若手×ベテランが語る “役者のリアル”!『とどのつまり』『わかりません』キャスト座談会インタビュー(P.2)

  • 2022年09月24日更新

Chapter5:“いい役者” と “ダメな人” の関係性

― 続いては、10月1日(土)~10月14日(金)に上映の『わかりません』でW主演を務められる、ボブ鈴木さんと木原勝利さんに作品の魅力を伺って参ります。

本作は、ボブさんが20年来の付き合いの片山監督に漏らした「情けなくなりたいんだよ」という言葉がストーリーの発端になったそうですね。この言葉の真意とは?

ボブ:自分がいい役者だと思う人たちは、共通して人間的にダメな要素があると思っていたんです。ろくでなしだったり、狂気性があったり。自分の中には、そういう要素ってあるんだろうかと思って。それで情けないというか、「ダメなやつになりたい」って言ったんです。

― あくまで他者をフィクションとして演じるというつもりで、おっしゃったんですね。

ボブ:そこまでは考えていなかったと思います。それをやることで、自分の魅力になり得るものができるかな、くらいの感じでした。そしたら片山が「どういうことですか?」って。つまり、片山からすると、十分にダメな人からそれを言われたので、「どういうこと?」と(笑)。

木原:はははは(爆笑)。

ボブ:「ボブさんの思うダメな人ってどういう人ですか」って聞かれたので、「役者って、社会的不適合者というか、そういう人多いじゃない? それがまた魅力に見えたりするじゃない」って話をしたら、「なるほど」って。その日はそれで終わったんですけど、翌日片山から連絡があって「ちょっと台本書いたので、読んでもらえますか」って。

木原:翌日ですよ! 早いですよね。

ボブ:それでうちに来て。最初は短編企画だったので、台本の分量も多くなかったし、その場で読み始めたんですけど……。まあ、辛辣(笑)! しかも、僕の過去を知っているから、僕が触れられたくないこともいっぱい書いてあるわけです。
……なんだけど。読み終えて、自然と出てきた言葉は、「ありがとう」だった。
― そんなに辛辣な台本を読んで、なぜボブさんは「ありがとう」とおっしゃったのでしょう。

ボブ:読みながらすごくしんどかった。だけど、書いている片山も同じようにしんどいだろうと思ったんです。片山は、僕のことを蔑みたくて書いているわけじゃない。「これをやるのか!?」っていう思いもありましたけど、文字を追いながら、それ以上に「ありがとう」という思いのほうが強くなっていった。だけど、そう言うだけで精一杯でした。

― もちろんフィクションの部分も多いと思いますが、マネージャーさんからダメ出しされるシーンとかは、「もう、やめてあげて!」っていう思いでした。

木原:ボブさんと僕とマネージャーで歩くシーンですか?

ボブ:あの会話は、リアルですよ(笑)。あのマネージャーは、事務所の代表の大松*という設定です。

*本作の企画製作を手掛ける俳優事務所「ハイエンド」の代表で、本作プロデューサーでもある大松高氏。

― リ、リアル!? あのシーンはボブさんを直視できなくて、ふっと木原さんに視線を移したら、木原さんがなんとも気まずい表情をしていて。超絶辛いけど名シーンでした。

下京:私は観ながら「でも、こんなマネージャーいるかな」ってちょっと思っちゃいました。

木原:それは、いい意味? 悪い意味? このマネージャー、どう思いました?

下京:単純に私は今まで出会わなかったので「こういう事務所もあるんだな」って(笑)。でも、愛がゆえに、ってことですよね?

木原:もちろん! でも、普通はここまではないでしょ? 僕は、両作に出演している大宮将司と古い付き合いで、ハイエンドに所属する前からよく大松の話を聞いていたんです。僕からすれば、それだけ寄り添って俳優を見てくれて、めちゃくちゃいいマネージャーだと思っていました。それが縁あって、自分も仲間になることができた。さすがに、僕自身はあそこまで言われたことはないですけど。

ボブ:え、ほんと!? 僕なんか今まで少なくても3回はキレてケンカしてる(笑)。

木原:でも、キレるのは言われたことが的を射ているからですよね?

