1月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―

  • 2023年12月27日更新

1月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! あなたが観たいのは、どの映画!?

LINE UP
1/2(火祝)公開『映画 〇月〇日、区長になる女。
1/5(金)公開『ミツバチと私
1/6(土)公開『ただ空高く舞え
1/12(金)公開『弟は僕のヒーロー
1/12(金)公開『葬送のカーネーション
1/12(金)公開『燈火(ネオン)は消えず
1/12(金)公開『ビヨンド・ユートピア 脱北
1/19(金)公開『ジャンプ、ダーリン
1/19(金)公開『僕らの世界が交わるまで
1/19(金)公開『緑の夜
1/20(土)公開『チャロの囀り
1/27(土)公開『すべて、至るところにある
1/27(土)公開『その鼓動に耳をあてよ

更新情報:1月11日に『緑の夜』を追加掲載しました。


『映画 〇月〇日、区長になる女。』

さわやかですがすがしい選挙ドキュメンタリー

劇作家、演出家のペヤンヌマキ監督が、2022年6月の東京・杉並区長選を見つめたドキュメンタリー。現職の対抗馬として住民団体から出馬を要請された岸本聡子陣営に密着し、潔いくらいに公正中立を無視した作品は、さわやかですがすがしい異色の選挙映画になっている。発端は20年暮らすアパートやその周辺環境が、都市計画道路の建設で破壊されることを知ったことだった。こんな大切なことが住民不在で決められている。憤りを覚えたペヤンヌ監督が調べてみると、区政にはほかにもいろんな問題が山積していることがわかった。岸本候補本人に加え、彼女を支える住民がみな魅力的な人ばかりで、自然発生的に支援の輪が広がる様子は感動的。勝利の瞬間、興奮冷めやらぬ面持ちでうれしさを爆発させる90歳の女性住民の姿には思わず涙が込み上げた。(藤井克郎)

2024年1月2日(火)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2024年/日本/110分) 監督:ペヤンヌマキ 出演:杉並区民のみなさま 配給:映画 〇月〇日、区長になる女。製作委員会 © 2024 映画 区長になる女。


『ミツバチと私』

性自認で戸惑う8歳が片田舎で過ごすひと夏の経験

夏休みに母と姉、兄とともに祖母が暮らすスペインのバスク地方にやってきた8歳のアイトールは、誰にも心を開くことができないでいた。「坊や」を意味するココの愛称で呼ばれるのを嫌がり、プールにも入りたがらないアイトールは、叔母が営む養蜂場でミツバチと触れ合ううちに徐々に気持ちが落ち着いていく。だが自分のことを理解してくれていると思っていた母親が、そうではなかったことを知り……。バスク出身のエスティバリス・ウレソラ・ソラグレン監督が初の長編劇映画で描いたテーマは子どもの性自認の問題だった。自分でも戸惑いを消化しきれない主人公を、撮影時9歳だったソフィア・オテロが自然なたたずまいと微妙な表情で演じ切り、ベルリン国際映画祭では史上最年少で主演俳優賞を受賞した。養蜂場をはじめ、バスクの片田舎のありのままの美しさも忘れがたい。(藤井克郎)

2024年1月5日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2023年/スペイン/128分)原題:20,000 Especies de Abejas 英題:20,000 SPECIES OF BEES 監督・脚本:エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン 出演:ソフィア・オテロ、パトリシア・ロペス・アルナイス、アネ・ガバライン ほか 配給:アンプラグド © 2023 GARIZA FILMS INICIA FILMS SIRIMIRI FILMS ESPECIES DE ABEJAS AIE


『ただ空高く舞え』

庶民を飛行機に乗せる夢を叶えた男

映画『ただ空高く舞え』メイン画像(ポスター)

