『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』—名優マイケル・ケインがナビする60年代
- 2019年01月04日更新
音楽、ファッション、アート、写真、カルチャー……etc。さまざまなムーブメントが開花し、世界中に影響を与えた60年代のロンドンを、イギリスを代表する名優マイケル・ケインがナビゲートするドキュメンタリー。当時の貴重な映像には、ケイン本人ほか60年代のカルチャー・アイコンともいうべき伝説級のアーティストの若かりし日の姿が、時代の熱狂とともに映し出される。“スウィンギング・ロンドン”の空気と興奮を肌で感じることのできる、ノスタルジックでありながらもとびきり新鮮な一作だ。
階級制度の壁を打ち壊した“スウィンギング・ロンドン”
Photo by Stephan C Archetti/Getty Images |
85歳を過ぎてもバリバリの第一線で活躍するケイン。60年以上にわたる俳優のキャリアのなかで数多の作品に出演し、『ハンナとその姉妹』『サイダーハウス・ルール』ではアカデミー賞を受賞、2000年にはナイトにも叙された英国紳士だ。そんな彼がコックニー(ロンドンの下町訛り)を話す労働者階級出身なのは有名だが、成功を手にした背景には、階級制度を打ち壊した60年代の“スウィンギング・ロンドン”の追い風があった。当時、自由と創造を求める若者たちのエネルギーは、人々を縛り付けてきた古いしきたりを乗り越え、鮮やかな才能を次々と開花させながら拡大し、ロンドンをカラフルに塗り替え、やがて世界中へと溢れ出していった。
Photo by Paul Popper/Popperfoto/Getty Images |
たくさんの流行が60年代のイギリスから生まれた。ビートルズ、ザ・フー、キンクス、ローリング・ストーンズ、アニマルズなどの英国バンドがアメリカのヒットチャートを席巻した、“ブリティッシュ・インベイジョン”。メアリー・クヮント(マリー・クヮント)が世に送り出したミニスカートは、女性たちを躍動的に輝かせた。ミック・ジャガーと浮き名を流したマリアンヌ・フェイスフルやカリスマモデルのツィギーなど、現代でいうところの“イット・ガール”が人々を魅了し、デイヴィッド・ベイリーのスタイリッシュなポートレートに多くの若者が触発され、ヴィダル・サスーンが生み出したヘアスタイルは今なお斬新だ。“スウィンギング・ロンドン”から発信されたさまざまなものが、現在のポップカルチャーの礎となっているといっても過言ではない。
当時と今。2つの視点から語られる60年代
Photo by David Redfern/Redferns |
本作では、ムーブメントの渦中にいた頃のケインと現在の彼が交互に映し出され、それぞれの時代の視点からリアルに60年代を語る。当時のインタビュー映像が効果的に使われていて、まるでこの映画のために若きケインが語っているようでおもしろい。彼だけではない。ポール・マッカートニー、ミック・ジャガー、ロジャー・ドールトリーといった大物ミュージシャンや、前述のマリアンヌ・フェイスフル、ツィギー、デイヴィッド・ベイリー、メアリー・クヮントといたキーパーソンたちも若き日の映像で登場するが、そこに現在のインタビュー音声をかぶせるという手法で“当時”と“今”をシンクロさせ、2つの視点から立体的に60年代を検証する。
にぎやかにコラージュされたアーカイブ映像には、ほかにもジョン・レノン、デイヴィッド・ボウイ、デイヴィッド・ホックニー、ジョーン・コリンズ、サンディ・ショウなど、多くの時代の立役者(インフルエンサー)たちが登場する。彼らをスクリーンで堪能できるだけでも得した気分だ。さらに、当時もっとも影響力のあったバンドを集めたというサウンドトラックが全編を彩る。60年代好きなら、もちろんこの映画を見逃す手はないし、「何かに触発されたい」と漠然と願う人にもオススメしたい作品だ。
>>『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』予告編映像<<
▼『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』作品・公開情報
(2018 年/イギリス/85 分/PG-12)
原題:MY GENERATION
監督:デイヴィッド・バッティ
脚本・プロデューサー:ディック・クレメント&イアン・ラ・フレネ
プロデューサー:サイモン・フラー、フーラ・クローニン・オライリー
ナビゲーター&プロデューサー:マイケル・ケイン
出演:マイケル・ケイン、デイヴィッド・ベイリー、ポール・マッカートニー、ツィギー、ローリング・ストーンズ、ザ・フー ほか
日本語字幕:野崎文子
字幕監修:ピーター・バラカン
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
© Raymi Hero Productions 2017 mygeneration-movie.jp
●『マイ・ジェネレーション ロンドンをぶっとばせ!』公式サイト
※2019 年 1 月 5 日(土)より Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開
文:min
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