ボブ:そう。だからキレたあと、よくよく考えてすごく情けなくなったりする。

Chapter6:役者と仲間と縁

― W主演で共演した感想を教えていただけますか。

ボブ:撮影のファーストカットが、僕の部屋で話すシーンなんですけど、きーちゃんと会ってまだ3〜4回目だったんだよね。それなのに、最初から寄りかかれるというか、気を使わない感覚があって。心地よかったんですよね。

木原:僕からすると、大先輩ですし、体も大きいし、ボブ鈴木って名前だし、前に一度共演しているのに覚えていないし(笑)。でも、ふっと懐に入らせてもらえる感じがして。なんでしょうね、これはもう縁としか言いようがないでしょうね。

― 木原さんも奥さんから辛辣な言葉を投げかけられ、逆にボブさんにかなり辛辣なセリフを言うシーンがありましたが、この役に対する戸惑いはなかったのですか。

木原:戸惑いはなかったです。ずっと前に安楽組の『追い風』を観て「おもしろいなぁ」と思って、片山さんの『轟音』を観て、「こういうチームがいるんだ」と思って、気づけば片山さんと同じ事務所になって。片山さんの撮る映画を観て、「こういう人と一緒にやりたい!」ってずっと思っていたわけで、嬉しいんですよ。

片山さんの作品は人の心情を紡ぐことしか重要視していないし、僕も人の心情を紡ぐことにしか興味がないから、この人とやりたいというだけでした。そう思いながら短編をやって。その時、僕のシーンは3つだけなんですけど。

― その3シーンで、片山監督はもっと木原さんを見たいと思われたんですね。

木原:短編でクライマックスのシーンを撮り終わった時に、片山さんが、「きーちゃん。これ長編にできたらいいよね」って言うんですよ。所属事務所の企画で作っているから、時には僕もスタッフで参加したりして、短編を撮るだけでも大変だったのに、「何言ってるんだ、この人は!?」と思うわけです(笑)。しかも、短編でパッケージしたものを、後づけで長編にするんだから余計に大変ですし。

ボブ:その日はきーちゃんは先に終わって帰って、撮影が朝7時頃にオールアップした時に、今度は片山が「きーちゃんの人生も撮りたいんだよね」って言い出して。でも、僕も同感だった。共演シーンで直面してくらって、映像で観た時にまた「魅力的だなぁ」と思って。でも同時にちょっと嫉妬もあった。主演としてやっていたのに、「そっか、俺一人だと……」っていう。でもそれ以上にきーちゃんに魅力を感じたんです。

木原:片山さんが「長編になったらいいね」って言ってくれた時、「はぁ?」って思いながらも、初めての片山組で、ずっと一緒にやりたいと思っていた人が自分を認めてくれたわけだから、俳優のエゴとしてめちゃめちゃ嬉しいわけですよ。それで長編になるって聞いて、僕の実生活のシーンがもともとの短編にはまっていって。

ボブ:長編版の台本ができてきたのも早かったよね。短編撮り終わった次の日だったかな。

― 長編版しか拝見していませんが、すごくおもしろかったです! 先ほど、「役者は自分のダメな部分をさらけ出すと魅力的に見えるんじゃないか」とボブさんもおっしゃいましたけど、本当にそのとおりだと思いました。

ボブ:でも、演じるのはひたすらしんどかったし、できた作品を客観的に観られなかったですね。3日前に久しぶりに観て、時間をあけたことでやっと笑えたんです。ようやくおもしろい作品だって思えて。

― おもしろいですよ! そして木原さんも、「私は今までこんなに魅力的な役者さんをチェックできていなかったんだ」ってものすごく悔やみました。

木原:嬉しいです。

Chapter7:お互いの出演作を観て

― 宮寺さんは、演技講師をされているボブさんに15年ほど師事していたそうですが、師匠が情けない姿をさらけ出して挑む姿はいかがでしたか? 印象的だったシーンを教えてください。

宮寺:やっぱり最後のお二人の罵り合いが印象的でした。僕の感覚はちょっと特殊になっちゃうんで、皆さんとは違うと思いますけど……、笑っちゃったんだよなぁ(笑)。

ボブ:いや、いいよいいよ。(声低め)

― なんで笑っちゃったんですか?

宮寺:「ダッッセーっ!」と思って(笑)。(声高め)

全員:あっははははは(爆笑)。

宮寺:でも、これって多分、ほめ言葉なんですよ。

木原:いや、正直、ダサいと思うところに勝る魅力ってないんですよ。

ボブ:大丈夫だ、ミヤ。俺も作品を観て、ミヤにまったく同じことを思った。これは、本当にほめ言葉だ(笑)。

宮寺:ははは(笑)。しかも、僕より年上だから、「おっさん、ダッセーなぁ!」って。あそこで笑う人は僕以外にいないと思うんですけどね。

木原:どうなんだろうね。

ボブ:周りは、痛いっていう意見と滑稽っていう意見が二分しているかなぁ。

― でも、辛辣な言葉を投げかける木原さんの痛みも同時に伝わってくるシーンですよね。二人の心の痛さが伝わるから、私は切なくて泣きました。

木原:僕も言っているあいだ、ボブさんへの言葉が鏡のように反射してきて辛いわけですよ。年齢こそ違えど、自分もキャリアがままならず、芝居はいいって言われても結果が伴ってないわけで。同じ立場ですから、言えば言うほどどうしようもない気持ちでした。