インド初の格安航空会社デカン航空を立ち上げた男とその仲間の軌跡を追う、実話ベースのドラマ。タミル映画界の大スター、スーリヤが製作・主演を務めた。危篤の父を見舞うため、富裕層の乗り物である飛行機に乗ろうとした空軍士官ネドゥマーラン。だが、エコノミー席が満席で搭乗できず、父の死に目にも会うことできなかった。これをきっかけに、彼は空軍時代の同期とインド初の格安航空会社を設立しようと決意し、奔走する。メガホンをとったのは女性監督のスダー・コーングラー。身分、経済格差のみならず男女格差が残る社会だが、ネドゥマーランの妻ボンミを経済的に自立し、優しさと豪放さを併せ持つ女性として描き、作品を輝かせる。庶民を飛行機に乗せたいと願う初志を貫き、妨害を受けながらも乗り越えていく主人公の底力を見せてくれる物語は、挫折を恐れる私たちの可能性も広げてくれるだろう。(吉永くま)

2024年1月6日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/インド/150分)原題:Soorarai Pottru 監督:スダー・コーングラー 監督:スダー・コーングラー 出演:スーリヤ、アパルナー・バーラムラリ、パレーシュ・ラーワル ほか 配給:特定非営利活動法人 インド映画同好会 ©2D Entertainment and the other all rights reserved.


『弟は僕のヒーロー』

ダウン症の弟の存在を隠す高校生の苦い青春譚

イタリアの高校生がダウン症の弟と撮影して大きな反響を呼んだ5分間の動画を基に、これが初長編となるステファノ・チパーニ監督が心温まる家族愛の物語を編み上げた。ダウン症の弟、ジョーのことを恥ずかしく感じていたジャックは、思いを寄せていたアリアンナはじめ同級生に、つい「弟はいない」と嘘をついてしまう。社会活動に熱心なアリアンナの気を引こうと嘘に嘘を重ねた挙げ句、ジャックは取り返しのつかないことをしでかすが……。映画初出演となるジョー役のロレンツォ・シストをはじめ、子どもたちの自然で生き生きとした表情がほっこりとした潤いをもたらす。思春期は決して取り返しがつかないことなんてないんだよ、という優しいメッセージが込められていて、差別や偏見について親子で考える良質の作品に仕上がっていた。(藤井克郎)

2024年1月12日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/イタリア、スペイン/102分/PG12)原題:Mio fratello rincorre i dinosauri 監督:ステファノ・チパーニ 出演:アレッサンドロ・ガスマン、イザベラ・ラゴネーゼ、フランチェスコ・ゲギ、ロレンツォ・シスト ほか 配給:ミモザフィルムズ ©COPYRIGHT 2019 PACO CINEMATOGRAFICA S.R.L. NEO ART PRODUCCIONES S.L.


『葬送のカーネーション』

妻の棺を故国に運ぶ老人と孫娘の人生の旅路

愛する妻の遺体を国境の向こうに届ける。そんな異色のロードムービーがトルコからやってくる。年老いたムサは見渡す限り荒涼とした風景の中、孫娘のハリメとともに重い棺を運んで旅をしていた。道中、ヒッチハイクなどで個性的な人々と出会い、示唆に富んだ言葉をもらうが、ムサの助けになることはない。彼らが目指す先は、内戦で多くの難民を生んだ故国、シリアだった。トルコの新鋭、ベキル・ビュルビュル監督の長編2作目で、老いと若さ、希望と現実といったさまざまな対比を比喩的に描き、世の中の根源に迫る。「人生に確かなことは一つしかない。それは死ぬこと」といったせりふや、幸せいっぱいの婚礼の踊りの輪の背後に響く砲弾の音など、風刺の効いた描写が次々と押し寄せる。戦争の影が遠くない土地ゆえの不安さがずしりと重い。(藤井克郎)

2024年1月12日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/トルコ、ベルギー/103分)原題:Bir Tutam Karanfil 英題:Cloves & Carnations 監督・脚本・編集:ベキル・ビュルビュル 出演:シャム・シェリット・ゼイダン、デミル・パルスジャン ほか 配給:ラビットハウス © FilmCode


