『ホームランが聞こえた夏』-音を失った高校生達の甲子園。

  • 2011年08月27日更新

音を失った高校生達の甲子園。実在するろう学校野球部の実話をベースにした物語。
暴行事件を起こし韓国球界追放の危機に追い込まれていたスター投手キム・サンナムは、イメージ回復のためボランティアでろう学校ソンシム学校野球部のコーチを引き受ける。野球の基礎も習っていない寄せ集まりのチームに、最初はやる気のなかったサンナムだが、黙々と練習に取り組む生徒の姿に、高校時代に抱いていた野球への熱い気持ちを取り戻していく。目標は韓国の甲子園『鳳凰杯』での一勝。ソンシム学校野球部は強豪を相手に勝利を手にすることができるのだろうか。本作は実在するソンシム学校高等部の野球部での実話をベースした物語である。


韓国の甲子園“鳳凰杯”で一勝する-一高校生として勝ちたい気持ちをむき出しに戦う。
三年連続MVPの実力派ピッチャー、LGツインズのキム・サンナムは度重なる飲酒による暴行事件を起こし、球界追放の危機に追い込まれていた。マネージャーのチョルスは球界復帰のイメージ回復のために奔走し、聴覚障害者のための学校、ソンシム学校野球部の臨時コーチのボランティアを取り付ける。ソンシム野球部は高等部生徒の中から寄せ集めで作られた10人のメンバー。野球の基礎も習っておらず、聴覚障害のためにチームプレイもままならない腰ぬけチームだった。コーチ業にも野球にも熱情を失いかけていたサンナムだったが、夜中、意外な人物が一人で投球練習をしている姿を目にする。中学時代に天才ピッチャーと謳われながら、突発性難聴で聴覚を失って以来マウンドに立っていなかった生徒、ミョンジェだった。黙々と練習をするミョンジェの姿にサンナムは、がむしゃらに野球に打ち込んでいた自分を重ね合わせる。ソンシム野球部はミョンジェをピッチャーに迎え、目標である「韓国の甲子園“鳳凰杯”で一勝する」に向かって動き出す。


「踏みにじってもいいが、立ち上がる力は奪うな」手を差し伸べる同情ではなく、一緒にぶつかることを教える元スター投手、サンナムの背中。
突き刺さるのは、手加減をする試合相手に対して怒るサンナムのセリフ「同情されたらやる気をなくす。踏みにじってもいいが、立ち上がる力は奪うな」。障害者が立ち向かうのは目の前の相手だけではなく障害に対する同情。その同情に甘んじることなく、真剣にぶつかり、お互いが自分の力を出し切る事。野球をプレーする者、全てに“本気の闘争心”持ってもらいたいと願うソンナムの厳しい言葉に自然と生徒がサンナムの背中を追いかける。背中で語る男、キム・サンナムを演じるのは『黒く濁る村』でカリスマ老人を演じ、韓国のアカデミー賞と称される青龍映画賞主演男優賞を受賞しているチョン・ジェヨン。むき出しの演技に手話はいらない?


注目イケメンずらり!セリフがない高校球児の表情からほとばしり出る感情にも注目。
「(チームの皆さんは)まるでアイドルグループですね」というのはマネージャーのチョルスのセリフ。しかし、これが単なるお世辞ではない。ピッチャー、ミョンジェ役を演じるチャン・ギボムとキャッチャー、デグン役を演じるキム・へソンはこのままアイドルユニットが組めそうなイケメンバッテリーだし、ショートのキン・ジンマン役を演じるイ・ヒョヌは韓国版『ドラゴン桜』でも注目されている若手俳優。ソンシム野球部は次世代の韓国映画を担うイケメン揃いであることは間違いない。しかしイケメンもさることながら、なによりも特筆すべきは野球部員の強い表情。聴覚障害のために声を発することがなかなか出来ないメンバー達が彼ら自身を表現するのはその表情と巧みな手話。悔しい時もうれしい時も体全体からほとばしる爽やかな感情表現に注目していただきたい。

韓国の甲子園、鳳凰杯とは?
韓国の高校野球部は全国でもなんと50数校のみ。日本の高校野球部が4,000校を超えるのと比べると少ないと思われるかもしれないが、プロ野球予備軍としての強豪校のみが野球部を持っている韓国では、高校野球全国大会「鳳凰杯」の出場校全てが“全国大会レベル”なのだ。2002年に9人の選手で創部され正式登録されたソンシム学校高等部の野球部は、この全国大会での一勝を目指しており、今でもその夢に向かって日々練習を重ねている。



▼『ホームランが聞こえた夏』作品・公開情報
2011年/韓国/144分
原題:G-LOVE
監督:カン・ウソク『シルミド』『黒く濁る村』
出演:チョン・ジェヨン『トンマッコルへようこそ』『黒く濁る村』、ユソン『黒く濁る村』
●『ホームランが聞こえた夏』公式サイト
※8月27日(土)シネマート新宿、銀座シネパトスほか全国ロードショー
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文:白玉

  • 2011年08月27日更新

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