― ほかの皆さんにも、お互いの作品を観ていかがでしたか。印象に残ったシーンなどはありますか。

☞『とどのつまり』キャストからみた、『わかりません』

下京:私は冒頭のボブさんと木原さんが演劇論を話しているシーンが好きです。「いるなぁ、こういう人」って(笑)。熱い思いを持っているんだけど、一歩引いて観ると、なんか滑稽っていうか。そして自分もやっちゃっているなぁって(笑)。特に舞台に入ったりすると、仲間で飲みに行って、先輩の話は長いし、同じような話を繰り返しているだけなんだけど、なんだかんだ言って、そういう時間が楽しくもあって、好きだし愛おしいって思えて。好きなシーンですね。

森戸:私は細かい部分で好きなシーンがありました。ボブさんが自動販売機の前にいる姿、ラップで包まれたごはん、そういう部分部分に寂しさを感じたりして。木原さんは、奥さんに強い関西弁で責められて、顔には出ないけど、内面ですごく傷ついている感じとかに心動かされました。二人が普通に働いているシーンは、「こういうおじさんいるな」って思って。もしかしたら、身近にいるおじさんも役者をやっているのかもって。特別な職業と思われがちだけど、そう思っている人たちも、役者っていう仕事や生き方に対して身近に思ってもらえるんじゃないかな、と思いました。

☞『わかりません』キャストからみた、『とどのつまり』

木原:僕は高校まで強豪校でサッカーをしていて、一生サッカーをすると思っていたのに引退して、そこで演劇に出会ったんですけど。サッカーを辞めて演劇に出会うまでの少しの間、18歳で「どうやって生きていけばいいんだろう」ってボーッとしちゃったんです。それからは、常に何かに情熱を注いで芝居をしてきました。だけど、『とどのつまり』の登場人物たちは、お芝居していても楽しそうじゃない。なんなんだ? と思って、最初は何を観ていいかわからなかった。

でも、ふと若い友人たちのことを思い出した。僕は今41歳で、30歳前後の人たちと交流する機会があるんだけど、情熱を注げることが見つからないまま、それにいろいろと理由をつけて生きているんですよね。それがこの映画に出てくる人たちと重なって、「これ現実だな!」って思った。

情熱を注げるものに出会えていない人は、20代30代だけじゃなく、40代50代にもいる。この映画が描いているものが見えた瞬間、観る意欲がどんどん増してきて。ようは、エンジンはあるんだけど、そのエンジンに熱を感じなくて、回転数上がっているのかどうかもわからない状態を描いている。そしたら、志歩が朝帰ろうとする男性を引き止めるシーンの意味がわかった。何かをつかみ取りたいんだけど、それが何かがわからない。でも何かをつかみ取りたいのはわかっている。ヒロキの実家の部屋の壁一面に貼られた映画のポスターを見た時、リカが働いている姿を見た時、「うわー、キツいなぁ」と思って。でもこれは現実だなと思った。すごくいいものを観たなと思いました。

ボブ:劇中に出てくる「何やってんだよ、32歳」っていう言葉が強烈だった。自分自身を思わず振り返ったんですよね。僕は33歳で実家から独立して、それまでは千葉の実家にいたんです。本当は30までに独立するっていう親との約束だったんだけど、それができなくて。まさしく「何やってんだよ、32歳」だった(笑)。僕くらいの年代だと、あの言葉をきっかけに、ふと走馬灯のように自分の人生を思い出す人も多いと思う。現在進行形で共感する人だけじゃなくて、あの時はこうだったけど今はどうだろうって昔の自分を振り返りながら観る人も結構多い作品じゃないかな。そのなかで、今度はレジェンドたちみたいな人生の先輩が出てきて、そういう方たちのすごさというか、「居方」から、自分の人生の目標みたいなものも見えてくる。振り返りと目標みたいなものが同時に見えた、そんな感想を持った作品でした。

― お互いの作品に感じ合うものがあったようですね。この5人の役者たちはもちろん、両作とも本当にキャストたちが輝きを放っています。ぜひ、2本続けて観ていただきたいですね!

下京:続けて観ると、先に観た作品の感想もまた変わると思います。絶対に2作とも観てほしいです!

全員:うんうん!!

― 素敵な役者の皆さま、本日はありがとうございました!

