第11回 東京フィルメックスでのQ&A、続々開催!―『ミスター・ノーバディ』・『夏のない年』・『トーマス、マオ』
- 2010年11月26日更新
2010年11月20日(土)から主に有楽町朝日ホールにて大盛況開催中の、第11回 東京フィルメックス。
フィルメックスの名物のひとつといえば、監督・スタッフ・キャストが登壇する「Q&A」 ― 作品の上映終了後に、観客のみなさまからの質問に監督たちが答える、質疑応答の時間です。
観たばかりの作品について、監督やスタッフに質問や感想を直接お伝えできる、貴重な機会。当サイトでも、連日、精力的に取材をしています。この記事では、『ミスター・ノーバディ』、『夏のない年』、『トーマス、マオ』のQ&Aから、「よくぞ訊いてくれました!&答えてくれました!」と思わず膝を打つ一問一答を、厳選してリポートします。
▼『ミスター・ノーバディ』Q&A(特別招待作品)
開催日:2010年11月21日(日)
登壇者:ジャコ・ヴァン・ドルマル監督
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― 本作は、完成までに長い時間がかかったということですが、その理由は?
「現実の人生に近い物語の映画を作りたかった」
ジャコ・ヴァン・ドルマル監督 脚本に6年、撮影に6ヶ月、編集に1年半ほどかかりました。(結果的に)完成まで10年ほど費やしましたが、感覚としては早かったです。時間がかかった理由は、これまでの自分の作品とは異なるものを作りたい、という野心があったからです。
私は映画を作るのが好きです。また、さまざまな人生を生きたい、と考えています。そのふたつを合わせた作品にしたいと思いました。
一般的に、映画の物語は漏斗のように、ストーリーがあって、ひとつのエンディングに向かっていきます。しかし、人間が実際に生きる人生は、因果関係がなく枝分かれしていきます。現実の人生に近い物語の映画を作りたい、と考えました。
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▼『夏のない年』Q&A(コンペティション)
開催日:2010年11月21日(日)
登壇者:ピート・テオさん(サウンドデザイナー)
『夏のない年』 マレーシア/2010年/87分 英題:”Year Without A Summer” 監督:タン・チュイ・ムイ 2006年のデビュー作『愛は一切に勝つ』で国際的評価を得たタン監督の新作。30年ぶりに故郷の村へ帰った人気歌手が、かつての親友とその妻と共に、夜釣りへ出かけるが……。 |
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― 今後、マレーシア映画はどのように展開していくのでしょうか? また、誰がマレーシアの映画界をリードしていくのでしょうか?
「多言語からなるマレーシア文化の豊かさを活かしていかなければならない、とニュー・ウェーブの映画人たちは考えています」
ピート・テオさん(サウンドデザイナー) まず国の背景として、マレーシアにはマレー語、中国語、英語、タミール語の、4つの公用語があります。そして、国内の政治家たちの間には、マレーシア映画はマレー語で作られるべきだ、という1つの結論があります。
そのため、中国語で映画製作をしてきた(本作の)タン監督をはじめとするニュー・ウェーブの監督達や、タミール語で映画を作ってきたインド系の監督は、マレー語(の作品)ではないという理由で、国の公的支援を得られない状況です。
ただ、最近では、マレー語の映画のみを認めるという考え方は、転換を迫られています。マイノリティーの人たちを周辺に追いやっていくという、政府の政策がそのまま反映されているのではないか、と批判の声があがっているからです。映画は現実を反映しているべきであって、多言語からなるマレーシア文化の豊かさを活かしていかなければならない、とニュー・ウェーブの映画人たちは政府の考えに抵抗しているのです。
今後、誰がマレーシアの映画界を引っ張っていくかについてですが、現代マレーシアの多文化を象徴するリーダーとして、ヤスミン・アフマド監督を思い出す方も多いでしょう。昨年、彼女が他界したのは、非常に残念なことです。ただ、映画文化というのはひとりで成し遂げられるものではなく、様々な人がそれぞれの役割を果たし、声をあげていくことによって発展していくものだと思います。マレーシア映画のアイデンティティも、そのようにして確立されていくでしょう。
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▼『トーマス、マオ』Q&A(コンペティション)
開催日:2010年11月23日(火)
登壇者:チュウ・ウェン監督 ジン・ズーさん(女優)
『トーマス、マオ』 中国/2010年/77分 英題:”Thomas Mao” 監督:チュウ・ウェン 舞台は内モンゴル ― 英語しか話せないトーマスと、中国語しか話せないマオが出会った。ふたりの会話が噛みあわないため、事態は意外な方向に……。笑いあり、カンフーありの、エンターテインメント性の高い作品。実在するトーマスさんとマオさんは、チュウ監督の10年来のお知り合いとのこと。 |
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― 湖のシーンが美しかったです。内モンゴルを舞台にした理由は?
「劇中でマオが経営する民宿は我々が作ったセットで、現在は観光地として残っています」
チュウ・ウェン監督 もともと湖南省でのロケを予定していましたが、理想的な場所を見つけるのが難しく、最終的に内モンゴルで撮影することになりました。
実は映画に出てくる湖は、我々が作ったセットです。近辺にあった川の水をせき止めてダムのようにして作ったので、撮影中は下流で生活している遊牧民たちに不便な思いをさせてしまいました。
夜になって撮影が終わると、遊牧民らはそのダムを決壊させて水を使っていましたが、撮影班は特別にチームを組んで、水がなくならないように湖を守っていました。
ちなみに、マオが経営する民宿も我々が作ったセットです。現在、湖の水は引いてしまいましたが、民宿は観光地として残っています。皆さんもチャンスがあれば訪れてみてください。
▼第11回 東京フィルメックス
期間:2010年11月20日(土) ~ 11月28日(日)
会場:有楽町朝日ホール(有楽町マリオン) (メイン会場:11/21(日)〜28(日))
東劇 (特集上映会場:11/20(土)〜28(日) )
TOHOシネマズ 日劇 (レイトショー会場:11/20(土)〜27(土))
主催:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
●第11回東京フィルメックス公式サイト
※上映スケジュール、チケット購入方法等の詳細は、公式サイトをご参照ください。
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取材・編集・文:秋月直子(『夏のない年』・『トーマス、マオ』) 香ん乃(『ミスター・ノーバディ』)
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