『おやすみアンモナイト 貧乏人抹殺篇/貧乏人逆襲篇』

  • 2010年01月25日更新

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印象に残るタイトルだ。「貝の化石に、おやすみの挨拶?」と、不思議な気分になってくる。タイトルの由来については、のちほど。

俳優としても活躍している増田俊樹監督が、「貧乏人が世界征服を企む物語」を撮った。出演者も脚本家も異なる『貧乏人抹殺篇』と『貧乏人逆襲篇』という、ふたつの物語から成っている。

しかし、ふたつの物語は交わらない。だからといって、別々に語られるわけでもない。構成の斬新さは、とびきり。

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疋田紗也演じる竹田成子が、家計を助けるために一念発起して、東京・六本木のナイト・クラブで働くことを決意する『貧乏人抹殺篇』。

辻岡正人演じる小日向登が、金を使わないで人生を楽しむ術(すべ)を追求して、東京・高円寺を熱狂の舞台とする『貧乏人逆襲篇』。

ふたつの物語に共通するのは「貧乏」。東京タワーをバックに、周囲の女たちからぶつけられる嫉妬と家庭の問題に成子が悩んでいたかと思えば、いきなり、JR中央線が走る高円寺の路上で登が祭りを繰り広げている。前者は、因縁どろどろの群像劇。後者は、ハイ・テンションでスピーディーな群像劇。

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「同じ東京にいて、同じ時間を共有していても、話がまったく噛みあわないというシュールな感覚が、東京ならでは。そういう感覚を、この映画でも表現したいと思った」 ― 増田監督は、そう語った。まったく違うテイストとテンポの群像劇が同時進行している事実に戸惑えば戸惑うほど、増田監督の言葉に納得して、「日常生活で、誰かと話しているときに、こういう戸惑いを味わうことって、多いよな」と、鮮明に気づく。

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『貧乏人逆襲篇』の主人公・登のモデルは、高円寺で「素人の乱」というリサイクル・ショップを経営している、活動家の松本哉である。彼がなぜ、「素人の乱」を実現するようになったのか ― その経緯を、増田監督は『貧乏人逆襲篇』で描いた。あらゆるメディアでとりあげられるようになる前の松本哉の姿を、この映画を通じて、垣間見ることができる。

ところで、2010年1月23日にネイキッドロフトで開催された本作の記者会見で、『おやすみアンモナイト』というタイトルの由来が明らかになった。

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記者会見の当日は、成子を演じた疋田さんの、21歳のバースデー。誕生日祝いを兼ねた会見となった。楽しくにぎやかな当日の模様を、左の画像で、おすそわけ。

映画のタイトルについて記者から訊ねられた増田監督は、「元々は違うタイトルを予定していたのですが、疋田さんのブログをチェックしているときに、“おやすみアンモナイト”という寝る前の挨拶を発見し、『よしっ、これでいこう!』と決めました」と回答。その言葉を受けて、疋田さんは、「“おやすみアンモナイト”は、私が流行らせたいと思っている言葉でして(笑)。“おやすみ”と、夜の“ナイト”をくっつけて作った言葉なんです。私の友達の間では、みんな使ってくれていますよ。この映画をきっかけに、“おやすみアンモナイト”という言葉がブームになってくれたら嬉しいです!」と話した。

▼『おやすみアンモナイト 貧乏人抹殺篇/貧乏人逆襲篇』作品情報
日本/2009年/100分
監督・出演:増田俊樹
出演:辻岡正人 疋田紗也 黄金咲ちひろ 神楽坂恵 リエコ・J・パッカー 大塚麻恵 他
配給:月の石
2010年1月30日より、ユーロスペース(東京)にてレイトショー。1月30日と2月5日に舞台挨拶が、2月3日にトーク・ショーが、それぞれ決定しています。詳しくは、公式サイトと劇場サイトをご参照ください。
『おやすみアンモナイト 貧乏人抹殺篇/貧乏人逆襲篇』公式サイト

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文:香ん乃

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改行

  • 2010年01月25日更新

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