『眠る虫』舞台挨拶レポート— 初日完売の幕開けに、金子由里奈監督と主演・松浦りょうが感激! ベテラン俳優、五頭岳夫のお茶目なトークも炸裂!

  • 2020年09月07日更新

映画『眠る虫』初日舞台挨拶_トップ画像
映画『眠る虫』の公開初日舞台挨拶が2020年9月5日(土)に東京・中野区のポレポレ東中野で行われ、金子由里奈監督と、主人公の佳那子を好演した松浦りょうが上映後の舞台挨拶に登場した。さらに、二人の応援に駆け付けたベテラン俳優の五頭岳夫も急遽ステージに上がり、ちょっぴり緊張気味の二人を軽妙なトークでリードしながら会場を盛り上げた。


映画の余韻と熱気であふれた客席に、金子監督が思わず涙!

MOOSIC LAB2019 長編部門でグランプリに輝いた本作は、“死者” と ”声” を巡る小さくも壮大な旅を描く物語。独創的な音と映像表現を散りばめ、唯一無二の世界観で普遍的な時の流れと命の営みの愛おしさを描き出した意欲作だ。

監督・脚本を務める金子由里奈は、2018年に山戸結希監督プロデュース企画『21世紀の女の子』でわずか一席だけ設けられた公募枠に200人のなかから選ばれ、翌年には自主映画『散歩する植物』がPFFアワード2019で入選を果たすなど、いま日本映画界から注目を集める期待の新星。劇場デビューとなる本興行では自主配給も務め、作品に込める思いも並々ならぬものを感じさせる。

コロナ禍に配慮し座席数は半分に制限されたものの、完売御礼で幕を開けた初日。映画を観終わったばかりで余韻と熱気が漂う客席を目の前にした金子監督は、その光景に思わず目を潤ませ、感激で声を詰まらせながら「無事に初日を迎えることができて、うれしく思います。私、この映画がほんとに大好きなので……(涙が溢れて)あ、ヤバい。皆さんに届けることができてうれしいです!」と挨拶した。

客席から温かな拍手が湧き上がると、「自主配給をしていて、皆さんに届く過程をずっと見てきたので、感慨深いというか……。(再び声を詰まらせて)すみません。本当にうれしく思います」と、こみ上げる思いを語った。

「作品の良さがまだ腑に落ちていない」主人公を演じた松浦の誠実な作品愛

死者と生者のあいだをたゆたう主人公・佳那子を希有な存在感と圧倒的な透明感で演じた松浦りょうは、「私もこの映画が大好きで、何度も観ているんですけど……まだ、この作品の良さが腑に落ちていないんです。いや、良さは腑に落ちているけど、“なんで良いのか” が言葉にできないというか。掴もうとしても飛んでいってしまう風船のようで、夢の中にいる感覚」と、感覚的かつ率直に作品の奥深さを表現。

続けて、「いつか絶対腑に落ちたいです。なぜこの作品好きなのか理由をしゃべりたいし、見つけたいけど……。見つかるとなんだか少し寂しい気持ちになる気もして。観れば観るほど、人ぞれぞれにカタチを変えて心に残り続ける映画だと思います。これからもこの作品を愛していただけるとうれしいです!」と、愛情たっぷりに作品への誠実な思いを語った。

演じていて苦労した点については、「(監督から)佳那子をあまり演じきらないでほしいと言われて。最初は『ん?』って(笑)。演じていくうちに理解していったんですけど、はじめに台本を読んだ時点では伝わってこなくて、苦労しました」と述懐。それを受けて金子監督は「佳那子はたまたまあのバスに乗り合わせて、たまたま(老女の鼻歌を)聴いてしまった。皆さんもたまたま『眠る虫』という映画を観ているけど、もしかしたら違う誰かがチケットを取ってそこに座っていたかもしれない。佳那子も皆さんも交換可能な存在で、それでもここに居るということが、とても大事だったから。そういうことを言語化するのが難しくて、苦労をお掛けしました。すみません!」と解説しつつ労をねぎらった。

ベテラン俳優のさりげない気遣いと、茶目っ気たっぷりのトークが会場を魅了!

