『コーマン帝国』—アメリカ映画界の最重要人物にしてB級映画の“神”! ロジャー・コーマンの素晴らしき映画人生。

  • 2012年04月07日更新

世界一ケチで世界一多作な映画人、ロジャー・コーマンの軌跡を辿るドキュメンタリー。

 インディペンデント映画の“神”と称され、世界一多作な映画脚本家であり監督兼プロデューサーであるロジャー・コーマン。低予算に徹し、奇抜なアイデアを駆使して数々のヒット作を生み出した映画界きっての異端児である。そんなコーマンの軌跡を辿るドキュメンタリー作品が『コーマン帝国』だ。

「早く! 安く! 面白く!」という理念のもと、監督作50本超、プロデュース作にいたっては500本以上という作品を世に送り出し、2009年には、まさかのアカデミー名誉賞も受賞してしまったコーマン。2011年の第24回東京国際映画祭には夫妻が揃って来日し元気な姿を披露してくれたが、85歳となった今もバリバリの現役として走り続けている。本作では1955年の初作品から新作『ディノシャーク』(2010)まで、代表作のフッテージ(動画素材)を豊富に織り込み、自身のインタビューやコーマン映画出身の著名人の証言と共に、その素晴らしき映画人生を追う。

ヌード、爆発、バイオレンス、ピストル、怪獣、SF……。コーマン風味の愛すべき珍品映画たちが大集合。

 ゲリラ撮影は当たり前、女優のメイク時間さえ惜しみ、人件費削減のために最小限のスタッフであらゆる業務をこなす。とにかく撮って撮って撮りまくり、その収益で次作を作るという薄利多売スタイルがコーマンの持ち味であり、なかにはたったの2日で撮影した作品もあったという。普通ならば次第に予算を増やして有名俳優を起用し、メジャー・スタジオへと移行していくところだが、あらゆる制約を嫌うコーマンは、70年代には制作配給会社を自ら設立。自分のお金で、しかも1円も損することなく作品を生み続けたのだ。

 コーマン作品といえば、無駄に多いヌードシーン、手作り感満載のモンスター、飛び散る血しぶき、子供だましの特撮と、いわゆるハリウッド大作とは対極にある低予算丸出しの作風で多くのファンに愛され続けている。しかし、本作を観ればコーマンが人種差別やフェミニズムのような社会的なテーマにも意欲を見せていたことがわかる。また、上質な海外映画にもいち早く目を向け、イングマール・ベルイマン、フランソワ・トリュフォー、フェデリコ・フェリーニ、黒澤明やヴェルナー・ヘルツォークの作品を配給するなど、あらゆる角度から映画界に貢献してきたことを知り驚くことだろう。

超ビッグネームを続々輩出! 偉大なる“コーマン大学”。

 低予算とタイトなスケジュール。その過酷な制作現場は“コーマン大学”と呼ばれ、多くの俳優や映画人を輩出してきた。そのメンバーたるや、ジャック・ニコルソン、フランシス・F・コッポラ、ピーター・フォンダ、ロバート・デ・ニーロ、マーティン・スコセッシ、ロン・ハワード、ジョナサン・デミ……、とビッグネームのオンパレード。メジャーにこだわらないからこそ、名も無き若者たちにも扉を開き、チャンスを与え育てることが出来たのだ。

「今、最も優れている映画は、危険を冒し賭ける勇気のある独創的で革新的な制作者が撮影したものだ。だから常に賭けて、危険を冒すことを忘れないでほしい」とは、コーマンがアカデミー賞受賞のスピーチで述べた言葉である。映画人として50年以上もその歩みを止めないロジャー・コーマン。ドケチもB級もここまで続ければまさに表彰もの。その軌跡は実に偉大だ!

▼ 『コーマン帝国』作品・上映情報
2011年/アメリカ/91分
原題:CORMAN’S WORLD:EXPLOITS OF A HOLLYWOOD REBEL
監督・製作:アレックス・ステイプルトン
編集:ビクター・リビングストン、フィリップ・オーウェンズ
出演:ロジャー・コーマン、ジュリー・コーマン、ジーン・コーマン、ロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソン、マーティン・スコセッシ ほか
コピーライト:(C)2011, KOTB, LLC. All Rights Reserved.
『コーマン帝国』公式ホームページ
※4月7日(土)より、新宿武蔵野館にてロードショー。テアトル梅田ほか、全国順次公開。

文:min

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