「池田千尋監督特集上映~9人の女たち9つの生き方」―『とんねるらんでぶー』主演の吉永淳さんが、池田監督とトークショー。

  • 2012年07月11日更新
女優の吉永淳さん、初のトークショーご登壇!

「池田千尋監督特集上映~9人の女たち9つの生き方」が、2012年7月7日(土)~13日(金)、東京のオーディトリウム渋谷で開催。7月9日(月)、『温泉兄妹』、『とんねるらんでぶー』、『重なり連なる』の上映後、『とんねるらんでぶー』で主人公の咲子役を演じた吉永淳さんと池田監督のトークショーがおこなわれました。吉永さんにとって、記念すべき初めてのトークショーとのこと。左の写真、左が吉永さん、右が池田監督です。

 短編映画『とんねるらんでぶー』は、2011年の沖縄国際映画祭・地域発信型プロジェクトの出品作品で、静岡県浜松市三ヶ日町にて撮影されました。

「池田監督の作品のラストシーンがすごく好き」(吉永さん)

池田千尋監督(以下、池田) 今日は吉永さんに……、「吉永さん」って言うの、変だよね。いつもの通り、「淳」って呼ぶね(笑)。今日は淳に初めて『温泉兄妹』と『重なり連なる』を観てもらったので、まずは感想を聴きたいな。

吉永淳さん(以下、吉永) 私も(ご来場の)みなさまと同じように、池田監督のファンです。(特に)池田監督の作品のラストシーンが、どれもすごく好きなんです。『温泉兄妹』のラストシーンも、1枚の写真みたいで本当にきらきらしていて……。それまでのお話がどういうエピソードで撮られたかという雰囲気がラストシーンに捉えられていて、池田監督の目線がとても感じられました。「私も池田監督のように、世界を温かく見られたらいいな」と感じて、本当にほかほかしました。『重なり連なる』も、すごく素敵でした。

池田 『とんねるらんでぶー』は、2011年の2月に静岡県浜松市三ヶ日町で撮影して、そのあと、(出品した)沖縄国際映画祭へ淳とも一緒に行きました。(本作のような)地域発信型の映画は、スタッフもキャストもプロが現地へ赴いて作る場合が多いんですけど、今回はプロのスタッフは最少人数で、キャストも(主人公・咲子の同級生を演じた)女子高校生たち等は三ヶ日町でオーディションをしたんです。みんな、映画に出演するのは初めてで、最初はとても緊張していたけれど、淳と会って、一緒にお昼ごはんとかを食べて、あっという間に仲よくなったよね。

吉永 彼女たちは三ヶ日町に住んでいて、静岡県立三ヶ日高校にかよっていました。ロケハンで三ヶ日高校に行かせていただいたときに、「はじめまして」の挨拶をしたんです。撮影が終わってからも手紙を書きあって、今も文通が続いている相手もいます。

「撮影中、(三ヶ日町の)みなさまの温かさをとても近くに感じることができて、すごく楽しかった」(吉永さん)

池田 三ヶ日町のかたがたは、スタッフとしても協力してくださいました。劇中に登場する「三ヶ日みかんバンド」も、JAみっかび(三ヶ日町農業協同組合)のかたがたが町を盛りあげるために実際に組んでいるバンドです。彼らと淳でバンドの練習をしたとき、私はすごく楽しくて。農協のみなさまも、淳が来てくれたことで、より「よし、頑張るぞ!」という気持ちになって楽しんでくださっているのが、すごくわかりました。

吉永 嬉しいです! (農協の)リーダー的な存在のかたが、いつもみかんをたくさん持ってきてくださったんですよね。本作の撮影中、みなさまの温かさをとても近くに感じることができて、すごく楽しかったです。撮影が終わったあとも、三ヶ日町でお話をさせていただいたかたが、わざわざみかんを1箱送ってくださって、(そのお心遣いが)すごく嬉しくて……。

池田 三ヶ日みかんは、東京のスーパーではすごく高いんですよ。そんな高価なものを、惜しげもなく、たくさんくださって……。私、(本作の撮影中は)一生で一番みかんを食べたと思う(笑)。

吉永 手が真っ黄っ黄になりましたよね!(笑)

「カメラマンの山崎裕さんが、みかん畑に落ちているみかんを、いきなり拾って食べだして(笑)」(池田監督)

「山崎さんがあまりにも優しいので、(感激して)号泣しちゃった」(吉永さん)