佳那子の対話相手である老人・近藤茂雄を快演した五頭岳夫は、花束を持って若い二人の晴れ舞台を祝うために駆け付けたが、急遽ステージに上がることに。実はこの日、ステージで真っ先に声を発したのも五頭だ。「皆さん、長らくのバスのご乗車ありがとうございます!」と、バスのシーンの長回しが印象的な本作に掛け、茶目っ気たっぷりに挨拶。緊張と感激で固まる若手二人をさりげなくリードするカタチで舞台挨拶はスタートした。

脚本については「初めはなかなか掴めなかった」と語り、「バスのシーンがすごく長いので、どんな風に描かれるのかなと。バスの(車中の)生活音みたいなものが最初は気にならなかったけど、何回か観ているうちにすごく心地良いし、自然だし、いろんなものに生命みたいなものが宿っていて。石が一つのテーマ(モチーフ)になっていますけど、あれは意志が強かったんですね!」と駄洒落まで飛び出し、会場を沸かせる。

続けて、「前半のバスのシーンと、後半のドラマの部分がうまく繋がるのかが心配でした。もっとさらっと演じればよかったかな?」と振り返ると、金子監督がすかさず、「いえ、(完成作品が)最善です! 悔いなしです! 『眠る虫』は偶然性をすごく大事にしているんです。映画を撮るのがなんでこんなに楽しいかと言ったら、自分でも思ってもいない偶然性がどんどん飛び込んでくるから。今皆さんが観ていただいたものに、そういうものも全部映っていると思います!」と力強く回答した。

思い出されなくなった記憶が、もう一度思い起こされる映画にしたかった

撮影中に幾度となく脚本が変わっていったという本作。金子監督は「何回か変わりました。すみません」と出演者の二人に謝りながらも、「でも、一貫して描きたかったのは、死んだ方や、思い出されなくなった思い出とかに向けて、そういった記憶が、もう一度思い起こされるような、そんな映画にしたかった」と作品に込めた強い思いを述べた。

最後に会場に向けてメッセージを求められると、五頭が「こういう大変な状況下でも映画が上映できるのは、本当に幸せなこと。大変ななかお越しくださって、本当にありがとうございました!」と深くお辞儀し、続けて松浦も「こんな大変なときに映画館に来ていただいて、本当にありがとうございます。これからも『眠る虫』を愛してください!」と一礼しながら会場に呼びかけた。

音と絵の立体的な邂逅を、ぜひ劇場で堪能して!

最後に金子監督は、「映画館で観ないとおもしろさが半減する映画だと思っています。いま、映画館がネガティブな響きになっているのがちょっと悲しいけど、隣席にも人がいる映画館がもうすぐ戻ってくると思います。ぜひ、映画館で観てください!」と声を大にして語り、「少しでも気に入ってくださったら、SNSで感想をつぶやいたり、友達に薦めてもらったり、帰りの電車でいつもより大きめの声で『眠る虫』の話をしてもらえると……そういう『眠る虫』的な出会いとかもあってほしい。バスに乗ったことがある人に観てもらいたい映画なので、どうすればバスに乗ったことがある人全員に届くんだろうと考えています。私が巡り会うことのないバスに乗ったことのある人に、皆さんがそういう風に繋いでいただいただければと思っています。よろしくお願いします!」と偶然性の広がりを求めてユーモアたっぷりに語ると、会場からは温かな拍手と笑い声が響いた。

会場の熱気がさめやらぬなか、舞台挨拶は終了。続いて劇場ロビーで行われた監督のサイン会には、多くの観客が列を作った。

音と絵の立体的な邂逅にこだわり、5.1ch サラウンドを採用した本作は、ポレポレ東中野で絶賛上映中だ。唯一無二の世界観と生と死の境界線を現した浮遊感を劇場のサウンドシステムでぜひ楽しんでほしい。

作品・公開情報


▼『眠る虫』作品・公開情報
映画『眠る虫』メイン画像(2019年/日本/5.1ch/スタンダードサイズ/62分)
監督・脚本・編集:金子由里奈
出演:松浦りょう、五頭岳夫、水木薫、佐藤結良、松㟢翔平、髙橋佳子、渡辺紘文 ほか
音楽:Tokiyo (And Summer Club) 主題歌「なめたらしょっぱいのか」
助監督:古田智大 撮影:平見優子 照明:日比野博記 録音・整音:五十嵐猛吏 特技監督:青井泰輔 美術:中村哲太郎 ヘアメイク:石松英恵 衣装:川崎祐美 スチール:北田瑞絵 ビジュアルデザイン:原野萌
企画:直井卓俊  プロデューサー:藤田直哉
製作・配給:yurinakaneko

映画『眠る虫』サブ画像2【STORY】幽霊って、どこから声を出しているんだろう——。バンド練習に向かうバスの中、佳那子が遭遇したのは、とあるメロディ。歌を口ずさむ老婆が抱える木箱に興味を惹かれた佳那子は、練習をすっぽかして彼女のストーキングを開始。乗客が少なくなっていくバス。夜に包まれた終着駅。名前のわからない街で佳那子がたどり着いた先は……。これは、“死者”と”声”を巡る、小さくも壮大な旅の記録。

『眠る虫』公式サイト

※2020年9月5日(土)よりポレポレ東中野にて公開

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(取材・編集・文:min)

  • 2020年09月07日更新

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