5月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―

  • 2022年04月30日更新

5月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! あなたが観たいのは、どの映画!?

LINE UP
5/6(金)公開『オードリー・ヘプバーン
5/6(金)公開『チェルノブイリ1986
5/6(金)公開『マイ・ニューヨーク・ダイアリー
5/7(土)公開『ばちらぬん
5/13(金)公開『教育と愛国
5/13(金)公開『バニシング:未解決事件
5/13(金)公開『夜を走る
5/14(土)公開『距ててて
5/20(金)公開『シング・ア・ソング! 笑顔を咲かす歌声
5/20(金)公開『ワン・セカンド 永遠の24フレーム
5/21(土)公開『辻占恋慕
5/27(金)公開『恋い焦れ歌え
5/28(土)公開『犬王
5/28(土)公開『MADE IN YAMATO

更新情報:5月9日に『バニシング:未解決事件』を追加掲載しました。


『オードリー・ヘプバーン』

慈愛に満ちたオーラを纏う“妖精”の生涯

映画『オードリー・ヘプバーン』メイン画像“銀幕の妖精”といわれた女優オードリー・ヘプバーンが63歳の生涯を閉じてから約30年。『ローマの休日』をはじめとする出演作で見せた可憐で華麗、芯の通ったヒロインの姿は、今もなお多くのファンの心を掴んでいる。本作では、そうした華やかな女優としての側面だけではなく、食べ物と愛に飢えていた子供時代、バレリーナへの夢と挫折、家族との時間を大切にする姿、紛争地域の子供たちを支え続けたユニセフ国際親善大使としての活動などを、生前の本人や親交があった人々へのインタビューと貴重な映像を交えて、その生涯を掘り下げる。なかでも、親善大使時代にそれまで控えていたメディアに積極的に出るようになった理由を語るシーンは印象的だ。彼女が心の奥にしまい込んでいた思いと活動への情熱が結びついていることを知り、胸が熱くなる。強さも脆さも併せ持つオードリーの本質に迫り、出演作以上に彼女に魅了されるドキュメンタリー。その内側から放たれる慈愛に満ちたオーラに圧倒されることだろう。(吉永くま)

2022年5月6日(金)より全国公開順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/イギリス/100分)原題:Audrey 監督:ヘレナ・コーン 出演:オードリー・ヘプバーン、ショーン・ヘプバーン・ファーラー、エマ・キャスリーン・ヘプバーン・ファーラー、ピーター・ボクダノヴィッチほか 配給:STAR CHANNEL MOVIES ©️PictureLux / The Hollywood Archive / Alamy Stock Photo、©️2020 Salon Audrey Limited. ALL RIGHTS RESERVED


『チェルノブイリ1986』

未曾有の人災を風化させない思い

映画『チェルノブイリ1986』メイン画像1986年。10年ぶりに元恋人オリガと再会した消防士アレクセイは、彼女と新たな人生を歩むことを決意する。だが、地元のチェルノブイリで原発事故が発生。さらに深刻な水蒸気爆発の危機が迫っていることを知らされる。愛する人々のため決死の作業を行うチームに志願した彼だったが、そこには想像を絶する苦難が待ち受けていた……。ソ連における歴史的大惨事の現場を緊迫感あふれる映像で見せるとともに、原発内で極限状況に置かれた作業員たちの厳しい精神的、身体的状態が、生々しく描かれる。作品からは未曾有の人災を風化させないという強い思いが滲むだけでなく、着地点を見出せない被災者の悲しみと怒りが暗に放たれているような気がした。なお、本作は2020年のロシア映画だが、プロデューサーのアレクサンドル・ロドニャンスキーはウクライナ人。彼をはじめ製作側は今回の軍事侵攻に反対の姿勢を明確に示しており、興行収益の一部はウクライナの人道支援活動を行う団体に寄付される。(吉永くま)

2022年5月6日(金)全国順次公開 公式サイト  予告編動画
(2020年/ロシア/136 分)原題: ЧЕРНОБЫЛЬ 製作・監督・主演:ダニーラ・コズロフスキー 製作:アレクサンドル・ロドニャンスキー 出演:オクサナ・アキンシナ、フィリップ・アヴデエフ ほか 配給:ツイン ©≪Non-stop Production≫ LLC, ©≪Central Partnership≫ LLC, ©≪GPM KIT≫ LLC, 2020. All Rights Reserved.


