蘇りの血

  • 2009年12月16日更新

揺るぎない個性的な作風から、国内外に根強いファンをもつ豊田利晃監督。
その絶妙なキャスティングや、卓越した音楽センスに、今回も否応なく期待が高まる。
4年ぶりの新作は、「人は何度でも蘇れるのだ」という監督の気迫が、ストレートに伝わってくるダイナミックな内容だ。

蘇りの血天才あん摩オグリ(中村達也)は、「あの世行き」を恐れる大王(渋川清彦)の業病を癒すよう、闇の世界に招かれるが、忠誠を誓わなかったため「あの世」に葬られてしまう。
しかし「あの世」の門番(板尾創路)は、「生きたい」と切望するオグリを再び現世へ送り返す。オグリは森の中で、大王の元から逃げ出た姫・テルテ(草刈麻有)と偶然の再会を果たす。テルテは、心身が不自由なオグリに再び命を授けるため、健気に引っぱって引っぱって、ひたすらに「蘇生の湯」を目指す…。

不可思議な死生観。
歌舞伎や浄瑠璃の演目にもなっている説話“小栗判官”をモチーフにした寓意的な物語を、原初的な風景と、極限まで抑えた独特なセリフ、鼓動のように全篇をつらぬく圧倒的なドラムの音によって、大胆に演出している。このドラムの演奏は、主演の中村達也によるもの。

また、豊田作品には欠かせないマメ山田をはじめ、主演の中村達也、新星・草刈麻有が、神話的な物語に説得力を与えている。逆に、「あの世」の門番役の板尾創路が妙に俗っぽくて、コントラストを成しているのは巧妙な計算か。

そして、ラストはやっぱり一筋縄ではいかない。
炸裂のシーンは、豊田監督ならではの仕掛けが待っている。

・12/19(土)の初日舞台挨拶のレポートはこちらです。

蘇りの血

☆『蘇りの血』は、東京渋谷・ユーロスペースにて、2009年12月19日(土)よりロードショー。

▼『蘇りの血』作品情報
日本/2009年/83分
監督:豊田利晃
配給:ファントム・フィルム
公式サイトはこちら
文:おすず
改行

  • 2009年12月16日更新

トラックバックURL:https://mini-theater.com/2009/12/16/815/trackback/