ミニシアターに行きたくなる監督達―東京フィルメックス、Q&Aハイライト

  • 2010年12月20日更新

IMG_1151若い映画製作者の登竜門“東京フィルメックス”。内田伸輝監督『ふゆの獣』が最優秀作品賞を受賞して幕を閉じた。Mixiで俳優を集め、たった110万円で制作された自主映画が、そのカメラワークと俳優の演技を高く評価され世界への第一歩を踏み出す。
「完成度の高い作品」ではなく、「可能性あふれる作品」を発掘する東京フィルメックスは作品上映とともに行われるQ&Aも見どころだ。今回は東京フィルメックスの取っておきQ&Aをピックアップ。将来、国際映画祭で活躍する映画人たちの熱い思いをチェックしよう。

※第11回 東京フィルメックスの公式パンフレットを2名さまにプレゼント致します。ご応募はこちらから。応募〆切は、2010年12月31日(金)です。

DSC_0362カンヌへ、ベルリンへ、若き映画人の最初の一歩は東京から
今年、カンヌ国際映画祭で作品賞を受賞した、タイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督や行定勲監督をなど国際舞台で活躍する映画人を数多く輩出する東京フィルメックスには、今年も多くの注目作品が集結。Mixiで集められた4人の俳優によって、濃密な恋愛関係を描く『ふゆの獣』、中国の老いてなおエネルギッシュに女性を求める独身男性の暮らしをドキュメンタリータッチで描いた『独身男』など、強烈なテーマを自由な発想で表現した作品にかける思いはどこまでも熱い。今回は最優秀作品賞、審査員特別賞を受賞作を含め注目5作品のQ&Aをセレクト。制作現場の息遣いを感じて欲しい。

最優秀作品:『ふゆの獣』fc07mainYOKO日本 / 2010 / 92分
監督:内田伸輝
つきあって長い恋人同士のシゲヒサとユカコ。そんなふたりの関係をいろいろ憶測して談笑するノボルとサエコ。一見、穏やかに働く4人の心には、実は激烈な感情が隠されていた。脚本に頼らず、即興で展開する、野心的で生々しい恋愛映画。

自分が恋愛でダメージを受けたような感覚、ちょっとつらい部分もあります。(女優:前川桃子さん)

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-本作は4人の男女の恋愛関係が描かれています。出演者のみなさまは、自分の役をどのような気持ちで組み立てたのでしょうか? また、演じたキャラクターと自分自身は似ていますか?

加藤めぐみさん(ユカコ役) 内田監督からは、プロットに加えて、キャラクターの背景が書かれたA4用紙を1~2枚ほどいただいていました。そこには、演じるキャラクターのバックグラウンドが書かれています。出演者の4人は、それぞれの背景をお互いに知らない状態で演技をしました。共演者の演技を見ながら、いただいたバックグラウンドをもとに、自分で想像して演じることで、自分がこれまでまったくしたことのなかった恋愛を映画の中で体験しました。

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前川桃子さん(サエコ役) この作品には脚本がなく、台詞としてなにを話すかは、共演者の言葉を受けて、自ら言わなくてはならないので、自分がサエコとあまりにも違うキャラクターでいたら、監督やみなさまに見透かされてしまうのではないか、と思いました。「もし自分がサエコのように育ったなら」と想像しつつ、その場で感じたことを話そうと思って、撮影現場に行きました。そのため、役として感じたにもかかわらず、自分が恋愛でダメージを受けたような感覚が現在も残っていて、ちょっとつらい部分もあります。共演者全員が仲よしで、とても温かいチームなんですが、完成した映画を観ると、撮影当時のことを思いだします。
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審査員特別賞:『独身男』
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中国 / 2010 / 94分
監督:ハオ・ジェ
北京電影学院を卒業したハオ・ジェ監督のデビュー作。中国河北省の山間の村を舞台に、年老いた独身男たちの奇妙な日常生活を描く。ドキュメンタリータッチで描かれる独身男は生々しくどこまでもコミカル。

この作品の中で半分は俳優たちの実際の体験(ハオ・ジェ監督)

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-出演者がとてもリアルに役柄を演じていましたが、プロの役者とアマチュアのどちらを起用されたのですか。
ハオ・ジェ監督 実はこの映画のロケ地の村は僕の出身地なんです。出演者はここにいるチャン・イェランさんを除き、皆素人で郷里の知り合いです。馴染みの人たちなので、撮影は想像以上にうまく進みました。

-作品中の村人たちは「性」に対して非常にオープンですが、これは中国の実情に則したものなのでしょうか。
ハオ・ジェ監督:中国の北方の農村における独身男の実態には、映画で描かれたようなこともあります。この作品の中で俳優たちは、半分は自分の実際の体験、残りの半分は他の人の人生に起こったことを演じています。

観客賞:『Peace』
fc08sub2日本、アメリカ / 2010 / 75分
監督:想田和弘
『選挙』、『精神』を手がけた想田和弘監督の「観察映画」番外編。岡山県で福祉車両の運転をしている柏木寿夫氏と、ヘルパーを派遣するNPOを運営するその妻・廣子氏の生活を映した、エッセイ風のドキュメンタリー。被写体の柏木夫妻は、想田監督の奥様・規与子氏のご両親である。

橋本さんが戦争に関するお話をされたのは、彼とお会いした最後の日でした。(想田監督)

1123peace_2-本作のテーマは「平和と共存」です。被写体の橋本至郎氏が戦争に関するお話をしていましたが、想田監督が戦争について彼に質問をしたのでしょうか? それとも、橋本氏が自ら語り始めたのでしょうか?