『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』

サリンジャーに悪戦苦闘する編集助手の成長譚

1990年代のニューヨークを舞台に、カナダ出身のフィリップ・ファラルドー監督が、飛びっきりチャーミングなサクセスストーリーを編み上げた。ジョアンナ・ラコフの自叙伝が原作。作家を夢見るジョアンナは、ベテラン出版エージェント、マーガレットの編集アシスタントの職を得る。担当する作家に伝説の存在のJ・D・サリンジャーを抱えるマーガレットから与えられた仕事は、サリンジャー宛てに送られてくる大量のファンレターを、すべてに目を通した後で廃棄するというものだった。ファンレターの文面をファンが自らカメラ目線で語るなど、創意に富んだ夢のある演出が楽しい。当時の女性の仕事は雑用とお茶くみだけといった社会性も盛り込まれ、文学の香りとの絶妙なブレンドに酔いしれた。(藤井克郎)

2022年5月6日(金)より全国順次公開 公式サイト  予告編動画
(2020年/アイルランド、カナダ/101分)原題:My Salinger Year 監督・脚本:フィリップ・ファラルドー 出演:マーガレット・クアリー、シガニー・ウィーバー、ダグラス・ブース ほか 配給:ビターズ・エンド 9232-2437 Québec Inc – Parallel Films (Salinger) Dac © 2020 All rights reserved.


『ばちらぬん』

国境の島、与那国を彩る「忘れない」映像

日本の最西端、沖縄県の与那国島で生まれ育った東盛あいか監督が、ふるさとの島を舞台に現実と幻想が入り交じった不思議な映像世界を織り上げた。東盛監督がカメラを向けるのは、漁業の現場や藍染めの伝統技など何気ない与那国の暮らしの風景だ。そのドキュメンタリー映像を挟みながら、赤いトウモロコシやブルーの果実、黄色いひまわりといった監督ならではの島のイメージが色鮮やかに表現される。「ばちらぬん」とは与那国の言葉で「忘れない」という意味で、それら独特の島言葉でつづられた詩の一節が、馬のお面をかぶった輪舞の映像などともに深く心に染み入ってくる。2021年のPFFアワードではグランプリに輝いた。イタリア出身のアヌシュ・ハムゼヒアン、ヴィットーリオ・モルタロッティ両監督が与那国の中学3年生の別れを捉えたフランスのドキュメンタリー『ヨナグニ~旅立ちの島~』と同時上映。(藤井克郎)

2022年5月7日(土)より全国順次公開 公式サイト  予告編動画
(2021年/日本/61分) 監督・脚本・撮影・編集・美術・与那国語指導:東盛あいか 出演:東盛あいか、石田健太、笹木奈美、三井康大、山本桜 配給:ムーリンプロダクション © HIGASHIMORIAIKA


『教育と愛国』

教室や教科書で起きている実態を誠実に伝える

2017年に放送された大阪・毎日放送のテレビ番組を基に、追加取材と再構成を行い、時宜にかなったドキュメンタリー映画に仕立てた。監督を務めたのは、同局で20年以上にわたって教育現場を取材している斉加尚代ディレクター。2006年、第一次安倍政権下で教育基本法が改正され、愛国心条項が盛り込まれる。以来、学校の教室で、教科書の出版社で、どんな事態が起こっているのか。斉加監督はさまざまな立場の人々に丁寧に取材を重ね、特に歴史や道徳の教科における実態を追究していく。歴史修正主義者にも臆することなく素朴な疑問をぶつけ、なるべく誠実に伝えようとする姿勢には共感を覚える。ただ子どもたちの未来のためにも反戦の思いだけは譲れないという芯の強さはにじみ出ていた。(藤井克郎)

2022年5月13日(金)より全国順次公開 公式サイト  予告編動画
(2022年/日本/107分) 監督:斉加尚代 語り:井浦新 配給:きろくびと ©2022映画「教育と愛国」製作委員会


