最優秀作品賞を受賞した『ふゆの獣』の内田伸輝監督から独占コメント!―第11回 東京フィルメックス 審査員記者会見・閉会式
- 2010年12月08日更新
第11回 東京フィルメックスが、2010年11月28日(日)、大盛況のうちに閉幕しました。
コンペティションで最優秀作品賞に輝いたのは、日本の内田伸輝監督の『ふゆの獣』。当サイトでは、本映画祭での必見作品として『ふゆの獣』をご紹介しました。本作の受賞は大変喜ばしく、記憶と歴史に残る、素晴らしい出来事です。
受賞に寄せて、光栄にも、内田監督から当サイトの読者さまへ向けて、コメントをいただきました。
《最優秀作品賞受賞 『ふゆの獣』 内田伸輝監督よりコメント》
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内田監督の今後の更なるご活躍と、『ふゆの獣』のご発展を、当サイトも応援しております。
では、第11回 東京フィルメックスの最終日におこなわれた、審査員記者会見と閉会式の模様を、たっぷりとお楽しみください。
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《審査員記者会見》
11月28日(日)、有楽町朝日ホール スクエアBにて、第11回 東京フィルメックス・コンペティション部門の受賞結果が発表されました。最優秀作品賞には内田伸輝監督の『ふゆの獣』(日本)、審査員特別賞にはハオ・ジェ監督の『独身男』(中国)が選出されました。両作品の受賞理由と監督の喜びのコメント、Q&Aをご紹介します。
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左から3番目が審査委員長のウルリッヒ・グレゴールさん、左から4番目が内田監督、右から3番目がハオ監督。他は審査員の皆さまです。 |
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◇最優秀作品賞
『ふゆの獣』(監督:内田伸輝/日本/2010年/92分)
<受賞理由>
本作は映画的手法を用いて、心理ドラマを類まれなる強烈なレベルへと発展させています。特にカメラの使い方が際立っており、俳優たちの演技も同様に素晴らしいものです。また審査員は、この作品が非常に限られた予算のなかで大きな表現力を極めていることも高く評価します。
<内田伸輝監督コメント>
誰がこの結果を予想したでしょうか。僕は予想できませんでした。今日は取材があるとしか言われていなかったのですが、最後だから楽しもうと思い、フィルメックスのスタッフTシャツを着て会場に来ました。だからこの結果に本当にびっくりしています。この作品は自主映画で、すべて自己資金です。当然配給も決まっていないので、これから自分たちで宣伝をし、上映することができればいいなと思っています。
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『ふゆの獣』に出演した加藤めぐみさん(ユカコ役)です。 |
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『ふゆの獣』に出演した加藤さんと佐藤博行さん(シゲヒサ役)をまじえての記念撮影。左から3人目が加藤さん、右から3人目が佐藤さんです。 |
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◇審査員特別賞 コダックVISIONアワード
『独身男』(監督:ハオ・ジェ/中国/2010年/94分)
<受賞理由>
監督と、自身に近い役柄を演じる村人たちとの間のコラボレーションから育った高い有機性と、中国の農村に存在する人間の性欲と社会問題を中立的な視点で描いていることを評価します。
<ハオ・ジェ監督コメント>
今回、他の大先輩たちの作品をいろいろ拝見しましたが、僕の作品よりずっと優れていると感じていました。このように励ましの賞を頂いたということは、僕のような新人の監督にとって次の作品を撮る大きな力となりますし、また非常に意義あることだと思います。
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左から、ハオ・ジェ監督、ケビン・クーさん(プロデューサー)、イェランさん(女優)です。 |
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<ケビン・クーさん(プロデューサー)コメント>
私はこの賞を故今村昌平監督に捧げたいと思います。なぜなら、今村監督は人間の下半身、また下層部にいる人間にカメラを向けることを私たちに教えてくれたからです。フィルメックスは千里を走る馬を見つける「伯楽」の役割を果たしていると思います。この桜の国で「伯楽」に出会え、素晴らしい友人を得られたことに感謝します。
<イェランさん(女優)コメント>
マスコミの皆様、審査員・映画祭スタッフの皆様、本当にありがとうございました。
◇Q&A
― 受賞2作品を最も推した審査員の方の選考理由を教えてください。
ウルリッヒ・グレゴール氏
(審査委員長/ドイツ/ベルリン国際映画祭フォーラム部門創設者)
『ふゆの獣』は、カメラワークが素晴らしく、映画の形式、すなわち映画的な言語と内容が一致しているユニークな作品です。また非常に少ない予算で作られている奇特な映画で、このような作品を我々は支援すべきだと思いました。
アピチャッポン・ウィーラセタクン氏
(審査員/タイ/映画監督)
『独身男』には発見の喜びがあります。技術的な側面は完璧ではありませんが、その不完全性が魅力でした。最も重要なのは、この映画作家が被写体や主題に対して情熱を持っている、そして楽しみながら映画を作っていると感じ取れたことでした。
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― 『ふゆの獣』はどのような方法で制作が実現したのでしょうか。