想田和弘監督 実は、当初、僕は橋本さんを撮るのを躊躇していました。彼は「平和と共存」というテーマと無関係に思えたからです。しかし、そのときに、「これがテーマに縛られるということだ」と気づきました。僕が撮りたい対象を自由に撮ればよいのですし、テーマと関係がなくても撮ろう、と思ったんです。
橋本さんにカメラを向けて、まず気づいたのは、彼が「Peace(=平和)」という煙草を吸われていることでした。「あ!」と思って、クローズアップで撮りました(笑)。
橋本さんが戦争に関するお話をされたのは、彼とお会いした最後の日でした。僕がまったく予期していないときに、いきなりあのお話をされたので、撮りながら体が震えました。その時点で、「これで映画が1本できる」と確信しました。
僕が観察映画を撮るときに心がけているのは、被写体の人との打ち合わせや、その人に対するリサーチをしない、ということです。もしも事前に橋本さんと打ち合わせ等をしていたら、戦争に関するお話も、その時点で出てしまっていたと思います。そうだとしたら、彼があのお話を語り始めたその瞬間に、カメラはまわっていなかったはずなんです。(カメラの前で、橋本さんが自発的にあのお話をなさった瞬間は)僕の人生の中でも貴重で、特別な出会いで、驚きの瞬間でした。こういった特別な瞬間を映像に捉えたい、という欲望が僕にはあって、あの出来事はまさに、そういう瞬間だったのだろうな、と思います。

『後の日』
ss06mainNOCHINOHI49分
監督:是枝裕和
原作:室生犀星
是枝監督が美しく描く、若い両親と死んだはずの子どもの交流。 古い民家で繰り返されるなにげない日常に、死んだ少年が現れる異空間はジャパニーズホラーとは一線を画す怪談の空気が流れる。

是枝監督は穏やかな監督ナンバーワンです。(中村ゆりさん)
井筒監督と比べるからじゃないの?(是枝監督)

DSC_0352-子役(澁谷武尊)の演技が他の是枝さんの作品に比べて賢そうに見えたのですが、子役の子にどのように演出をしていったのですか?

是枝監督(以下是枝)演習の仕方は変えていません。台本を与えずに、現場で指示を出して行く方法は他の映画と変わらない演出の仕方をしました。ただ、今回の子は、ちょっと通常とは違うやり方というか、あまり時代性を感じない顔というんですかね。子どもに見えたり、見えなかったりしたかったので、単純に無邪気な子供というのとは違うタイプになっているかなと思って選んだのがの澁谷君でした。非常に聡明な表情をしているし、本当は一番年上なんじゃないかないうくらい、落ち着いていました。

-中村ゆりさん、息子を失った若い母親という難しい役を演じるにあたり苦労された点をお聞かせください

DSC_0381中村ゆり(以下中村)ファンタジーといえども、実際、原作の室生犀星は子どもを亡くしています。そういう人から生み出された作品に対して子どもを産んだことがない私がどう向き合えばいいのか悩みました。

-是枝監督とお仕事をされてどのような印象を持ちましたか?
中村 穏やかな監督ナンバーワンです。
是枝 (パッチギの)井筒監督と比べるからじゃないの?(会場笑)

『幻の薔薇』 ss07mainフランス / 2010 / 113分
監督:アモス・ギタイ
ゴンクール賞受賞の女流作家エルザ・トリオレの同名小説の映画化。戦後のフランスを舞台に、幸福な結婚生活を夢見た女性が直面する現実を流麗なカメラワークで描く。

人間が生きていくためには、もうひとつ「忘却」ということも必要なことなのです。(ギタイ監督)

1128RoseOnCredit6-ヒロインは(戦後の)消費社会の犠牲者なのか?と思ったのですが、ヒロインの在り方からすると、逆にサバイバーのようですが、監督の解釈はいかがでしたか?

ギタイ監督 私から見ると彼女が犠牲者であるか、サバイバーであるかは分かりません。彼女は、消費文明の積極的な参加者です。消費文明は大衆が参加しなければ絶対に成立しないものであり、人々の欲望として、何かを忘れたい、忘れるためには消費することに自分が没頭したいという気持ちがあるからこそ、そうゆう文明が成立していると思います。彼女はその中の一員であると考えています。しばしば、人は「記憶」の大切さについて語りますが、人間が生きていくためには、もうひとつ「忘却」ということも必要なことなのです。

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文:香ん乃(ふゆの獣、Peace)、吉永くま(独身男)、白玉(後の日)、那須ちづこ(幻の薔薇) スチール撮影:さとうまゆみ(ふゆの獣)、柴崎朋実(後の日)
写真提供:東京フィルメックス

  • 2010年12月20日更新

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