1月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―

  • 2019年01月04日更新

1月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! あなたが気になるのは、どの映画!?

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1/5(土)公開 『迫り来る嵐』
1/18(金)沖縄先行上映、2/9(土)全国公開  『洗骨』
1/19(土)公開 『バハールの涙』
1/25(金)公開 『ヴィクトリア女王 最期の秘密』
1/26(土)公開 『天才作家の妻 40年目の真実』


『迫り来る嵐』

殺人捜査への執着が引き起こす悲劇

映画『迫り来る嵐』メイン画像香港返還を控える中国を舞台にした重厚なサスペンス。1997年、古い国営製鋼所の保安部の警備員ユィは、刑事に憧れ、工場近くで起こった若い女性の連続殺人事件の捜査に首を突っ込み始める。やがて自分の恋人が犠牲者の女性たちに似ていることを知り、ある行動に出るが、その先には思いもかけない運命が待ち受けていた……。終始雨か曇天で、街には暗くて陰鬱な雰囲気が漂う。まるで激変する中国社会に置き去りにされ、自身の存在意義を必死に追い求めるユィの焦燥を映し出しているかのようだ。狂気に近い執着が引き起こす悲劇の連鎖が痛ましい。観客が判断を委ねられるいくつかの謎も、作品の深みを増す。(吉永くま)

2019年1月5日(土)より全国順次公開 公式サイト
(2017年/中国/119分)原題:暴雪将至 英題:The Looming Storm 監督・脚本:ドン・ユエ 出演:ドアン・イーホン、ジャン・イーイェン、トゥ・ユアン ほか 配給:アット エンタテインメント © 2017 Century Fortune Pictures Corporation Limited


『洗骨』

沖縄の空の下、家族を結びつけた亡き母の骨

映画『洗骨』メイン画像沖縄の一部離島に残る風習「洗骨」を通して、家族の再生をコミカルかつハートフルに描き、各国の映画祭で好評を得た人間ドラマ。粟国島のおだやかで美しい景色のなか、前半の物語は笑いを散りばめつつもどこか淡々と進んでいく。しかし、亡き母の洗骨を行うクライマックスからは、畳み掛けるようなおかしみと感動が押し寄せる。監督・脚本は、芸人“ガレッジ・セールのゴリ”こと、照屋年之。芸達者なキャストのなか、叔母役の大島蓉子のキャラクターと演技が印象的だ。数年の風葬を経て骨となった故人を洗い、「この世」から旅立たせるという洗骨の場面には、亡骸となった家族に対面する切なさと、それでもなお尽きぬ思慕が描かれ、限りある命の輝きと、受け継がれていく血脈や人の思いを感じずにいられない。(min)

2019年1月18日(金)沖縄先行上映、2月9日(土)より全国公開 公式サイト
(2018年/日本/111分) 監督・脚本:照屋年之 出演:奥田瑛二、筒井道隆、水崎綾女、大島蓉子、坂本あきら、鈴木Q太郎、筒井真理子 ほか 配給・宣伝:ファントム・フィルム ©『洗骨』製作委員会


『バハールの涙』

家族への愛と尊厳をかけて戦う誇り高き女性兵士

夫と息子と幸せに暮らしていた弁護士のバハールは、故郷のクルド人自治区の町でISの襲撃を受ける。男性は皆殺しにされ、息子は連れ去られ、過酷な現実を生きることとなった彼女は、我が子を取り戻すべく、女性武装部隊 “太陽の女たち”のリーダーとなって最前線の戦いに身を投じる……。 2014年に、ISがイラク北部の地域を侵攻した出来事に着想を得て、新鋭エヴァ・ウッソン監督がクルド人自治区で綿密な取材を重ねて撮り上げた作品。同じく母でありながら戦地を取材する片眼の記者マチルドの目を通し、勇気を奮い立たせて愛と尊厳のために戦う女性たちの姿を、痛々しくも力強く描く。主演はイランを代表する女優ゴルシフテ・ファラハニと、フランスの演技派エマニュエル・ベルコ。「世界で最も美しい顔100人」の常連であるファラハニの、悲しみと闘志を宿した瞳がバハールの人物像を際立たせる。(min)

2019年1月19日(土)より全国公開 公式サイト  予告編動画
(2018年/フランス・ベルギー・ジョージア・スイス/111分) 原題:Les filles du soleil 英題:Girls of the Sun 監督・脚本:エヴァ・ウッソン 出演:ゴルシフテ・ファラハニ、エマニュエル・ベルコ ほか 配給:コムストック・グループ+ツイン © 2018 – Maneki Films – Wild Bunch – Arches Films – Gapbusters – 20 Steps Productions – RTBF (Télévision belge)


『ヴィクトリア女王 最期の秘密』

ジュディ・デンチが魅せるヴィクトリア女王の素顔

映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』メイン画像知られざる「人間・ヴィクトリア女王」に出会える真実の物語。インド人使者アブドゥルとの身分や年齢を超えた絆が、孤独な晩年を過ごしていた女王の人生を、再び鮮やかな色彩で染めていく。恋心とも、友情とも、完ぺきな主従関係ともつかぬ理屈を越えた関係性に、好奇心に満ちあふれたアブドゥルもまた、自らの生きるステージを臆せず見出していく。豪華絢爛な衣装や美術も素晴らしいが、2度目のヴィクトリア女王役に挑んだジュディ・デンチが魅せる多彩な表情に引き込まれる。時に少女のようにはにかみ、時に女性としての嫉妬を滲ませ、威厳と風格で周囲を圧倒するヴィクトリア女王はとてもリアルで人間くさい。歴史大作のような堅苦しい作品を想像してしまいそうだが、女王を身近に感じることのできる一作だ。(min)

2019年1月25日(金)より全国公開 公式サイト 予告編動画
(2017 年/イギリス・アメリカ/112 分)原題:Victoria&Abdul 監督:スティーヴン・フリアーズ  出演:ジュディ・デンチ、アリ・ファザル、エディ・イザード ほか 配給:ビターズ・エンド/パルコ  © 2017 FOCUS FEATURES LLC.


『天才作家の妻 -40年目の真実-』

夫のノーベル賞受賞の陰に隠された夫婦の秘密

映画『天才作家の妻』メイン画像

現代文学の巨匠ジョゼフと妻ジョーンは、ノーベル文学賞受賞式のためにストックホルムを訪問。そこでジョーンはある記者から、夫の仕事を巡る夫婦の秘密について問われる。これをきっかけに彼女は隠してきた夫への怒りが抑えきれなくなり、夫婦の関係も壊れ始める。授賞式当日、果たして彼女は完璧な妻を演じるのか、または真実を語るのか。夢を諦め夫を支えてきた妻に自意識が芽生え、彼女は人生に疑問を持つようになる。だが、これは単なる再生の物語ではない。長年連れ添った夫婦の間には愛増を越えるものが存在し、その関係は単純ではないことを教えてくれる。ジョーン役のグレン・クローズは本作の演技で、オスカー最有力との呼び声が高い。(吉永くま)

2019年1月26日(土)より全国公開 公式サイト 予告編動画
(2017年/スウェーデン・イギリス・アメリカ/101分) 原題:THE WIFE 監督:ビョルン・ルンゲ 出演:グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレーター ほか © META FILM LONDON LIMITED 2017

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