池田 本作を撮影してくださったのは山崎裕さんで、是枝裕和監督の作品等で長年撮影を手がけていらっしゃるベテランのカメラマンなのですが、画作りもご自身も、とてもワイルドなんです。初めて三ヶ日町へロケハンに行ったときのことなんですが、みかん畑にみかんが落ちているわけですよ。本来、落ちているみかんは食用にしないんですけど、山崎さんがいきなりそれを拾って食べだしたんです。周囲のかたがたが、「山崎さん! 拾わなくても、みかんはありますから!!」という感じで慌てるから、すごくおもしろかった(笑)。山崎さんはものすごく豪快なかたで、本当になんでも食べちゃうの(会場笑)。
 山崎さんとは、いろいろな思い出があります。三ヶ日町では4日間撮影したんですが、クランクアップして打ち上げをしたその日に、淳は東京へ戻らなくてはいけなかったんだよね。そうしたら、山崎さんも、「じゃあ、俺も一緒に乗っていっていいかな」という流れになって、淳と一緒に同じ車で帰って……。

吉永 車の中で、私が号泣しちゃったんですよね(笑)。

池田 私はその話を山崎さんから、「いやぁ、俺さ、吉永を泣かしちゃって」と聴かされたので、「山崎さん、彼女になにを言ったんですか!?」って驚いたんだけど、実はそういうことではなくて……。

吉永 山崎さんがあまりにも優しいので、(感激して)泣いちゃったんです(苦笑)。
 私は三ヶ日町が大好きで、この映画を観てくださるかたがたに、「その気持ちを伝えたい、伝わったら嬉しい」と思うあまりに、頑張りすぎてしまった部分がありました。そうしたら、山崎さんが、「(映画は)ひとりで作っている物ではない。池田監督、俺、スタッフとキャスト、みんなで作っている。だから、ひとりで頑張りすぎなくていいんだよ」と話してくださったので……、嬉しくて、泣いちゃいました(苦笑)。
 完成した本作を観るまで、「どんな作品になっているんだろう?」と、とても期待していた反面、不安もありました。でも、今日、1年ぶりに(観客の)みなさまと同じ場で観て、「(三ヶ日町を好きだ、という私の気持ちが)伝わったかも」と思って……。

(会場から大きな拍手)

吉永 ああ、ありがとうございます! 嬉しいです!!

「出演者の鈴木卓爾さんがみんなをハグしだして、三ヶ日町のかたがたの緊張がほぐれた」(池田監督)

「『卓爾さんワールド』で、(その場の雰囲気が)すごく穏やかになる」(吉永さん)

池田 淳は感激屋さんなんだよね。撮影中も、その日の仕事が終わるたびに、「また明日ね」と言って、淳をぎゅうってハグした記憶がある。

吉永 はい。池田監督のハグなしでは、帰れませんでした。

池田 三ヶ日町も、住民のみなさまも、本当に素敵で、みんなで盛りあがって撮影をしていたから、ハグしまくっていたよね。そうそう、ハグをし始めたのは(出演者の)鈴木卓爾さんだったの。卓爾さんが初めて三ヶ日町に来た日に宴会をしたんだけど、酔っ払った卓爾さんがみんなをぎゅうぎゅうハグしだして(笑)。それで町のかたがたも緊張がほぐれて。淳と卓爾さんが来てくれたおかげで、三ヶ日町のかたがたも本当に喜んでくださいました。
 私はこの撮影で初めて卓爾さんにお会いしたんだけど、彼と1時間くらい話しただけで、「あ、私はこの人をすごく昔から知ってるみたいだ」って感じました。淳は卓爾さんと共演してみて、いかがでした?

吉永 「(独特の)卓爾さんワールド」があるので、(卓爾さんがいてくださると、その場の雰囲気が)すごく穏やかになるんですよね。みかんがいくつでも食べられるような気分になって(笑)。とても温かいかたなので、卓爾さんがいてくださってよかったな、と思いました。

池田 私も卓爾さんも静岡県の出身なので、三ヶ日町と方言が似ているのね。だから、今回の撮影でも、卓爾さんは最初から「敢えて方言を使う」とおっしゃって。
 方言と言えば、淳は大阪府の出身だから、(劇中の台詞で方言を使うのは)大変だったよね。

吉永 そうなんですよね。「ええよ」とか言っちゃったんですが……、あれは実際にはどうなんですか?

