1月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―

  • 2019年12月31日更新

1月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! 2020年の映画初め、あなたが気になるのは、どの映画!?

LINE UP
1/2(木)公開『さよならテレビ
1/11(土)公開 『あの群青の向こうへ
1/17(金)公開 『花と雨
1/18(土)公開 『ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を
1/18(土)公開 『東京不穏詩
1/24(金)公開 『イーディ、83歳 はじめての山登り
1/25(土)公開 『彼らは生きていた
1/31(金)公開『転がるビー玉


さよならテレビ

取材対象は自分の職場! テレビ局の“今”に迫る問題作

映画『さよならテレビ』メイン画像

東海テレビ開局60周年記念番組を映画化。同社社員でもある監督が報道部にカメラを設置し、会社の本質をさらけ出していく。働き方改革の矛盾、忖度、使い捨て……。「テレビは終わった」という言葉は言い尽くされた感があるが、内部から捉えたものは重みが違う。欲を言えば、もう少し鋭く切り込んでほしかったが。主な取材対象は、あの“セシウムさん事件”の番組キャスターだったアナウンサーやベテラン契約社員など3人。彼らもテレビも果たして活路を見出すことができるのか。番組が作られ大きな反響があったことや映画化されたこと自体、撮る側にも見る側にもまだテレビへの愛情、愛着が残っている証拠なのかもしれない。(吉永くま)

2020年1月2日(木)より全国順次公開 公式サイト
(2019年/日本/109分)  監督:圡方宏史 プロデューサー:阿武野勝彦 製作・配給:東海テレビ放送 配給協力:東風  ©東海テレビ放送

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『あの群青の向こうへ』

未来の自分からの手紙に小さな光を探して

映画『あの群青の向こうへ』メイン画像第15回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭ほか多くの国内映画祭で上映され、みずみずしい印象を残した青春ロードムービー。未来の自分から“ブルーメール”と呼ばれる手紙が届くようになった世界で、高校生のカガリと家出少女のユキは偶然に出会い、ともに東京を目指して旅を始める。拭い去ることのできない心の傷と、未来への漠然とした不安に押しつぶされそうになりながら、その先にあるものを信じて旅を続ける2人。孤独を抱えて彷徨う夜の雑踏と、弱々しくも逞しい2人をやわらかな光で包む昼の映像のコントラストが切なく美しい。MVやCMなどを多く手掛ける1996年生まれの廣賢一郎監督が、21歳の時に自身の思いを投影させたという長編第2作。これからの作品にも期待したい。(min)

2020年1月11日(土)より全国順次公開 公式サイト
(2018年/日本/89分)監督・脚本・撮影・編集:廣賢一郎 出演:芋生悠、中山優輝(現 ・輝山準)、瀬戸かほ ほか 配給・宣伝:アルミード

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『花と雨』

大胆な省略で切り開く音楽映画の新たな地平

日本のヒップホップアーティスト、SEEDAが2006年に発表したアルバムを原案に、数多くのミュージックビデオやテレビCMを手がけてきた土屋貴史監督が初の長編映画に挑んだ。日本社会の閉塞性に溶け込めない帰国子女の吉田は、偶然出合ったヒップホップの音楽にのめり込む。だがなかなか思うように売れず、焦燥感を募らせる中、心の支えは唯一の理解者である姉の存在だった。主役の笠松将がラップをしながらノーカットで歩き続けるかと思えば、時に目まぐるしいカット割りで人物の表情をとらえるなど、多様な映像表現が見事。大胆な省略を用い、ヒップホップと薬物をめぐる危うい物語に緊張と緩和の程よいリズムを刻む劇作術といい、音楽映画の新たな地平に触れた気がした。(藤井克郎)

2020年1月17日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/日本/114分)英題:FLOWERS AND RAIN 監督:土屋貴史 出演:笠松将、大西礼芳、岡本智礼ほか 配給:ファントム・フィルム © 2019「花と雨」製作委員会


ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を

全編せりふなしのほっこりコメディー

『世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方』のドイツの鬼才、ファイト・ヘルマー監督が、旧ソ連のアゼルバイジャンを舞台に一風変わったコメディーを織り上げた。定年間近の鉄道運転士、ヌルランは、自分の運転する列車が建物の壁ギリギリを通るときに引っ掛ける洗濯物を、いつも律義に持ち主に届けていた。運転最後の日に引っ掛けたのはブラジャーだったが、ヌルランは持ち主探しに相当な苦労を強いられる。全編を一切のせりふなしで描き切り、それでも物語や人々の心情が十分に伝わってくる演出力に目を見張る。雄大な草原を悠然と走り抜けた列車が、一転して建物が密集する中、軒先をかすめるように通っていく対比も見もので、不思議な魅力にほっこりとさせられる作品だ。(藤井克郎)

2020年1月18日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2018年/ドイツ、アゼルバイジャン/90分)原題:The Bra 監督:ファイト・ヘルマー 出演:ミキ・マノイロヴィッチ、パス・ヴェガ、チュルパン・ハマートヴァ、ドニ・ラヴァンほか 配給:キュリオスコープ © VEIT HELMER FILMPRODUCTION


