8月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―

  • 2021年08月01日更新

8月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! あなたが気になるのは、どの映画!?

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8/6(金)公開『明日に向かって笑え!
8/6(金)公開『サマーフィルムにのって
8/6(金)公開『わんぱく戦争』(デジタルリマスター版)
8/13(金)公開『ジュゼップ 戦場の画家
8/13(金)公開『モロッコ、彼女たちの朝
8/20(金)公開『うみべの女の子
8/20(金)公開『Summer of 85
8/20(金)公開『ドライブ・マイ・カー
8/20(金)公開『リル・バック ストリートから世界へ
8/21(土)公開『シュシュシュの娘
8/21(土)公開『スザンヌ、16歳
8/27(金)公開『ホロコーストの罪人
8/27(金)公開『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)
8/27(金)公開『白頭山大噴火』

更新情報:8月20日に『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』『白頭山大噴火』を追加掲載しました。


『明日に向かって笑え!』

弱者が逞しさを発揮するリベンジコメディ

映画『明日に向かって笑え!』メイン画像第82回アカデミー賞外国語映画賞受賞作『瞳の奥の秘密』の脚本家と主演俳優がタッグを組んだヒューマンドラマ。2001年のアルゼンチン。のんびりした小さな田舎町の住人たちは、町を立て直すため放置された農業施設を復活させようと共同出資して、その現金を銀行に預ける。だがその翌日、国に金融危機が勃発。さらにこの状況に便乗した銀行と弁護士に、お金をだまし取られてしまう。絶望した彼らだったが、やがて奇想天外なリベンジ作戦を思いつく。ユーモアに溢れた作品だが、同国のデフォルト後の描写から、当時渦中にいた人々の混乱ぶりが改めて認識される。搾取する者とされる者に二分化された社会。そのような中で力の弱い者がリベンジを画策する姿に胸がすく。どんなに絶望しても転んでも、ただでは起き上がらない彼らの逞しさを見て、疲弊する社会にも希望があると痛感した。(吉永くま)

2021年8月6日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/アルゼンチン/116 分)原題:La Odisea de los Giles 監督・脚本:セバスティアン・ボレンステイン 出演:リカルド・ダリン、ルイス・ブランドーニ、チノ・ダリン ほか 配給:ギャガ © 2019 CAPITAL INTELECTUAL S.A./KENYA FILMS/MOD Pictures S.L.


『サマーフィルムにのって』

時代劇に取りつかれた女子高校生の青春

映画部に所属する女子高校生のハダシは時代劇オタクで、他の部員からは浮いた存在だった。キラキラ恋愛映画を制作するという部の方針に反抗して、時代劇の脚本を書き上げるが、主役にふさわしい男子がなかなか見つからない。そんなある日、時代劇が上映されている名画座で、理想的な青年、凛太郎と出会う。これが初の長編映画となる松本壮史監督が、オリジナル脚本で映画愛に満ちた青春映画を織り上げた。女子高校生が勝新太郎や三船敏郎に入れ込むというギャップにSFの要素も加わり、いとしくておかしくて切ない青春の1ページが展開される。映画は「スクリーンを通して今と過去をつなぐもの」というせりふをはじめ、映画好きには涙なしに見られない作品になっている。(藤井克郎)

2021年8月6日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/日本/97分)監督・脚本:松本壮史 出演:伊藤万理華、金子大地、河合優実、祷キララ ほか 配給:ハピネットファントム・スタジオ © 2021「サマーフィルムにのって」製作委員会

◆オススメ記事
一瞬の奇跡をとらえたきらめき―『左様なら』石橋夕帆監督&芋生悠、祷キララインタビュー


『わんぱく戦争』(デジタルリマスター版)