内田伸輝監督 出演者については、無料で出演してくれる役者さんをmixiで募集し、オーディションで決めました。また、脚本は一応あったのですが、それを全部忘れてもらい、プロットだけを決めて役者も監督もカメラも即興で撮影をしました。予算は110万円です。
「(受賞が)信じられない」という面持ちの内田監督、かなり緊張していたハオ監督、それぞれから溢れるような喜びが伝わってきました。映画界の将来を担う新進作家の独創的な作品が揃ったコンペティション部門で栄冠に輝いたお2人。今後の活躍が楽しみです。
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《閉会式》
11月28日(日)、有楽町朝日ホールにて第11回 東京フィルメックスの閉会式が行われました。
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◇「ネクスト・マスターズ2010」の報告
11月22日から6日間に渡り、人材育成プロジェクト「ネクスト・マスターズ2010」が行われました。アジアから映画の未来を描く人材が20名参加し、彼らの企画の中から、次の企画が各賞を受賞しました。
▼東京フィルメックス ネクストマスターズ最優秀企画賞
『Ilo Ilo』(アンソニー・チェン/シンガポール)
▼スペシャル・メンション
『IT MUST BE A CAMEL』(シャーロット・リム・レイ・クエン/マレーシア)
◇ウルリッヒ・グレゴール審査委員長より総評
ウルリッヒ・グレゴール審査委員長 今回、東京フィルメックスにくることができ、審査員や友人のみなさんと一緒に10本のコンペティション作品を拝見し、ディスカッションする光栄に与りました。審査員のみなさんと一致して感じたのは、たくさんの映画が私たちを魅了し、ワクワクさせてくれたことです。これらの映画を観ることによって、現代に生きるということ、現代の社会における状況、政治状況、そして人間がどのようにして暮らしているかということについての重要な示唆を得ることになりました。また、多くの作品が非常に映画言語的に優れた進歩的な表現力を持ち、力強い構成力を持っている作品が選ばれています。(コンペティションにおいて)たくさんの優れた作品の中から2本の作品を選ぶことに、とても苦労しました。
審査員同士が話し合うことは、とても面白いことでした。あまりにも違う視点を持っていたからです。我々は違う国からやってきて、それぞれの秩序を持ち、職業も異なりますから、統一した見解に収まるのはとても難しかったです。その中で、映画を芸術として、表現のメディアとして、可能性を持っている作品に賞を与えたいと考え、結論に至りました。
◇特別招待作品『詩』(仮題) イ・チャンドン監督より挨拶
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◇受賞に寄せてのコメント
▼最優秀作品賞:『ふゆの獣』(監督:内田伸輝/日本/2010年/92分)
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加藤めぐみさん(『ふゆの獣』出演者) 改行 上映していただけるだけで、みなさんに観ていただけるだけで、本当に嬉しかったのに、このようなすばらしい賞をいただけて本当に嬉しく思っています。 役者を代表して内田監督にお礼を言いたいと思います。この映画はほとんどアドリブで演技をするというスタイルをとっているのですが、私たち役者4人の演技を信じて撮ってくれてありがとうございます。 |
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▼審査員特別賞 コダックVISIONアワード:『独身男』(監督:ハオ・ジェ/中国/2010年/94分)
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▼観客賞:『Peace』(監督:想田和弘/日本・アメリカ/2010年/75分)
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想田和弘監督 改行 作風が作風なだけに、観客賞には一生縁がないんじゃないかなと思っていました。だから、すごく光栄です。多分、出演してくれた猫たちのおかげじゃないかなと思います。(観客笑い) 猫は穴子が好物なので、今度(映画の舞台になった)岡山に帰ったときは、上等な穴子を用意して持っていこうと思います。 |
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◇林加奈子 東京フィルメックス・ディレクターより閉会の挨拶
観る人がいて、はじめて映画が輝きます。観る人と作る人がいて、はじめて映画祭が続けられます。刺激的なすばらしい映画がある限り、東京フィルメックスは続きます。また来年お会いしましょう。
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★第11回 東京フィルメックスの公式パンフレットを、2名さまにプレゼント★
第11回 東京フィルメックスの公式パンフレットを、2名さまにプレゼント致します。 改行 ご応募はこちらから。応募〆切は、2010年12月31日(金)です。 |
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▼第11回 東京フィルメックス
期間:2010年11月20日(土) ~ 11月28日(日)
主催:特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
●第11回東京フィルメックス公式サイト
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《審査員記者会見》 取材・編集・文:吉永くま スチール撮影:卯里学
《閉会式》 取材・編集・文:那須ちづこ スチール撮影:さとうまゆみ
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