バニシング:未解決事件

臓器売買を巡る韓仏合作クライムサスペンス

映画『バニシング:未解決事件』メイン画像「賢い医師生活」のユ・ヨンソクと『007/慰めの報酬』のオルガ・キュリレンコ共演の臓器売買をテーマにした韓仏合作映画。体中が傷だらけで指紋が奪われた遺体がソウルで発見される。刑事のジノは事件解決のため、来韓中の法医学者アリスに協力を要請。遺体の身元の特定が難しく臓器も抜き取られていることを知った2人は、背後の組織を追い詰めるべく捜査に挑む。犯罪組織の卑劣さを見せるだけでなく、社会の闇に生きる者の生々しい私生活や苦悩を浮き彫りにすることで、物語に深みが加わった。監督はフランス出身のドゥニ・デルクール。彼が描くソウルには、美しく近代的な側面と昔ながらの人々の生活の匂いが混在し、そこにアリス役のキュリレンコが驚くほど自然に溶け込む。特別な感情が生まれるアリスとジノ刑事の関係性や、作中に飛び交う韓国語とフランス語、英語の響きの心地良い調和が、シリアスな題材によって生み出される重苦しさを救っている。エンターテインメント性の高いクライムサスペンスだ。(吉永くま)

2022年5 月 13 日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021/フランス、韓国/88 分) 原題:Vanishing 監督・脚本:ドゥニ・デルクール 出演:ユ・ヨンソク、 オルガ・キュリレンコ、イェ・ジウォン ほか 配給:ファインフィルムズ © 2021 The French Connection


『夜を走る』

コロナ後の息苦しい社会で別次元の人間に飛躍

『教誨師』で生と死の問題に向き合った佐向大監督が、コロナ後の殺伐とした社会を背景に、娯楽の要素をたっぷりと盛り込んで人間の業について掘り下げた意欲作。鉄くず工場に勤める秋本は真面目で優しいだけが取り柄の男で、営業成績の悪さからいつも上司に罵倒されていた。だがある日、産廃業者の女性社員が営業で工場を訪れたことがきっかけで、生活も性格も一変する。途中からまるで別次元の人間に飛躍する秋本を、いぶし銀の足立智充が弾けた表現で熱演。ミステリーとサスペンスとコメディーが入り交じった怒涛の展開で、行き場のない現代社会の息苦しさを鮮烈に切り取る。日本の夜を駆け抜ける秋本の一挙手一投足に肉薄する撮影監督、渡邉寿岳のカメラワークからも目が離せない。(藤井克郎)

2022年5月13日(金)より全国順次公開 公式サイト  予告編動画
(2021年/日本/125分) 脚本・監督:佐向大 出演:足立智充、玉置玲央、菜葉菜、高橋努 ほか 配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム ©2021『夜を走る』製作委員会


『距ててて』

ユーモアの中にピリリと描く人間模様、予想もしない映画体験!

映画『距ててて』メイン画像1「へだててて」と読む印象的なタイトルの本作は、俳優・ダンサー・振付師と多彩に活動する監督の加藤紗希と、俳優・脚本家の豊島晴香による初の長編映画。古い一軒家で共通の友人と共同生活を送る写真家志望のアコ(加藤)とフリーターのサン(豊島)。友人の長期不在で二人暮らしを余儀なくされた彼女たちは真逆の性格で、ささいなことにも互いに違和感を覚えてしまう。そんな噛み合わない生活と、彼女たちが出会う人々が織りなす日常の中の違和感やおかしみを4章立てで描く。古民家暮らしの画作り、とぼけた響きの音楽、カップルのイタがゆい痴話げんかなど、ユーモラスでチャーミングに空気を紡ぎながら、人間関係のもどかしさや難しさがピリリと描かれる。几帳面でしっかり者のアコの未熟さや、フリーターでいい加減に見えるサンの自分を見据えた生き方など、さりげなく丁寧な人物描写にも引き込まれる。そして、ラストは予想外の展開。でも、気付けば彼女たちと一緒に笑っていた。不思議と爽快で愛おしい映画体験。ぜひ劇場で!(min)