『とどのつまり』

片山享×ワークデザインスタジオで贈る
“演じる”ことを生業とする若手役者たちの “演じていない” 時間

監督・脚本:片山享
撮影・照明:安楽涼  録音:杉本崇志 音楽:MRTRX  製作:ワークデザインスタジオ、ハナ映像社
出演:森戸マル子、下京慶子、宮寺貴也、中村更紗、江田來花、大塚康貴、佐々木穂高、澤田和弘、璃音、星野卓誠、山田昭二、藤井啓文

【STORY】志歩はバイトを辞め、空いた時間をセフレで埋めている。リカは周りから美人と言われることを嫌っている。ヒロキはバーで働き生計を立てている。
この3人は役者である。しかし、1人の人間でもある。理想と現実、そして過去。未来。生活に翻弄されながら、悩み、もがき、それでも役者であろうとする3人の物語。

『とどのつまり』公式サイト

※2022年9月24日(土)~10月7日(金)池袋シネマ・ロサにて上映ほか全国順次公開


森戸マル子(もりと・まるこ/志歩役)
1987年1月20日生まれ。兵庫県出身。
大阪松竹座で花形歌舞伎『GOEMON 石川五右衛門』に出演。また、日本舞踊やコンテンポラリーを学び、創作活動も行う。
表現の場を探し、現在は映画を中心に活動。本作が長編映画初主演。


下京慶子(しもきょう・けいこ/リカ役)
1992年8月26日生まれ。鹿児島県出身。2016年に舞台俳優としてデビュー。2018年に新宿紀伊國屋ホールで主演を務めた後、映像業界へも進出。映画『ステップ』で映画デビュー。2020年からは、目標であった映画プロデューサーとしても活躍。近年ではドローンパイロットとしても作品へ参加するなど、枠にとらわれない新しいクリエイタースタイルを築く。主な映画出演作に、『ステップ』(20/飯塚健監督)、『異動辞令は音楽隊!』(22/内田英治監督)、『ディスコーズハイ』(22/岡本崇監督)など。


宮寺貴也(みやでら・たかや/ヒロキ役)
1988年2月6日生まれ。東京都出身。高校卒業後、アクターズクリニックにて2年間芝居を学び、舞台『華鬼』で初舞台を踏む。ストレートプレイからコントまで幅広く活動。近年では映画を中心に活躍の場を広げている。主な出演作は映画『追い風』(20/安楽涼監督)、ドラマ 『ラーメン刑事』『世にも奇妙な物語 春の特別編』など。

『わかりません』

俳優事務所「ハイエンド」製作の映画シリーズ第一弾
売れないベテラン俳優が滑稽なまでにもがく、おじさんたちの切なくも熱いドラマ

(2022年/日本/90分/ステレオ/アメリカンビスタ・シネマスコープ/DCP)
監督・脚本:片山享
プロデューサー:大松高 撮影・照明:片山享 録音:スズハラリョウジ 録音協力・整音:坂元就 宣伝イラスト・題字:葵うたの
主題歌:ナオリュウ「今を笑っていければいいさ」
出演:ボブ鈴木、木原勝利、詩野朱布、瑛蓮、大宮将司、斉藤マッチュ、安楽涼、DEG、山本晃大、片山享、柳谷一成、江藤純平、竹下かおり、カトウシンスケ

【STORY】俳優であるボブ鈴木と木原勝利。二人は事務所の先輩後輩である。ボブ鈴木は出演作も数知れずとベテランの域にはあるが、昔、苦労を共有した俳優仲間たちは売れていき、ふと50歳も越えた自分の現在地に疑問を感じる。そして、どうにか自分を変えようと思い立つが、いまさら何をどう変えていいのかもわからない。一方、木原は芝居が評価されているが、大きな役で呼ばれるのは小規模予算の現場だけ。妻に「いつ売れるの」と言われても、返す言葉もなく現状を飲み込みながら時間は過ぎていく。一回りも年は違うが、同じような境遇にある二人は肩を並べてもがき始める。しかしうまくいかない。どうしようもなく、生活は続いていってしまう。

『わかりません』公式サイト


ボブ鈴木(ぼぶ・すずき)
1971年2月4日生まれ。千葉県出身。
大学在学中に劇団扉座に入所。三年半の在籍の後、退団。『BLUES HARP』(’98/三池崇史監督)で映像デビュー。以降、数々の映画やドラマに出演。確かな演技理論、芝居経験に裏打ちされた硬軟問わない幅の広さが持ち味。


木原勝利(きはら・まさとし)
1981年6月19日生まれ。京都府出身。
大学から演劇を始め、卒業後も関西圏で演劇を続ける。映画『大阪蛇道』(13/石原貴洋監督)の鮮烈な風貌と芝居で注目を集め上京。以降、映像に軸足を移し活動し、多数の作品に出演。強烈な風貌と、緻密な芝居が持ち味。

◆関連記事(予告編映像あり)

取材・編集:富田旻(min)インタビュー撮影:ハルプードル

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  • 2022年09月24日更新

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