邦題にすべてが凝縮された子ども映画の傑作

世界中で大ヒットした子ども映画の傑作が、製作から60年を経てデジタルリマスター化された。南フランスにある隣り合う二つの村の子どもたちは、いつも睨み合っている。彼らの戦場は村の境界にある砂地の原っぱで、勝者の戦利品は相手の服のボタンだ。ある日、ロンジュヴェルヌ村の大将ルブラックが戦いに負け、ボタンを奪われる。彼は今度こそ何とかして勝ちたいと、ある妙案を思いつく……。日本人にも馴染みのある「わんぱくマーチ」で幕を開ける本作の子どもの世界は、秘密基地や泥んこ遊びなど、わくわくするようなことで満ち溢れている。少し行き過ぎかと思われる喧嘩のシーンもあるが、大人に怒られても抑えつけられても、伸び伸びと暴れ回る悪ガキたちの逞しさには、ただ圧倒されるばかり。懐かしい響きのある邦題の「わんぱく」という言葉に、すべてが凝縮された作品だ。尚、今回は吹替版も上映される。(吉永くま)

2021年8月6日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(1961年/フランス/94分/PG12)原題:LA GUERRE DES BOUTONS 監督:イヴ・ロベール 出演: アンドレ・トレトン、アントワーヌ・ラルチーグ、ジャン・リシュール ほか 配給:ユナイテッドエンタテインメント Ⓒ 1962 ZAZI FILMS


『ジュゼップ 戦場の画家』

“信念”と“生き様” を強烈に問う一作

スペイン内戦時代、フランシスコ・フランコ率いる反乱軍に抵抗し、避難先であるはずのフランスの強制収容所で過酷な難民生活を送った画家、ジュゼップ・バルトリの半生を描く物語。収容所の憲兵たちからの屈辱的な扱い、信じ難いような劣悪な環境下でも絵を描き続けるジュゼップ。その姿に胸を打たれた新人憲兵のセルジュは、彼にそっと紙とペンを渡し続け、2人はいつしか固い友情で結ばれていく……。監督を務めたのは、自身もフランスの有名誌や新聞のグラフィックを手がけてきたイラストレーター、オーレル。どんな苦難に襲われても画家としての尊厳を持ち続け、婚約者への一途な愛を貫くジュゼップの生き様に、「お前の信念はなんだ?」と強烈に問いかけられたような気がした。第二次世界大戦後はメキシコに渡りフリーダ・カーロの愛人となったジュゼップ。鮮やかな色彩で描かれるその日々が、人生における愛の歓びを視覚で感じさせる。ジュゼップとセルジュの思いが未来へと受け継がれるラストシーンもいい。(min)

2021年8月13日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020 年/フランス・スペイン・ベルギー/74分)原題:JOSEP 監督:オーレル 脚本:ジャン=ルイ・ミレシ 配給:ロングライド ©️ Les Films d’Ici Méditerranée – France 3 Cinéma – Imagic Telecom – Les Films du Poisson Rouge – Lunanime – Promenons – nous dans les bois – Tchack – Les Fées Spéciales – In Efecto – Le Mémorial du Camp de Rivesaltes – Les Films d’Ici – Upside Films 2020


『モロッコ、彼女たちの朝』

身重の女性をそっと受け入れるシングルマザー

北アフリカのモロッコ最大の都市、カサブランカ。身重のサミアは仕事と寝る場所を探して街をさまようが、彼女を受け入れてくれるところはどこにもない。夫と死別し、幼い娘のワルダを抱えて小さなパン屋を営むアブラは、一度は追い返したサミアが路上で眠る姿を見て、そっと家に招き入れる。サミアの境遇もアブラの頑なさもせりふで言及されることはないが、この国で女性が1人で子どもを育てるのは極めて厳しいということが伝わってくる。そんな2人が徐々に心を通わせていくさまが、手持ちカメラによる接写を多用して描出される。2人の表情の豊かさとともに、生まれた直後の赤ちゃんの映像などドキュメンタリーのようなリアルさで、これが初長編というマリヤム・トゥザニ監督の社会性、芸術性の高さに驚嘆した。(藤井克郎)

2021年8月13日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/モロッコ・フランス・ベルギー/101分)英題:ADAM 監督・脚本:マリヤム・トゥザニ 出演:ルブナ・アザバル、ニスリン・エラディ、ドゥア・ベルハウダ ほか 配給:ロングライド ©︎ Ali n’ Productions – Les Films du Nouveau Monde – Artémis Productions