『燈火(ネオン)は消えず』

ネオン職人の夫婦愛を軸に描く香港ノスタルジー

「100万ドルの夜景」とうたわれた香港のネオンサインをモチーフに、新星のアナスタシア・ツァン監督が名優、シルヴィア・チャンを主演に、ノスタルジックで力強い娯楽作品を織り上げた。腕利きのネオン職人だった夫を亡くしたメイヒョンは、とうに廃業したはずの工房に誰かが忍び込んでいることに気づく。レオと名乗るその青年は、自分は夫の弟子で、師匠がやり残したネオンを完成させたいと訴える。夫はどんなネオンを作ろうとしていたのか。メイヒョンの挑戦が始まった。ネオン職人の夫婦愛を軸に、街の灯が消えゆきつつある香港の実情を、かつてのきらびやかな繁華街のアーカイブ映像を交えて情感たっぷりに描く。決して声高に主張するわけではないが、暗い街路が象徴する当局の厳しい締めつけへのささやかな抵抗が感じられて心に染みた。(藤井克郎)

2024年1月12日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/香港/103分)英題:A Light Never Goes Out 中国語題:燈火闌珊 監督・脚本:アナスタシア・ツァン(曽憲寧) 出演:シルヴィア・チャン(張艾嘉)、サイモン・ヤム(任達華)、セシリア・チョイ(蔡思韵) ほか 配給:ムヴィオラ ©A Light Never Goes Out Limited. All Rights Reserved.


『ビヨンド・ユートピア 脱北』

命懸けの脱北行を捉えた驚異のドキュメンタリー

北朝鮮から自由を求めて国境を越えようとする人々と、彼らの脱北を助ける韓国人支援者らの勇気と苦悩を見つめたドキュメンタリー。アメリカを拠点に活動するマドレーヌ・ギャヴィン監督が手がけた。支援組織のメンバー、キム・ソンウン牧師の手引きで、ロ一家が川を渡って中国へ脱出する。80歳の祖母を含む5人家族のロ一家の脱北は容易ではない。中国、ベトナム、ラオスと逃亡経路のどこに危険の種が潜んでいるかも知れず、一家はキム牧師とともにベトナムのジャングルを深夜、何時間もかけて歩かなければならなかった。一方、息子を北朝鮮に残してきたリ・ソヨンは、大きくなった息子の脱北を計画するが……。とにかくロ一家の脱北行をカメラでずっと捉えていることに驚く。支援者も映画スタッフも含めての命懸けの逃亡劇に手に汗を握った。(藤井克郎)

2024年1月12日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2023年/アメリカ/115分)原題:Beyond Utopia 監督・編集:マドレーヌ・ギャヴィン 配給:トランスフォーマー © TGW7N, LLC 2023 All Rights Reserved


『ジャンプ、ダーリン』

ドラァグクイーンの孫と祖母の姿を通して描く、老いと尊厳

映画『ジャンプ、ダーリン』メイン画像海外のLGBTQ+映画祭で多数の受賞・ノミネートに輝いた、カナダ出身のフィル・コンネル監督による初⾧編映画。俳優を引退してドラァグクイーンの世界へ飛び込んだラッセル。彼氏の反対から逃げるように、片田舎に暮らす祖母マーガレットのもとに身を寄せるが、久しぶりに会った祖母の言動に違和感を覚える。一方、マーガレットも自分の衰えを自覚しつつ、老人ホームへの入居を拒否していた……。コンネル監督が死を前にした祖母と交わした会話、表現者として生きる選択をした自身の経験をもとに、「老い」と「尊厳」をクィア・カルチャーの中に描くドラマ。撮影時94歳のクロリス・リーチマンが、自身の顔と身体に刻まれた年輪を繕うことなくさらけ出し、マーガレットが重ねてきた年月を生々しく体現する。残念ながらこれが彼女の遺作となったが、最後まで表現に身を捧げたその姿もまた本作の主題と重なって見えた。カナダのニューウェーブバンド、ラフ・トレードの’80年のヒット曲『High School Confidential』ほか劇中曲や映像の質感に’90年代〜’00年代クィア映画のノスタルジーも感じつつ、ラッセルが同性愛者であることを、彼の母親も祖母も完全に受け入れていることが前提のストーリーが、新時代的であるとも感じた。主演のトーマス・デュプレシのキュートな笑顔も魅力的だ。(富田旻)

