『ランブリングハート』 村松亮太郎監督 インタビュー

  • 2010年01月09日更新

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村松亮太郎監督の待望の新作『ランブリングハート』が、2010年1月16日より公開されます。

旬の女優・臼田あさ美さんと、人気の若手俳優・桐山漣さんの出演で話題の本作は、キュートなロマンティック・コメディ。公開を記念して、村松監督にたっぷりとお話を伺ってきました!

― 俳優活動を経て、監督として映画を撮るようになった村松監督。これまでの劇場公開作品(『LOVEHOTELS‐ラヴホテルズ‐』、『ヘイジャパ!』〔正式名称:『 HEY JAPANESE! Do you believe PEACE,LOVE and UNDERSTANDING? 2008 2008年、イマドキジャパニーズよ。愛と平和と理解を信じるかい?』〕、『アリア』)では、村松監督自身が脚本を書いていましたが、『ランブリングハート』では、劇団「KAKUTA」の主宰・桑原裕子さんを脚本に起用しています。その理由は?

「桑原さんの舞台を観たときに、この人となら(一緒に)やれる、と思ったんです」

僕は監督や役者という職業につきたかったわけではなくて、単純に映画が好きで、よい作品を残したい、というシンプルな気持ちがあります。職業としての憧れではなく、言いたいことがあるから映画を撮る、という自然な流れで、自分で脚本を書いてきました。そういう方法でこれまでやってきましたが、違う広がりを見てみたくなったんです。自分が言いたいことを、いろいろな素材を集めて具現化することはできるだろうか、と考えました。

桑原さんの舞台を観て、ユーモアのセンスひとつにしても、とても共感できると思いました。この人となら(一緒に)やれる、と思ったんです。「(気持ちが)わかるね。わかる、わかる」という感覚があったので、一緒に映画を撮ったらおもしろいかな、と感じたんです。

― 『ランブリングハート』の主な舞台はラブホテルです。村松監督は、『LOVEHOTELS‐ラヴホテルズ‐』や『アリア』でも、ホテルを印象的な舞台に使っていました。「ラブホテル」という場所にこだわりがあるのですか?

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「ホテルの密室の空間は、男女が素顔になれる場所なので、おもしろい」

すごく「ラブホテルが好き」みたいですよね(笑)。それぞれの作品の企画の発端になった視点が、たまたまラブホテルでした。ホテルの密室の空間は、男女が素顔になれる場所なので、おもしろいな、と思ったんです。別に、「毎回、違うタイミングでラブホテルを描こう」と思っているわけではないんですよ(笑)。

『LOVEHOTELS‐ラヴホテルズ‐』がヒットしたので、プロデューサーはシリーズ化したい、と考えました。だから、『ランブリングハート』は、内容は全く異なりますが、一応、『LOVEHOTELS 2』にあたるんです。

『LOVEHOTELS‐ラヴホテルズ‐』は3編からなるオムニバスでしたが、中でも、サエコさんが主演のコミカルな『ANTI SEX』が最も評判がよかったんです。よい意味で遊びに近い、軽い感覚で作った作品でした。あの作品が好評だったので、同じような(明るいコメディ・タッチの)タイプの長編映画を作ったらどうだろう、というのが『ランブリングハート』のスタートでした。

― 『ランブリングハート』には、主演の翠と葵の二役を臼田さんが、クールな男の子の南を『仮面ライダーW』で人気の桐山さんが、それぞれ演じています。フレッシュな役者のふたりの印象は?