『うみべの女の子』

体だけの関係の中学生カップルが向かう先は

浅野いにおの成人向け漫画を『リュウグウノツカイ』のウエダアツシ監督が映画化。石川瑠華青木柚の若手注目株が、体だけの関係の中学生カップルをフレッシュに演じている。海辺の町に暮らす中学2年の小梅は、好きでもない同級生の磯辺と衝動的にセックスをする。その後も体を重ね合う2人だが、徐々に冷めていく磯辺に対し、小梅はだんだん離れられなくなっていった。海岸沿いのさびれた町並みの風景に、はっぴいえんどの『風をあつめて』のメロディーが重なり、何ともアンニュイではかない雰囲気が漂う。違和感なく中学生になりきった主役2人の存在感もさることながら、台風で大荒れの天候の中、激しい波しぶきと横殴りの雨をバックにした大胆な演出には度肝を抜かれた。(藤井克郎)

2021年8月20日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/107分/R15+) 監督・脚本・編集:ウエダアツシ 出演:石川瑠華、青木柚、村上淳 ほか 配給:スタイルジャム © 浅野いにお/太田出版・2021『うみべの女の子』製作委員会

◆オススメ記事
予告編大賞から長編の主役へ 『猿楽町で会いましょう』石川瑠華インタビュー


『Summer of 85』

相手の墓の上で踊る誓いを交わした2人

イギリスの作家、エイダン・チェンバーズの小説を、『8人の女たち』などのフランスの鬼才、フランソワ・オゾン監督が映画化。17歳のときに原作と出合って衝撃を受け、いつか映画にしたいと夢見ていた思いが実現した。1985年の夏、ヨットで沖合に出た16歳のアレックスは突然の嵐に遭うが、年上のダヴィドに助けられる。互いにひかれ合う2人は、ダヴィドの提案で「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いを立てるが……。2人がひと夏を過ごした6週間とその後の悲劇的な現実を、時制を交錯させてスリリングに描くあたりが、巧みな語り口が持ち味のオゾン監督風。女友達や母親を絡ませながら、ボーイズラブの甘酸っぱい胸キュン作品に仕上げていた。(藤井克郎)

2021年8月20日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/フランス/101分)原題:Été 85 英題:Summer of 85 監督・脚本:フランソワ・オゾン 出演:フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォワザン、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ ほか 配給:フラッグ、クロックワークス © 2020-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-France 2 CINÉMA–PLAYTIME PRODUCTION-SCOPE PICTURES


『ドライブ・マイ・カー』

運転席と後部座席の関係の意思疎通

『ハッピーアワー』の濱口竜介監督が村上春樹の短編小説を映画化した話題作で、2021年のカンヌ国際映画祭で脚本賞に輝いた。俳優で演出家でもある家福悠介は、脚本家の妻の不貞を知りつつも、変わらぬ日常を送っていた。ある日、妻から「帰ったら話がある」と言われた夜、妻はくも膜下出血で突然、この世を去る。わだかまりを抱えたまま2年の歳月が過ぎた。ありがちな不倫ドラマかと思いきや、その後の展開が予想のはるか彼方を行っていて、新鮮な驚きにあふれる。広島で舞台演出を依頼された家福と、幼くして死んだ娘と同世代の若い女性ドライバー。運転席と後部座席という距離感の2人を軸に、意思疎通と芸術表現をテーマにした物語が重層的に紡がれる。コロナ禍の現代社会を生きる示唆にも富んだ魅惑の3時間だった。(藤井克郎)

2021年8月20日(金)より全国公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/179分)監督・脚本:濱口竜介 出演:西島秀俊、三浦透子、岡田将生 ほか 配給:ビターズ・エンド © 2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

◆オススメ記事
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『リル・バック ストリートから世界へ』

クラシックの名曲で踊るストリートダンスの妙味

米テネシー州メンフィスでストリートダンスに興じていた若者が、世界のステージで称賛を浴びるようになるまでを見つめたドキュメンタリーで、フランス出身のルイ・ウォレカン監督が手がけた。メンフィスの貧しい家庭で育ったリル・バックは、ジューキンと呼ばれるこの土地独特のストリートダンスで頭角を現す。ジューキンは、マイケル・ジャクソンのムーンウォークのように滑るような動きに特徴があり、クラシックバレエの素養も身に付けた彼は、やがて世界的なチェロ奏者のヨーヨー・マから共演を持ちかけられる。このサン=サーンスの『白鳥』を踊るリルのジューキンが圧巻の一語。決して彼一人をヒーローとして描くのではなく、メンフィスのストリートダンス文化そのものに敬意を込めたウォレカン監督の目線もすてきだ。(藤井克郎)