2024年1月19日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/カナダ/90分)英題::Jump, Darling 監督・脚本:フィル・コンネル 出演:トーマス・デュプレシ、クロリス・リーチマン、リンダ・キャッシュ ほか 配給:ライツキューブ 2020 © Big Island Productions (2645850 Ontario Inc.) ALL RIGHTS RESERVED

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『僕らの世界が交わるまで』

お互い独善的で理解し合えない母と息子

『ソーシャル・ネットワーク』などの俳優、ジェシー・アイゼンバーグが自らのオリジナル脚本で初監督に挑んだ作品で、母と息子の葛藤を今日的な視点で描く。家庭内暴力の被害者救済シェルターを運営するエヴリンは、自分の仕事は弱い立場の人々の助けになっていると信じていた。一方、身近な思いを歌にして世界中にライブ配信している高校生の息子、ジギーは、世の中のことにはとんと無関心だった。だが同じ高校に通う女子生徒で政治的な発言をするライラのことが気になるようになり、社会的な歌を作りたいと母親に相談するが……。母も子も独善的なのに自覚がなく、その勘違いが外の世界にも及んでいくという展開が、何とも痛々しくておかしい。社会福祉に動画配信という今風の題材で、理解し合えない家族という普遍的なテーマに落とし込んだ手堅さにうなった。(藤井克郎)

2024年1月19日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/アメリカ/88分)原題:When You Finish Saving The World 監督・脚本:ジェシー・アイゼンバーグ 出演:ジュリアン・ムーア、フィン・ウォルフハード、アリーシャ・ボー ほか 配給:カルチュア・パブリッシャーズ © 2022 SAVING THE WORLD LLC. All Rights Reserved.


『緑の夜』

社会に抑圧された2人の女性の哀しい絆

映画『緑の夜』メイン画像

中国を代表する女優の一人、ファン・ビンビンの復帰作で、韓国を舞台にしたサスペンスドラマ。韓国で抑圧された生活を送る中国出身のジン・シャは、職場の保安検査場でミステリアスなオーラを放つ緑色の髪の女と出会い、ふとしたことから非合法な闇の世界に足を踏み入れることになる……。仁川港国際旅客ターミナルなどの実在する場所、実際に起こり得る犯罪、高圧的な男達といった現実味のある要素が散りばめられている一方、どこか無国籍風で、危険なファンタジー世界で浮遊しているような感覚に陥る。腐り切った社会のぬかるみにはまっていく孤独な2人。やがてその間に哀しい絆が生まれる。随所で強い印象を残す“緑色”に、刹那的に生きる彼女達の足掻きを感じ、切なさが込み上げた。(吉永くま)

2024年1月19日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2023年/香港/92分/PG12)原題:GREEN NIGHT 監督:ハン・シュアイ 出演:ファン・ビンビン、イ・ジュヨン、キム・ヨンホ ほか 配給:ファインフィルムズ © 2023 DEMEI Holdings Limited (Hong Kong). All Rights Reserved.