「桐山さんの台本は、初日の時点で既に(読みこんで)ぼろぼろになっていたんですよ」

今までの作品では、自分でキャストを選んでいましたが、そうすると好みが似てくるので、今回は、プロデューサーが提案したキャストに出演してもらいました。

臼田さんは、役者として「いい加減なことはしたくない」という真摯な思いが、とても強い人でした。「リハーサルをたくさんやりたい」と言ってくれたので、しっかりとおこないました。撮影期間は3週間ほどだったので、時間は限られていましたが、準備をしただけ自信になりますし、臼田さんも真剣に取り組んでくれました。

桐山さんは、「役者は天職だから、本気でやりたい」と言っていて、その思いがよく伝わってきました。彼の台本は、撮影初日の時点で既に(読みこんで)ぼろぼろになっていたんですよ。

これまでの桐山さんのイメージに縛られないようにするために、僕は彼の過去の出演作を敢えて観なかったんです。撮影現場での桐山さんは、自分が納得するまでリハーサルをして、僕にも積極的に質問をしてきました。僕が指示や意見を言うと、それを実行して、理解してくれて。役者として、とても素直な人です。

― 『ランブリングハート』の公開を楽しみにしている臼田さんや桐山さんのファンの中には、村松監督の作品を初めて観るというかたもいらっしゃるかと思いますが、みなさまへメッセージをお願いします。

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「今までに撮った作品よりも、間口が広い映画です」

いわゆるアイドル映画やイケメン映画を想像して観に来てくれるかたもいるかもしれませんが、観終わったあとに、まったく違う印象を持ってもらえたらよいのではないか、とプロデューサーとふたりで話しました。作品を観ていただくきっかけは、キャストが目当てでも、「舞台挨拶で出演者を生で見たかったから」でもよいんです。映画を観終えたあとに、「本当におもしろかった」と感じていただけたら嬉しいですね。

僕はこれまでもメジャーな映画を撮ってきたつもりだったのですが、どうやら、間口が狭く感じられる作品だったようなので(笑)。『ランブリングハート』は、今までの作品よりは間口が広くなっていると思います。

― 『アリア』はシリアスなラブ・ストーリー、『LOVEHOTELS‐ラヴホテルズ‐』はオムニバス、『ヘイジャパ!』はブラック・ユーモアの効いた群像劇、そして、『ランブリングハート』はロマンティック・コメディ:村松監督は多彩なイメージの作品を産み出しているが……。

「どの作品にも、『村松亮太郎の匂い』は絶対に出ていると思います」

僕の作品を総て観た人は、「この監督は、なにがしたいんだろう?」と感じると思いますが(笑)、そのときどきに自分が一番おもしろいと思うものを撮っています。「自分のポリシーはこうだ」と、決めて縛られるのはつまらない。軟体動物の蛸のような、自由な生きかたがよいな、と思うんです。

そのときどきのインスピレーションや、自分に一番「生(なま)」である感覚に、最も力があると考えています。そのとき興味があるものに、純粋にアプローチしたい。「自分の売りはこれだ」と決めたくはないし、それは結果論で、他人が評価することです。

自分のスタイルにこだわりがなくて、毎回、まったく違う作品を撮っているつもりです。でも、どの作品にも、「村松亮太郎の匂い」は絶対に出ていると思います。逃れたいのに逃れられない自分がいるのですが、それが「個性」であり、自動的に浮き彫りになっていくものなのかもしれません。

『ランブリングハート』は、自分で脚本を書いていなくて、キャスティングもプロデューサー主体で進めたので、今までの作品とは多少、アプローチの仕方が違いました。多くの人々が出してくるいろいろな要素を、自分がどうまとめあげるか、という感じでしたね。

― スクリーンに映える、素敵な容姿と雰囲気の村松監督。今後、俳優としての活動の予定は?

「(自分の監督作でなくても)おもしろければ、出演したいです」

役者をやめたつもりはないんです。(自身が代表を務める)NAKED INC.を設立したときは、まだ俳優として別の事務所に所属していました。その事務所を抜けて、NAKED INC.の運営がメインになってくると、自然と、役者としての活動が減っていって。よい作品と機会があれば出演したいのですが、現在は、ほぼ引退状態なんです。

― 国内・海外を問わず、今、注目している役者は?