東京不穏詩

インド人監督が描く現代日本の生きづらさ

日本で活動するインド出身のアンシュル・チョウハン監督が、現在の日本に立ち込める窮屈な空気感を、一人の女性の姿を通して活写した意欲作。撮影を務めるエストニア出身のマックス・ゴロミドフをはじめ、ほとんどのスタッフが外国人というのも話題だ。東京の高級クラブでホステスとして働きながら女優を目指しているジュンは、ある日、自宅に押し入った男に顔を傷つけられ、大金を盗まれる。同居している恋人が仕向けたことを知ったジュンは、失意のまま長野の実家に帰るが……。恋人や父親など、ろくでもない男どもに希望を奪われていくジュンの悲しみといら立ちを、飯島珠奈が鬼気迫る熱演で表現。日本人では気づかない現代日本の象徴がこの世界観かと思うと興味深い。(藤井克郎)

2020年1月18日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2018年/日本/116分)英題:BAD POETRY TOKYO 監督:アンシュル・チョウハン 出演:飯島珠奈、望月オーソン、川口高志ほか 配給:太秦 © 2018 KOWATANDA FILMS. ALL RIGHTS RESERVED


『イーディ、83歳 はじめての山登り』

自分を取り戻したい人への応援歌

映画『イーディ、83歳 はじめての山登り』メイン画像

長年の夫の介護から解放された83歳の英国人女性が、“スコットランドのスイルベン山に登る”というかつての夢に挑む姿を追う。主人公イーディを演じたのは、撮影時やはり83歳だったシーラ・ハンコック。この役のためにトレーニングに励み、過酷な撮影に臨んだという。町のフィッシュアンドチップス屋の店員から「何も遅すぎることはない」と言われたときの表情、偶然知り合った青年の店で新しい登山道具を選ぶ様子、山を前にしたときの固い決意、彼女の言動は私たちの中に眠る“何か”を目覚めさせる。監督が撮る山の壮大な自然は美しくもあり厳しくもあり、まるで人生を見ているようだ。未来や夢は決して若者の専売特許ではないことを教えてくれる。(吉永くま)

2020年1月24日(金)より全国順次公開 公式サイト  予告編動画
(2017年/イギリス/102分)原題:Edie 監督・脚本:サイモン・ハンター 出演:シーラ・ハンコック、ケヴィン・ガスリー、ポール・ブラニガン ほか 配給:アット エンタテインメント © 2017 Cape Wrath Films Ltd.


彼らは生きていた

リアルな再現で戦争の不条理を浮き彫り

『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソン監督が、第一次世界大戦の西部戦線で撮影されたイギリスの膨大な映像資料をもとに、修復とカラー化を施してよみがえらせたドキュメンタリー。音声も、帰還兵たちの証言記録に加え、銃声や爆撃音などをリアルに再現し、あたかも激烈な戦場の最前線に送り込まれたような臨場感を覚える。「戦争に行かないのは卑怯者」と言われて出兵した激戦地で、泥だらけの塹壕生活に死と背中合わせの恐怖体験を乗り越え、ようやく帰還したら「どこに行っていたんだ」と聞かれたなど、戦争の不条理が改めて浮き彫りになる。現在も同じような光景は地球のどこかで繰り広げられているわけで、ジャクソン監督の強い反戦への思いが心に響いた。(藤井克郎)

2020年1月25日(土)より全国順次公開 公式サイト
(2018年/イギリス・ニュージーランド/99分)原題:They shall not grow old 製作・監督:ピーター・ジャクソン 配給:アンプラグド © 2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved


転がるビー玉

若手女優たちのきらめきと、変わりゆく渋谷をスクリーンに焼き付けた青春映画

『サラバ静寂』『魔法少年☆ワイルドバージン』で注目される気鋭・宇賀那健一監督がメガホンを執り、女性ファッション誌「NYLON JAPAN」の創刊15周年プロジェクトとして製作された青春映画。再開発が進む渋谷の古いシェアハウスで、共同生活を送りながら夢を追う3人の女の子を、吉川愛、萩原みのり、今泉佑唯ら、注目の若手女優が演じる。モデル、雑誌編集者、ミュージシャンと、それぞれの夢に奮闘しながらも、確かな目的や行き着くべき先を見い出せずにいる3人は、止まることなく景色を変えていく渋谷の街で、取り残されていくような焦燥を感じ、誰かと一緒にいても孤独を抱えている。そんな等身大の若者たちの感情を、力いっぱい体現した女優たちの好演が眩しい。宝石よりも愛おしい輝きに満ちた、“ビー玉”たちの物語だ。(min)

2020年1月31日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/日本/94分)監督:宇賀那健一 出演:吉川愛、萩原みのり、今泉佑唯、笠松将、大野いと ほか 配給:パルコ ©映画『転がるビー玉』製作委員会

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