グランプリは中村祐太郎監督に―第27回東京学生映画祭授賞式

  • 2015年06月06日更新

中村義洋監督、青山真治監督など多くの映画人を輩出してきた、学生映画の登竜門、第27回東京学生映画祭が5月29〜31日 に開催された。今回はゲスト審査員に大林宣彦監督、深田晃司監督、俳優の古舘寛治さんを迎え、厳正なる審査、観客投票を経て、各賞が決定しました。受賞者の喜びの声と授賞式最後に学生監督に送られた大林宜彦監督のコメントをレポート。映画を愛する同志に向けられた大林宜彦監督の熱い言葉をじっくりお楽しみください。


<東京学生映画祭授賞式レポート>

各賞、受賞コメントは以下の通り。(作品画像は『雲の屑 』)

グランプリ:『雲の屑 』中村祐太郎監督
準グランプリ:『ゴロン・バタン・キュー』山元環監督
観客賞:『雲の屑』中村祐太郎監督
Filmarks賞:『たちんぼ』横山翔一監督
役者賞:山元駿さん『ゴロン・バタン・キュー』


グランプリ&観客賞:『雲の屑 』中村祐太郎監督
「ピースフルやラブを背負っている作品です」

映画には人に気づかせる力があると思います。そして最近、映画を通じて、人を気づかせないといけないと思うようになりました。大林宜彦監督が平和について、授賞式で語ったように、『雲の屑』で平和を気づかせられるのかという方もいるかもしれませんが、作品の裏ではピースフルやラブを背負っている作品です。中村組の参加してくれる人々が純粋無垢に注いでくれる愛が作品を作っています。
次回作は名古屋のシネマスコーレさんとの企画で、実は明日からクランクインです。脚本の木村暉さんとディスカッションを重ねて作った脚本をもって名古屋の撮影に向かいます。11月には上映予定です。


準グランプリ:『ゴロン・バタン・キュー』山元環監督
「大林監督から言葉をいただける場所に、自分の作品を持ってこられたことを自信につなげていきたい」

大林監督からは恐れ多いことをいっていただけました。この言葉をいただける場所に自分の作品を持ってこられたことを自信につなげていければと思っています。(今回の作品は)自分の気持ちを抑制して作品を作っていきました。ホームレスという題材だったので、観てくれる人にわかりやすく、観たときになるほどと思ってもらえる作品でなければ、撮っている意味がないと思っていました。どのようにみてもらえるかを気をつけながら撮ったので、次は自分のやりたいことだけをやって、はじけるような作品を撮りたいなと思っています。今年の年末に企画が一つあります。今後は一般の映画祭で戦えるような作品をとっていきたいです。みて賛否が出るような作品を作っていきたいですね。


Filmarks賞:『たちんぼ』横山翔一監督
「Filmarksさんのアプリで、映画との新しい関係性を作れていければ」

Filmarksさんのアプリで観たいと言ってくださっている方が300を超えて、大きな反響を得られてうれしかったです。
今日作品を観てくださった感想も今後入ると思うので、参考にしながら、映画との新しい関係性を作れていければいいですね。今、中編くらいのもので脚本を書いていますが、エロで軽佻な楽しめるものを撮りたいと思っています。ミュージカル映画もやりたいですね。


<大林宣彦監督 コメント>
みんながオンリーワン。それぞれ嫌いを理解して、許しあいながら慈しんで、共に生きていく。それが映画です」

今日はみなさんの映画をみていて、単なる映画好き単なる映画ヲタクで、映画をつくっているのではなく、今を生きている人たちで未来の自分たちの日本をどうしていかなくてはないかを、この暗闇の中で懸命に考えて、光を当てようという気持ちがみえた。 中村(祐太郎)君の作品も大人が見たら眉をしかめたくなるような作品で、残酷な描写もあるけれど、 それは大切な“愛”、“I Love You”の気持ちでつくられているので、僕たちの心を癒すと同時に勇気をもって一歩進むようになる。それが映画の素晴らしさです。

僕はN.YのMOMA で一昨年、自分が十八、十九歳の頃に作った作品を上映してもらったのだけれど、半世紀前にそういう映画をつくっている人がいなかったから上映をしてくれたのです。今はみなさん、アマチュアのつもりかもしれませんが、立派な作家です。あなたがたの作品は歴史の中にしっかりきざまれている作品ですから、アマチュア意識はやめてください。例えば、人が褒めてくれるときに第二の黒澤だっていわれるとする。それは、だめだよ。第二の黒澤も第二の小津とかはだめだ。芸術家というの はオンリーワンで、たった一人。中村くんは第一の中村になれよ。君は一人しかいない。中村は日本のウディ・アレンみたいな映画つくるという期待をしているけれど、第二のウディ・アレンではなく、第一の中村でいてほしい。みんながオンリーワンで、それぞれ嫌いを理解して、許しあいながら慈しんで、共に生きていこうということそれが映画です。

(取材・撮影:白玉)

  • 2015年06月06日更新

トラックバックURL:https://mini-theater.com/2015/06/06/2/trackback/