2021年8月20日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/フランス・アメリカ/85分)原題:LIL BUCK REAL SWAN 監督:ルイ・ウォレカン 配給:ムヴィオラ ©️ 2020-LECHINSKI-MACHINE MOLLE-CRATEN “JAI” ARMMER JR-CHARLES RILEY


『シュシュシュの娘』

地方の閉塞した社会を小気味よく笑い飛ばす

『ビジランテ』『AI崩壊』の入江悠監督が、コロナ禍にあえぐ全国のミニシアターを支援しようと企画した自主映画。ミニシアター限定で公開される。市役所勤めの未宇は、介護を必要とする祖父と2人で暮らしていた。市では移民を排斥する条例が施行されようとしていたが、推進派ばかりの役所で彼女は浮いた存在だった。そんなとき、彼女のよき理解者だった先輩職員の間野が自殺する。理不尽な文書改竄を命じられたことが原因だった。入江監督は、『ビジランテ』でも描いた地方の閉塞感をテーマにしつつ、笑いとアクションを絡めて肩の凝らない娯楽作品に仕立て上げた。地味な印象の未宇だが、その実は、という展開が意外で、社会派ながらもスカッとした後味が小気味いい。(藤井克郎)

2021年8月21日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/88分) 製作・脚本・監督・編集:入江悠 出演:福田沙紀、吉岡睦雄、根矢涼香 ほか 配給:コギトワークス © Yu Irie & cogitoworks Ltd.

◆オススメ記事
『the face vol.02 根矢涼香 特集上映』— 根矢涼香の多彩な魅力を味わい尽くす7日間!


『スザンヌ、16歳』

19歳の新鋭が撮った新感覚の青春物語

フランスの俳優、サンドリーヌ・キベルランとヴァンサン・ランドンを両親に持つスザンヌ・ランドン監督が、自らの主演で初長編に挑んだ。スザンヌは友人たちとの会話にちょっと物足りなさを感じている16歳。ある日、劇場の前で舞台俳優のラファエルと出会い、大人の魅力にひかれていく。ランドン監督が15歳のときに書いた脚本をもとに映画化した作品で、場面転換などに未熟さは隠せないものの、同時に最大の個性にもなっている。BGMが鳴っている途中で突然、打ち切られ、次のシーンに移るという流れにはドキッとさせられる。ラファエルと2人同じポーズの奇妙なダンスも一度ならず二度まで登場し、まるで別次元の感覚だ。19歳で撮った才能が本物かどうか、この先も目が離せない。(藤井克郎)

2021年8月21日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/フランス/77分)原題:16 Printemps 監督・脚本:スザンヌ・ランドン 出演:スザンヌ・ランドン、アルノー・ヴァロワ、フレデリック・ピエロ ほか 配給:太秦、ノーム


『ホロコーストの罪人』

次世代に語り継ぐ歴史の恥部

映画『ホロコーストの罪人』メイン画像ノルウェーに住む平凡なユダヤ人家族が、ホロコーストに加担した同国の警察や市民によって悲劇的な運命に見舞われる、実話をもとにした作品。ユダヤ人一家のブラウデ家は幸せな日々を送っていたが、ナチス・ドイツのノルウェー侵攻後、父と息子たちはベルグ収容所へと連行され、同じノルウェー人の監視のもと強制労働に従事させられる。やがて秘密国家警察により、女性と子供も含むユダヤ人全員がオスロ港に強制移送されるが、そこにはアウシュヴィッツ行きの“ドナウ号”が停泊していた。1983年生まれのスヴェンソン監督は、抑えた語り口ながら、その暗く重苦しい時代の空気の中、同国人からの仕打ちに対するブラウデ家の悔しさや戸惑い、怒り、悲しみをしっかりと浮き彫りにする。まだ若い監督が、自国の過去の罪、歴史の恥部を冷静に見つめて作品を作り上げ、次世代へ語り継いでいくという社会的意義の大きさにも注目したい。(吉永くま)

2021年8月27日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/ノルウェー/126分/PG12)原題:Den storste forbrytelsen 英題:Betrayed 監督:エイリーク・スヴェンソン 出演:ヤーコブ・オフテブロ、クリスティン・クヤトゥ・ソープ、シルエ・ストルスティン ほか 配給:STAR CHANNEL © 2020 FANTEFILM FIKSJON AS. ALL RIGHTS RESERVED.


