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『カメラを止めるな!』― ネタバレ厳禁!低予算&無名キャスト陣で描くホラーコメディに“してやられる”96分!
- 2018年06月22日更新
国内外の映画祭や口コミで話題沸騰! 業界騒然のインディーズ作品がついに劇場公開
国内外の映画祭や口コミで話題沸騰し、映画業界を騒然とさせているインディーズ作品『カメラを止めるな!』が、2018年6月23日(土)に新宿K’s cinemaと池袋シネマ・ロサで“ついに”公開となる(※以降、全国順次公開)。
監督&俳優養成スクール「ENBUゼミナール」のワークショップ、「シネマプロジェクト」の第7弾作品として製作された本作でメガホンを執ったのは、これまで6本の短編映画と長編映画1本を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠に輝いた期待の新鋭・上田慎一郎監督。今作が劇場用長編デビュー作となる。
「注目の若手監督」×「可能性を秘めた無名俳優たち」の生み出す化学反応で、これまでも『サッドティー』『退屈な日々にさようならを』(今泉力哉監督)や『川越街道』(岡大地監督)などのみずみずしく独創的な作品を輩出してきた同プロジェクトだが、今回、上田監督によるワークショップとオーディションを経て選出されたキャスト陣もかなりの個性派揃い。その一人ひとりに当て書きで執筆された脚本は、“37分に渡るワンシーン・ワンカットで描くゾンビサバイブ”を主軸に展開する、挑戦的なホラーコメディだ。
ここで、本作がどれほど話題となっていたのかを、簡単にご紹介しておこう。
2017年11月に6日間限定で行われた先行上映では、すぐさま口コミで評判となり、レイトショーながら連日とも午前中にはチケットが完売。そして、マスコミ向けの試写が始まると、著名な映画人たちがSNS等で次々と興奮まじりに感想を発信。試写室は連日満席となるほどの盛況をみせた。さらに、国内外の多くの映画祭でも話題を集め、イタリアの「ウディネ・ファーイースト映画祭 2018」で観客賞(シルバーマルベリー)の第2位に輝いたかと思えば、ブラジルの「ファンタスポア2018」のインターナショナルコンペ部門では、ついに最優秀作品賞まで獲得。さらに、今後も続々と各国映画祭での上映が決まっている。
ロジカルなシナリオか、はたまたアクシデントか? ネタバレ厳禁のドタバタ劇に「してやられる」!
“ゾンビもの”という「こすられまくった感」のある題材、しかも低予算かつ無名なキャストで描かれた本作が、なぜここまで観客たちを熱狂させるのか? インディーズらしからぬ映像美や、卓越した演技バトルといった洗練されたものを想像してしまう方もいそうなので、ここは敢えて明言しておくが、良い意味でインディーズ独特のチープ臭は漂う作品だ。では本作の一番の魅力は何かといえば、そのチープさを逆手に取った“斬新な物語の構造”と、“綿密に計算された脚本”にある。いったい、どこまでが計算で、どこまでが“ほころび”なのかがわからないドタバタ感が、楽しくて仕方がないのである(実際、脚本外のアクシデントも使われているそうだ)。
その臨場感を存分に味わうためにも、ストーリーは絶対にネタバレ禁止。ここでもこれ以上は触れないでおくし、映画を観た方はSNSなどで感想をつぶやく際にも、詳細な内容についてはぜひ「オフレコで」とお願いしたい。
限られた予算のなか、キャスト一人ひとりの個性を生かしながら“魅せる”作品を作ろうと奮闘した監督&スタッフと、それに呼応するべく自らの持てる力を作品にぶつけた役者たち。彼らの溢れる映画愛と、ものづくりへの真摯な姿勢にも心が温まる96分。映画館を出たあなたは、「してやられた!」と幸せな余韻を噛み締めることだろう。
>>『カメラを止めるな!』新予告映像<<
▼『カメラを止めるな!』作品・公開情報
(2017年/日本/96分)
英題:ONE CUT OF THE DEAD
監督・脚本・編集:上田慎一郎
出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学、市原洋、山﨑俊太郎、大沢真一郎、竹原芳子、浅森咲希奈、吉田美紀、合田純奈、秋山ゆずき
撮影:曽根剛
録音:古茂田耕吉
助監督:中泉裕矢
特殊造形・メイク:下畑和秀
ヘアメイク:平林純子
制作:吉田幸之助
主題歌・メインテーマ:鈴木伸宏&伊藤翔磨
歌:山本真由美
音楽:永井カイル
アソシエイトプロデューサー:児玉健太郎、牟田浩二
プロデューサー:市橋浩治
製作・配給:ENBUゼミナール
※2018年6月23日(土)より新宿K’s cinema、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
文:min
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