「クロッシング」記者会見で、脱北女性(23歳)が体験を語る

  • 2010年02月22日更新

cros_1脱北を真正面から描いた衝撃作「クロッシング」の制作発表記者会見で、キム・テギュン監督と、劇中の少女と同じ年頃に脱北した女性(キム・ジョングムさん・23歳)がソウルから来日し、脱北の体験と極秘で行われた撮影について振り返った。

 


デノミによるインフレスパイラルで混乱が収まらない北朝鮮。物資の不足に拍車がかかり、物価はうなぎ上りで自殺者が後を絶たないと連日報道されている。
だが、その映像のほとんどは首都・平壌で撮影されたもの。
田舎はもっと悲惨だ。栄養失調で病気を患った親を失い、飢餓で命を落とす子供たち。
その状況が映画「クロッシング」で描かれているが、会見に同席していた加藤博氏(北朝鮮難民救援基金・理事長)によると「それは一般的な話」だという。

ジョングムさんも両親の死と飢餓のため、姉とふたりで北朝鮮を脱出。当時彼女は10歳前後だった。中国東北部のシェルターに保護され、東南アジアを経由して韓国に入国。現在は幼稚園の先生を志し、ソウルの大学(神学校)に通っている。
「一人でも多くの方に、北朝鮮の実態を知ってもらいたい」と、今回キム監督とともにソウルから来日した。

キム監督は極秘撮影の理由を、「ロケ地の中国とモンゴルは北朝鮮と友好国なので、事前に映画の内容を知らせるのは危険でしたし、衝突を避けるためにもオープンにしませんでした。また韓国でこのような映画を撮ると、いろんな人がいろんな事を言ってきます。そういうことに気を取られてしまうと、監督として創作する気持ちが萎縮してしまうという怖れもありました」と明かした。

 

キム・テギュン監督この映画を観て、命を賭けて脱北した辛さや悲しみが甦ったというジョングムさんは、「北朝鮮に帰りたいと思うことはありますか」という質問に、「空腹はあまり苦ではなく、親を失ったことが何よりも辛かったです。もしも両親が生きていたら、帰りたいと思います」と涙声で語った。
また作品のリアリティについて訊かれると、「町の通りの様子や闇市場の雰囲気はよく似ていて、親のいない子供たちが浜辺で寝ているシーンは自分も経験しました。自分の経験の方が酷かったかもしれません」と自身の体験と比較して答えた。

この映画を撮るまで北朝鮮の実態について、ほとんど知らなかったという監督。しかし撮影にあたって詳細を調べていくうちに、「この事実を自分が伝えなければ」という使命感で作品にのめり込んでいったという。

家族を守るため脱北するしかなかった父親と、残された少年の心の絆を描いた感動作。一人でも多くの方に、この衝撃を体感していただきたいです。

本作は08年に韓国で公開され、100万人を動員した話題作。
同年の秋に東京国際映画祭「アジアの風」の招待作品に、09年の米国アカデミー賞外国語映画賞部門の韓国代表作品となる。

2010年4月17日(土)より、渋谷・ユーロスペースにて命がけのロードショー!

▼「クロッシング」作品詳細
クロッシング2008年/韓国/107分
出演:チャ・インピョ、シン・ミョンチョル、ソ・ヨンファ、チョン・インギ、チュ・ダヨン
監督:キム・テギュン
企画:パトリック・チェ
プロデューサー:ホン・ジヨン
脚本:イ・ユジン
撮影:チョン・ハンチョル
製作:BIG HOUSE / VANTAGE HOLDINGS
制作:CampB
字幕:根本理恵 
提供:「クロッシング」パートナーズ  
配給:太秦
(C)2008 BIG HOUSE / VANTAGE HOLDINGS. All Rights Reserved. 
公式HP:http://www.crossing-movie.jp

取材・文/おすず 撮影/細見里香
改行

  • 2010年02月22日更新

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