池田 (「ええよ」は三ヶ日町の方言に)本当はないんだけど、淳の芝居がよかったからOKにしました(笑)。

「淳を初めて見た瞬間に、『(咲子役は)この子だ!』と思った」(池田監督)

「ラストシーンを撮影しているときは、みかんの味がした(会場笑)」(吉永さん)

池田 主人公・咲子役のオーディションで200人くらいの候補と会ったんだけど、淳は最後だったんだよね。淳を初めてぱっと見た瞬間に、「あ、この子だ!」って思った。その印象が、映画を作っているあいだも、ずっと変わらなかったの。
 淳はとても頑張り屋さんで、頑張りすぎると眉間に皺が寄るのね。映画の中で咲子は必死にもがいているんだけど、そのもがいている感じが淳の眉間に見えてきて、それが最後には消えるっていうのが、(物語の)流れとしては結果的によかったな、と思いました。

吉永 自分ではまったく意識してなかったんですけど、ラストシーンを撮影しているときは……、みかんの味がしました(会場笑)。甘酸っぱい感覚と、この映画全体が終わる安心感と淋しさ、そういったいろいろなものがこみあげてきて、(自分の表情が)あのような感じになったのかもしれません。(ラストシーンで)眉間に皺が寄ってなくてよかったです。

池田 撮影中、淳はずっと元気だったよね。

吉永 はい、元気でした。でも、トンネルでのシーンを撮影するときは、すごく寒くて、凍えていたんですよ。

池田 2月の浜松市には「遠州のからっ風」と言われる強風が吹くので、本当に寒かったんだよね。そうそう、あのシーンを撮影したトンネルが実は有名な心霊トンネルだということを、(恐がらせないために)淳には言わないようにしていたんだけど、地元のかたがたは知っているから、撮影中にその話を聞いちゃったんだよね。

吉永 はい。だから、夜も眠れず……、というのは冗談で(笑)。みなさまと一緒だったので、大丈夫でしたね。

池田 でも、私はたぶん呪われたんです(笑)。疲れていたのもあったと思うんだけど、撮影の最終日に悪寒がとまらなくなったの。クランクアップして打ち上げでお酒を飲んでいたときも、実は高熱が出ていて。翌日、体が動かなかったから、(予定を変更して)もう1泊してから帰ったんです。「ちょっと呪われちゃったかなぁ。(霊を)連れてきちゃっていたら、嫌だなぁ」と思っていました(笑)。

《ご来場のお客さまとのQ&A》

― 劇中での吉永さんの歌声がとても素敵でした。カラオケの十八番は?

吉永 最近は、広末涼子さんの『MajiでKoiする5秒前』をよく歌います(笑)。(場が)盛りあがるのでお薦めです。

― 三ヶ日町のかたがたは、『とんねるらんでぶー』をご覧になりましたか?

池田 2011年に三ヶ日町で凱旋上映をした際に、観ていただきました。普段、映画をたくさんご覧になっているかたばかりではなかったのですが、みなさま、とても気に入ってくださいました。

― 吉永さんは、今後、どのようなお仕事をなさっていきたいですか?

吉永 池田監督の作品をはじめ、私は映画が本当に大好きな人間です。ですので、本日お越しくださったような観客のみなさまにご覧になっていただける作品の(出演者の)ひとりとしても、映画ファンとしても、映画に携わっていきたい、と思っています。その中で、CMやドラマ等、いろいろなお仕事に携われて、みなさまとお会いできる媒体がどんどん増えていったら光栄だ、と思っています。

― 2011年の沖縄国際映画祭での思い出を聴かせてください。

吉永 池田監督はもちろん、三ヶ日町のかたがたもたくさんいらしてくださいました。映画祭そのものも、もちろん楽しかったんですけど、そのあとの打ち上げも、とても楽しかったです(笑)。
 あと、沖縄で観てくださったかたがたが、とても温かくて(感動しました)。ご年配の男性が涙を流しながら、「すごくよかったよ」とおっしゃってくれたのが、とても印象深かったです。

《ミニシア恒例、靴チェック!》
左:吉永淳さん 右:池田千尋監督
上映期間中、イベント開催!

 オーディトリウム渋谷での上映期間中、イベントが開催予定。詳細は「池田千尋監督特集上映~9人の女たち9つの生き方」の公式サイトをご参照ください。

●7月11日(水) 『重なり連なる』『夕闇ダリア』上映前:渡辺真起子さん(女優)×池田千尋監督トークショー

●7月12日(木)『四谷怪談』上映前:眞島秀和さん(俳優)×中村優子さん(女優)×池田千尋監督トークショー

 

▼「池田千尋監督特集上映~9人の女たち9つの生き方」上映情報
上映日程:7月7日(土)~7月13日(金) 連日21 時より 1週間限定! レイトショー上映
劇場:オーディトリウム渋谷
協力:REALWAVE/トランスフォーマー/吉本興業株式会社/スローラーナー/テレビ静岡/SKIP シティ 彩の国ビジュアルプラザ/映画美学校/東京藝術大学大学院映像研究科/キリシマ1945/インターセプター
配給:池田洋品店/QULT
「池田千尋監督特集上映~9人の女たち9つの生き方」の公式サイト
※画像は『重なり連なる』。(C)埼玉県/SKIP シティ 彩の国ビジュアルプラザ

取材・編集・文:香ん乃 スチール撮影:仲宗根美幸

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