2022年5月 14日(土)よりポレポレ東中野にて公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/78分)監督:加藤紗希 脚本:豊島晴香 出演:加藤紗希、豊島晴香、釜口恵太、神田朱未、髙羽快、本荘澪、湯川紋子 音楽:スカンク/SKANK 製作:点と © コピーライト


『シング・ア・ソング! 笑顔を咲かす歌声』

軍人の妻たちが結成した合唱団の不協和音

2009年、イギリスのとある駐屯地に、激化するアフガニスタン紛争への出征命令が下る。残された妻たちは、何とか気分を紛らわそうと合唱団を結成するが、とかく口出しをしたがる大佐の妻、ケイトと、女性たちのまとめ役のリサとの間で不協和音が生じる。そんな中、戦没者追悼式典への出演依頼が舞い込み……。『フル・モンティ』のピーター・カッタネオ監督が、キャタリック駐屯地の実話を基に映画化。戦争の影が重くのしかかる軍人の留守宅を舞台に、女性たちが不安や恐怖を乗り越えようともがく心情を、適度なユーモアとペーソスを交えながら情感豊かに描き上げる。大佐夫人を演じたクリスティン・スコット・トーマスの嫌味っぷりも楽しく、肩の凝らない反戦映画に仕上がっていた。(藤井克郎)

2022年5月20日(金)より全国順次公開 公式サイト  予告編動画
(2019年/イギリス/112分)原題:Military Wives 監督:ピーター・カッタネオ 出演:クリスティン・スコット・トーマス、シャロン・ホーガン、グレッグ・ワイズ ほか 配給:キノフィルムズ © MILITARY WIVES CHOIR FILM LDT 2019


『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』

中国の名匠が贈る映画愛に満ちたヒューマンドラマ

名匠チャン・イーモウ監督が映画への愛を込めて贈る最新作。1969年、文化大革命真っ只中の中国西北部で、1人の男が強制労働所から脱走する。映画本編前に流れるニュースフィルムに1秒だけ映る、疎遠になった娘の姿を見るためだ。彼は映画が上映される小さな村の映画館を目指す途中、フィルムの1缶を孤児の少女リウが盗むところを目撃。リウのあとを追うが……。監督自身も経験した激動の時代。だが、村にはどこかのどかな雰囲気が漂い、人々は目を輝かせて映画に見入る。脱走した男やリウ、村人たちが執着するのは両側に穴の開いた映画フィルム。それぞれ理由は異なるが、彼らにとって宝物同様であり、また映画を愛する私たちの胸もときめかせる。月明かりや太陽の光に照らされる広大な砂漠と娯楽の少ない小さな村、ほろ苦さと清々しさ、閉塞感、そして解放感。作品にはこれらが絶妙に織り込まれる。人々が映画の世界に希望を見出そうとする姿に、限りない愛おしさを感じた。(吉永くま)

2022年5月20日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/中国/103分)原題:一秒钟 監督・脚本:チャン・イ―モウ  出演:チャン・イー、リウ・ハオツン、ファン・ウェイ ほか 配給:ツイン © Huanxi Media Group Limited


『辻占恋慕』

青春の終わりをビターに歌い上げるラブストーリー

映画『辻占恋慕』メイン画像ウルフなシッシー』『アストラル・アブノーマル鈴木さん』などで話題を集めた大野大輔監督が、映画やドラマ、舞台と活躍する早織を主演に迎え、三十路同士の売れないミュージシャンとマネージャーの愛と青春の終幕を描く。ロックデュオのボーカル・信太はある日の対バンライブでシンガーソングライターの月見ゆべしに出会う。30歳を迎えても売れない二人は共鳴し、信太はゆべしのマネージャー、そして恋人となる。しかし、彼女を売り出したい信太と自分のスタイルを曲げないゆべしの溝は次第に深まり……。年齢とともに現実が重みを増し、いつしか夢が足かせにもなっていく。そんな夢追い人の葛藤を、大野監督ならではの会話劇のおかしみとともに描く。内面に愛情と熱い魂をくすぶらせながら不器用にすれ違う信太とゆべし。その描写と信太の思わぬ行動に切なく胸が焦げた。ゆべしの歌とギターは、早織本人によるもの。ギター未経験から練習を重ね、撮影では吹き替えなしの演奏で披露している。ノスタルジックなメロディーと心に沁み入る歌声が深い余韻となりいつまでも耳に残った。(min)