『チャロの囀り』

心の触れ合いで惹かれ合う男女の寓話的ラブストーリー

映画『チャロの囀り』メイン画像MVやCMなどを⼿がけてきた末吉ノブ監督の劇場デビュー作。事故で記憶と言葉をなくし、昼夜働きながら平和に静かに生きる青年チャロと、裕福な同級生たちとの価値観の違いや格差に戸惑いつつ、キラキラ女子を演じる大学生の美華。二人の出会いと心の触れ合いを、北九州の抒情的な⾵景の中に描く寓話的なラブストーリーだ。人間関係の中で暗黙のうちに蔓延するヒエラルキーや同調圧力に生きづらさを抱えながらも人と繋がろうとする美華と、何も持たずともありのままの自分で生き、誰よりも幸せそうに笑うチャロ。ともすれば幻想的になりすぎるチャロのキャラクターに、生命力と説得力を与える卯ノ原圭吾の笑顔が素敵だ。そんなチャロに惹かれていく美華の姿も、まっすぐで、可憐で、とても愛おしい。演じるのは本作が初⻑編主演の東宮綾音。’24年はすでにヒロイン役の舞台と公開待機作が複数あるという注目の新星だ。要所要所で映し出される若戸大橋の姿も印象深い。1962年に開通したこの鮮やかな赤の吊り橋は、昭和から現代まで雄大な姿で人々の営みを見守っているようも見える。本作を思い出すとき、チャロと美華の忘れ難いロマンスとともに、この橋の姿が脳裏に浮かぶだろう。富田旻

2024年1月20日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/日本/115分)監督:末吉ノブ 出演:卯ノ原圭吾、東宮綾音、芽衣子 ほか 配給:モラモラプレス


『すべて、至るところにある』

素朴なバルカン半島の風景の中で時代の風を紡ぐ

マレーシア出身で大阪を拠点に活動するリム・カーワイ監督が、旧ユーゴスラビアの国々を舞台に描くバルカン半島3部作の完結編。旅先のバルカン半島でジェイと名乗る映画監督と出会い、即興で映画に出演したエヴァは、姿を消したジェイを探して再びバルカンを訪れる。映画が完成していたことを知り、現地での上映会にも参加するが、ジェイの行方はようとしてわからなかった。新型コロナのパンデミックなど世界が直面する時代の風を、素朴で美しい風景の中で静かに紡ぐ。ボスニア・ヘルツェゴビナの古都、モスタルのカフェにつどう人々へのインタビューなど虚実ないまぜの構成に、リム監督のこの地に寄せる愛着とともに映画というものへの深い敬意が伝わってくる。マカオ出身のアデラ・ソーや沖縄の尚玄らが無国籍な人物として存在しているのも象徴的だ。(藤井克郎)

2024年1月27日(土)より全国順次公開 予告編動画
(2023年/日本/88分)英題:Everything,Everywhere 監督・プロデューサー・脚本・編集:リム・カーワイ(林家威) 出演:アデラ・ソー(蘇嘉慧)、尚玄、イン・ジアン ほか 配給:Cinema Drifters ©cinemadrifters

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『その鼓動に耳をあてよ』

「断らない救急」の現場をパンデミックが直撃

映画『その鼓動に耳をあてよ』メイン画像

東海テレビドキュメンタリー劇場第15弾。救急車の受け入れ台数が年間1万台といわれる、名古屋掖済会病院のER(救命救急センター)。ここでは「断らない救急」を掲げ、24時間365日誰でも受け入れている。だが、新型コロナウイルスのパンデミックにより、ほかで断られた人も含め患者数が急増。同院の病床も限界になる……。「救急で何でも診るの“何でも”には、年齢と病気の“何でも”だけでなく、社会的な問題の“何でも”含まれる」という医師の言葉を裏打ちするように、子供からお年寄りまで、また生活困窮者や自死を図った人など様々な背景を持つ患者を受け入れるER。救急医療の現状を映し出すカメラは、はからずも社会に横たわる問題を可視化させる。数々のジレンマを抱えつつ、分け隔てなく治療に尽力する医療従事者の姿を冷静に捉えながらも、静かで温かな応援が滲み出る一作だ。(吉永くま)

2024年1月27日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2023年/日本/95分)プロデューサー:阿武野勝彦、圡方宏史 監督:足立拓朗 製作・配給:東海テレビ放送 ©東海テレビ放送

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