敵意を向ける兄も、無神経だが決して悪人として描かれない。血の通った人間として監督の温かい目が注がれる。ザックや家族の日々は、愛情、反発、痛み、抑圧、解放感などが入り乱れ波乱に満ちているが、余韻は優しく爽やか。タイトルの意味が明らかになったとき、熱いものが込み上げた。(吉永くま)
2022年7月29日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2005/カナダ、モロッコ/129分 /PG12)原題:C.R.A.Z.Y. 監督:ジャン=マルク・ヴァレ 出演: ミシェル・コテ、マルク=アンドレ・グロンダン、ダニエル・プルール ほか 配給:ファインフィルムズ © 2005 PRODUCTIONS ZAC INC.
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