2022年5月21日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022 年/日本/111 分)監督・脚本:大野大輔 出演:早織、大野大輔、濱正悟、加藤玲奈、川上なな実、ひらく、福永朱梨、小竹原晋、堀田眞三 ほか 配給:SPOTTED PRODUCTIONS © 2021 E&E


『恋い焦れ歌え』

性被害を受けた男性教師が浴びる危うい刺激

小学校の臨時教員を務める仁は、ある夜、お面をかぶった暴漢に襲われ、性被害を受ける。妻にも言えず、悶々とした日々を送る仁の前に、自分が犯人だという青年が現れ、社会からドロップアウトした若者や子どもたちがたむろする廃品工場に連れていく。『パーク アンド ラブホテル』などの熊坂出監督が、コロナ禍で人心が荒廃する中、閉塞感からの魂の解放をテーマに、ラップミュージックと性暴力という今日的な題材を盛り込んで、破天荒な映像世界を作り上げた。手持ちカメラによる激しく揺れ動く画面に、耳をつんざくような大音量の効果音など、暴力的な刺激の数々が五感を震わせる。今の日本映画ではなかなか味わえない危ういエネルギーが、スクリーンからびしびし伝わってきた。(藤井克郎)

2022年5月27日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/117分/R15+) 原作・監督・脚本:熊坂出 出演:稲葉友、遠藤健慎、さとうほなみ ほか 配給:フューチャーコミックス © 2021「恋い焦れ歌え」製作委員会


『犬王』

異形の能楽師と奔放な琵琶法師の熱狂の競演

『夜明け告げるルーのうた』などの湯浅政明監督が、室町時代に実在した謎の能楽師をモデルに、ロックオペラ調のミュージカルアニメーションを織り上げた。少年時代に剣の呪いを受けて失明し、琵琶法師となった友魚は、都で異形の若者と出会う。猿楽能一座の棟梁の父から疎まれて育った若者は犬王と名乗り、やがて友魚の奏でる奔放な琵琶とともに、革新的な舞で聴衆を熱狂させていく。古川日出男の「平家物語 犬王の巻」を原作に、野木亜紀子の脚本、松本大洋のキャラクター原案、大友良英の音楽を得て、アニメーションの常識を覆すような壮大な絵巻物を構築。声を演じたアヴちゃんと森山未來の歌をフルコーラスで聴かせる贅沢な音楽の使い方に加え、雨だれなどのリアルな描写に水彩画のような遠景と、映像の豊かな表現にも心を奪われた。(藤井克郎)

2022年5月28日(土)より全国公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/97分) 監督:湯浅政明 声の出演:アヴちゃん(女王蜂)、森山未來、柄本佑 ほか 配給:アニプレックス、アスミック・エース ©2021 “INU-OH” Film Partners


『MADE IN YAMATO』

ありふれた風景の中の非日常に触れる5つの物語

厚木基地のある町、神奈川県大和市を舞台に、気鋭の監督5人が独創的な映画づくりに挑んだオムニバス作品。同市出身の宮崎大祐監督の企画で、自らその1編を監督した。首都圏の郊外に位置する大和市は、特に目を引くようなランドマークはないが、だからこそ日本のどこにでもあるような風景が映り込んで、日常と非日常の間の皮膜のような物語を彩る。例えば第3話の竹内里紗監督『まき絵の冒険』は、街のそこかしこに「39w」と書かれたステッカーを見つけた清掃職員、まき絵さんの驚きと好奇心を、シュールな笑いに包んでほんわかと描く。ほかの4話も、どこか非現実的なテイストがリアルな情景の中で展開され、ちょっと癖になりそうな面白さだ。思わず大和市に足を運びたくなる逸品。(藤井克郎)

2022年5月28日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/120分) 監督:山本英、冨永昌敬、竹内里紗、宮崎大祐、清原惟 出演:村上由規乃、尾本貴史、兵藤公美、柳英里紗、小山薫子 ほか 配給:boid/Voice Of Ghost ©踊りたい監督たちの会

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