『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』

珠玉のドキュメンタリーとして蘇生した伝説的ライブ映像

映画『サマー・オブ・ソウル』メイン画像約50年も封印されていた伝説的なフリーライブ映像が、ドキュメンタリー映画として蘇生する。「ウッドストック」がNY郊外で開催された1969年の夏、ハーレムの公園では「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」が6回にわたり開催されていた。出演は当時19歳のスティーヴィー・ワンダー、人気絶頂期のスライ&ザ・ファミリー・ストーン、B.B.キング、フィフス・ディメンション、ニーナ・シモンほか、黒人音楽史に功績を刻む顔ぶれ。ベトナム戦争、カウンター・カルチャーの蔓延、公民権運動とブラックパワーの高揚——激動の60年代がキング牧師暗殺という悲劇で終末を迎えるなか、アフリカン・アメリカンたちの痛みを相殺するように開催された。動員は30万人を越え、全容は映像として記録されたが、テレビや新聞はこのニュースを黙殺。以降、地下室に保管されたフィルムが人目に触れることはなかった……。監督はヒップホップ界の重鎮、アミール・“クエストラブ”・トンプソン。ライブ映像に社会情勢の解説や証言インタビューなどを絶妙なテンポではさみ、良質なドキュメンタリーに昇華した。サンダンス映画祭で2冠に輝いた本作だが、やはり圧巻は時代の緊張感と激しい悲哀や希望を体現したアーティストたちのパフォーマンス。ぜひ、映画館のスクリーンと大音量でご鑑賞あれ。 (min)

2021年8月27日(金)より全国順次公開 公式サイト
(2021年/アメリカ/118分)原題:Summer of Soul (…Or, When the Revolution Could Not Be Televised) 監督:アミール・“クエストラブ”・トンプソン 出演:スティーヴィー・ワンダー、B.B.キング、フィフス・ディメンション、ステイプル・シンガーズ、マヘリア・ジャクソン、ハービー・マン、デイヴィッド・ラフィン、グラディス・ナイト&ザ・ピップス、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、モンゴ・サンタマリア、ソニー・シャーロック、アビー・リンカーン、マックス・ローチ、ヒュー・マセケラ、ニーナ・シモン ほか 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン © 2021 20th Century Studios. All rights reserved

◆オススメ記事
『スライ・ストーン』― スライの波乱に満ちた半生に迫る、オランダ人監督による執念のドキュメンタリー


『白頭山大噴火』

半島崩壊阻止のため北朝鮮に潜入

映画『白頭山大噴火』メイン画像朝鮮民族の“聖なる山”といわれる白頭山(ペクトゥサン)の噴火をテーマに据えた、壮大なスケールのディザスタームービー。韓国で大ヒットを記録した。北朝鮮と中国の国境にそびえる白頭山で観測史上最大の噴火が発生。地質学権威のカン教授により、今後さらに半島が崩壊するほど大きな噴火が予測される。軍爆発物処理班のチョ大尉は、火山を鎮静化し惨事を食い止める成功率の低い秘密作戦を行うため、部隊とともに北朝鮮へ潜入する……。韓国3大スターの競演に加え、圧倒的迫力のVFX、家族愛、朝鮮半島を巡る国々の思惑を織り込んだ緊迫したストーリー展開など見応えたっぷりだが、その根底には近い将来、実際に起こるかもしれない大災害への深刻な懸念があり、単なるパニックアクション映画の枠を超えた作品となっている。快進撃の続く韓国映画の底知れないパワーに圧倒された。(吉永くま)

2019年8月27日(金)より全国公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/韓国/128分)英題:Ashfall  監督:イ・ヘジュン、キム・ビョンソ 出演:イ・ビョンホン、ハ・ジョンウ、マ・ドンソク、チョン・へジン、ペ・スジ ほか 配給:ツイン © 2019 CJ ENM CORPORATION, DEXTER STUDIOS & DEXTER PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

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