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「若さや青春感を体現している印象のエミール・ハーシュが素晴らしい」

エミール・ハーシュです。『イントゥ・ザ・ワイルド』を始め、ほとんどの出演作を観ています。芝居が巧いのはもちろんですが、若さや青春感を体現している印象が素晴らしい。若い頃のレオナルド・ディカプリオを髣髴とさせる、「リアリティを持って生きている」という匂いがします。

『アリア』に出演した当時の原田佳奈さん(主人公の18歳の高校生・ミチ役)もそうですが、「あの年齢に、あの作品の舞台である長野県の諏訪市にいる」という、生(なま)のリアリティを感じて、その存在感が好きでした。ミチにしか見えなかったんです。

― ミニシアターで映画をご覧になることは、ありますか?

「一般のお客さまと近いスタンスになろうと思って、シネコンへ行くようにしています」

以前はよくミニシアターに行っていましたが、最近は、一般のお客さまと近いスタンスになろうと思って、逆に、シネマコンプレックス(=シネコン)へ行くようにしています。子供がいるから、というのもありますが、僕が考えている映画と、一般のかたが考えている映画のギャップを、(シネコンでは)よい意味で感じることができるので、勉強になります。

シネコンに来るお客さまの多くは、特定の作品がとても観たいから来ているというよりは、「話題になっているから、観ておこう」という感覚で足を運んでいると思います。観た作品がたとえつまらなくても、さほど不満を感じていないような雰囲気があります。そこがあまり問題にならないというのは、映画の作り手にとっては恐ろしいことですけどね。

― 次回作の予定や、今後、撮ってみたい作品について、聴かせてください。

「原点回帰をしたい、という気持ちがあります」

俳句や和菓子の物語をやりたい、と思っているんですよ。先日は、久々にショート・フィルムを撮りました。ティム・バートンのような、ハロウィンのホラー・コメディです。

最近、自分の中でトレンドなのは、J・D・サリンジャーの小説『ライ麦畑でつかまえて』です。高校生のときに読んで以来、好きな作品なのですが、近頃、無性に気になるので、自分がなぜそう感じるのか、追いかけているところです。

原点回帰をしたい、という気持ちがあります。そういう流れで、女性版の『イントゥ・ザ・ワイルド』のようなロード・ムービーを撮りたいと考えています。「ひとりの女の子がオーロラを見に行くために旅をする」という内容で、極寒の地で撮りたいんです。できればアラスカ、日本なら、(昭和33年に実際にオーロラが現れた)北海道の知床で。説明のできないいらいらとした感情を主人公が抱えている、シンプルな物語なので、『ライ麦畑でつかまえて』に近い部分があると思います。

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村松亮太郎監督 プロフィール
俳優のキャリアを積みながら、1997年にNAKED INC.を設立。クリエイティブ・ディレクターとして、PV、CM、テレビ・ドラマ等を手がけたのち、映画製作に着手。ショート・フィルムの『BLUE』が、2006年ワールドフェストヒューストン国際映画祭でグランプリを受賞したのを皮切りに、各国で注目される。これまでの劇場公開作品は、『LOVEHOTELS‐ラヴホテルズ‐』(2006)、『ヘイジャパ!』〔正式名称:『 HEY JAPANESE! Do you believe PEACE,LOVE and UNDERSTANDING? 2008 2008年、イマドキジャパニーズよ。愛と平和と理解を信じるかい?』〕(2007)、『アリア』(2008)。

『ランブリングハート』公開情報
2010年1月16日より、シネマート新宿伏見ミリオン座他にて、全国順次ロードショー。
『ランブリングハート』公式サイト

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『ランブリングハート』作品紹介
『ランブリングハート』特別試写会で、村松亮太郎監督とキャストが舞台挨拶!

取材・文:香ん乃 撮影:秋山直子

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改行

  • 2010年01月09日更新

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