フィンランド映画祭 2010

  • 2010年10月31日更新

昨年、名匠アキ・カウリスマキ監督作品を一挙上映し、好評を博したフィンランド映画祭。今年も恵比寿ガーデンシネマにて2010年10月30日(土)より開催され、新世代の監督たちによる選りすぐりの新作7本が上映されます。

オープニング作品は、今年7月のインディアナポリス映画祭で最優秀ワールド・シネマ賞を受賞した『ツイステッド・ルーツ』。その他、日本での劇場公開が決定した『ヤコブへの手紙』と『4月の涙(仮題)』など、多種多様な作品がラインナップされています。上記3作品では監督のティーチ・インも行われる予定です。

洗練された雑貨やインテリアなどで知られ、旅行先としても人気の高まっているフィンランドですが、同国の映画が日本国内で商業公開される機会はあまり多いとはいえないのが現状です。フィンランド映画に出会えるこの貴重な映画祭。ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

ツイステッド・ルーツ「twistedroots」

『ツイステッド・ルーツ』
原題:Väärät juuret
95分 カラー/2008年
監督:サーラ・サーレラ
キャスト:ミルカ・アーロス
ペルティ・スヴェホルム

アンティーク家具の修理店を営むミッコは遺伝性疾患のハンチントン病を患い、店の経営は危機に立たされていた。妻のミルハミは、行方不明の弟の保証人として多額の借金を肩代わりすることに。フィンランド北部の冬の町を舞台に、家族のありようを丹念に描き出す静かな感動作。

僕はラスト・カウボーイ「last cowboy standing」

『僕はラスト・カウボーイ』
原題:Skavabölen pojat
118分 カラー/2008年
監督:ザイダ・バリルート
キャスト:イルマリ・ヤルヴェンパー
オニ・トンミラ

優しい母親と魅力的な父親に育まれ、ルペルトとエベルトの兄弟は幸せな生活を送っていた。しかしルペルトが偶然見つけたある一通の手紙によって、家族の幸福は次第に蝕まれていく。70年代から80年代にかけて、大人たちの理不尽に翻弄されながら過酷な幼少期を送った兄弟の絆を克明に映した濃厚なドラマ作。

禁じられた果実「FORBIDDEN FRUIT」

『禁じられた果実』
原題:Kielletty hedelmä
104分 カラー/2008年
監督:ドメ・カルコスキ
キャスト:マルユットゥ・マリスト
アマンダ・ピルケ

戒律の厳しいキリスト教原理主義の村に暮らす18歳のラーケルとマリア。マリアは結婚を前に普通の10代らしい生活への憧れと好奇心からヘルシンキへと向かう。一方、ラーケルは親族や司祭たちからマリアを誘惑から守るよう命じられる。信仰と欲望の狭間で葛藤するふたりの少女の心情をリアルに描き出した意欲作。

ハート・ビーツ「HEARTBEATS」

『ハートビーツ』
原題:Kohtaamisia
81分 カラー/2009年
監督:サーラ・カンテル
キャスト:アネリ・サウリ
ヤンニ・バネルジー

問題を抱えた孫娘を持つ老女、過去の記憶に囚われる母親とその思春期の娘、息子を愛しながらも薬物から抜け出すことのできない母親など、7つのエピソードをそれぞれすべてワンテイクで撮影。それらをひとつのストーリーに仕上げた実験的な構成も大きな見どころとなっている。

ヤコブへの手紙「LETTERS TO FATHER JACOB」

『ヤコブへの手紙』
原題:Postia pappi Jaakobille
75分 カラー/2009年
監督:クラウス・ハロ
キャスト:カーリナ・ハザード
ヘイッキ・ノウシアイネン
配給:アルシネテラン(2011年正月第2弾、銀座テアトルシネマほか全国順次公開)

孤独と絶望からの癒し-ヤコブのもとには、毎日悩める人々からの手紙が届けられる。刑務所から出所したレイラは、盲目の牧師のために手紙を読み、返事をする手伝いにやってくるが、なかなか心を開こうとしない。ある日を境に手紙が一通も届かなくなり、落ち込み憔悴してしまう牧師を見てレイラの心に変化が…。
※本映画祭では、東京のみの上映です。
当サイトでは、ハロ監督にインタビューをおこないました! 日本公開に合わせて掲載予定です。お楽しみに!

4月の涙「tears of April」

『4月の涙(仮題)』
原題:Käsky
109分 カラー/2009年
監督:アク・ロウヒミエス
キャスト:サムリ・バウラモ
ピラ・ビータラ
配給:アルシネテラン(2011年公開予定)

1918年、フィンランド内戦末期、赤衛軍の女性兵士たちが白衛軍の男性兵士たちに捕えられる。その後、女性兵たちは乱暴され銃殺。理不尽で残酷な蛮行に衝撃を受けたアーロは、ひとり生き残った女を連れボートに乗り込む。ふたりを待ち受ける哀しく、切ない運命。内戦という異様な時代を背景に様々な愛の形が描かれる。
※本映画祭では、東京のみの上映です。
当サイトでは、ロウヒミエス監督にインタビューをおこないました! 日本公開に合わせて掲載予定です。お楽しみに!

危険なレシピ「Recipes for Disaster」

『危険なレシピ』
原題:Katasrofin ainekset
86分 カラー/2008年
監督:ジョン・ウェブスター
キャスト:ジョン・ウェブスターとウェブスター一家

地球温暖化問題を機に、1年間、現在のライフスタイルを変えずに、石油化学商製品を一切購入しない“オイルフリー”生活を実践すると決めた一家の日常を追ったドキュメンタリー。意思の力と家族の絆で“不便”さという“惨事(ディザスター)”の渦を乗り越えていく一家の姿を通して、環境と人間のありかたを見つめていく。

▼フィンランド映画祭 2010
期間 2010年10月30日(土)~11月5日(金)
会場 恵比寿ガーデンシネマ
特別後援:駐日フィンランド大使館
主催:フィンランド・フィルム・ファンデーション
協力:アルシネテラン
運営:角川メディアハウス
フィンランド映画祭 2010 公式サイト
※詳しいスケジュール、チケット購入方法等は、公式サイトをご参照ください。

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文・編集:吉永くま 一部文:秋月直子
改行

  • 2010年10月31日更新

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