5月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―

  • 2021年04月28日更新

5月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! あなたが気になるのは、どの映画!?

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5/1(土)公開『海辺の彼女たち
5/7(金)公開『アメリカン・ユートピア
 → 緊急事態宣言を受け、公開延期となりました。
5/7(金)公開『大綱引の恋
5/14(金)公開『アオラレ
 → 5月28日(金)に公開延期となりました。
5/14(金)公開『海辺の家族たち
5/14(金)公開『ファーザー
5/15(土)公開『グンダーマン 優しき裏切り者の歌
5/21(金)公開『藍に響け
5/21(金)公開『やすらぎの森
5/22(土)公開『ペトルーニャに祝福を』(再掲)
5/28(金)公開『5月の花嫁学校
5/29(土)公開『のさりの島

※公開日は変更になる場合がございます。最新情報は各作品の公式サイト、SNSでご確認ください。


『海辺の彼女たち』

ベトナム人技能実習生の過酷で切ない現実

ベトナムからの技能実習生、フォン、アン、ニューの3人は、劣悪な労働環境に耐えられずに脱走。東北のさびれた漁港で不法に働くことになるが、過酷なことには変わりなかった。やがてフォンが妊娠しているかもしれないと気づく。『僕の帰る場所』でミャンマー移民一家の実態を描いた藤元明緒監督が、今度は技能実習生を題材に日本で生きる外国人若者の思いを映画にした。凍てつくような雪の港町を、保険証なしで受け付けてくれる病院を探してさまよい歩く南国ベトナムの少女の姿は切なく悲しい。カメラの視線は徹頭徹尾、3人に肉薄し、まるで4人目の実習生になったような錯覚に陥る。ピントを外すことなく3人の不安げな表情をとらえ続け、寒さと孤独感を表現した岸建太朗撮影監督のセンスにも恐れ入った。(藤井克郎)

2021年5月1日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/日本・ベトナム/88分)英題:Along the Sea 脚本・監督・編集:藤元明緒 出演:ホアン・フォン、フィン・トゥエ・アン、クィン・ニュー ほか 配給:株式会社E.x.N ©2020 E.x.N K.K. / ever rolling films


『アメリカン・ユートピア』

失われた蜜なつながりに思いを馳せる、極上のライヴ体験

映画『アメリカン・ユートピア』メイン画像デイヴィッド・バーンが2018年に発表したアルバム「アメリカン・ユートピア」を原作としたショーを、スパイク・リーが映像化したライヴ映画。70年代から80年代のニューヨークのインディーズシーンを音楽と映画で盛り上げた二人の鬼才がタッグを組んだ作品だ。ブロードウェイで好評を博したこの舞台の映画化は、デイヴィッドから敬愛するリー監督に持ち掛けたのだという。シンプルな舞台装置だが、ライティングを効果的に駆使した演出が素晴らしい。よく見ると、キャストが着ているスーツの両肩にポチっと押したくなるような小さな突起が付いており、それがセンサーとなって照明器具と連動しているのだという。俯瞰やバックショット、客席からと視点を変えるカメラワークも舞台の立体感を際立たせる。同名アルバムから5曲と、トーキング・ヘッズ時代の代表曲から9曲の計21曲をデイヴィッドはほぼ出ずっぱりで歌い上げ、移民としてニューヨークで歳を重ねてきた彼が楽曲に込めた、人種問題や政治への無関心といったさまざまな“断絶” が、この会場では密なうねりとなって昇華していくように見える。何よりも舞台と客席の距離の近さ、会場を包み込む一体感をあますところなく捉えた臨場感が、コロナ禍の今となってはことさら胸を熱くする。(min)

2021年5月7日(金)より全国順次公開 ※緊急事態宣言を受け、公開延期となりました。
公式サイト 予告編動画
(2020年/アメリカ/107分)原題:DAVID BYRNE`S AMERICAN UTOPIA 監督:スパイク・リー 出演:デイヴィッド・バーン、ジャクリーン・アセヴェド、グスタヴォ・ディ・ダルヴァ ほか 配給:パルコ © 2020 PM AU FILM, LLC AND RIVER ROAD ENTERTAINMENT, LLC ALL RIGHTS RESERVED


『大綱引の恋』

日韓交流と伝統行事を軸にした家族の物語

2020年に62歳で急死した佐々部清監督の遺作で、鹿児島県薩摩川内市を舞台に、地域の伝統行事をめぐる家族の物語が展開される。とび職人の父親の跡を継ぐべく実家に戻ってきた武志は、35歳の今も独身のまま、自立できないでいた。地元には江戸時代から400年続く勇壮な「川内大綱引」の伝統があったが、最高の花形である一番太鼓の役は、今年も担えそうになかった。そんなとき、沖合の甑島で研修医を務める韓国人のジヒョンと知り合う。『チルソクの夏』から佐々部監督が取り組んできた日韓交流と誠実な生き方というテーマが詰まっていて、集大成とも言える作品になっている。勇壮な川内大綱引の場面は、大勢の地元住民の参加による、まさに密な状態の大迫力で、貴重な映像資料とも言えそうだ。(藤井克郎)

2021年5月7日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/日本/108分) 監督:佐々部清 出演:三浦貴大、知英、比嘉愛未 ほか 配給:ショウゲート Ⓒ2020映画「大綱引の恋」フィルムパートナーズ


『アオラレ』

世界に絶望した男の狂気が暴走する、ノンストップ・スリラー!

映画『アオラレ』メイン画像日々の苛立ちと渋滞の焦りから鳴らしたクラクションが引き金となり、平凡なシングルマザーに恐怖の展開が襲いかかるアクション・スリラー。『グラディエーター』の名優ラッセル・クロウが仕事にも家族にも見放され、世の中への怨みを募らせる狂気の男を演じる。フラストレーションのオーラに包まれ、でっぷりと貫禄を蓄えた男の瞳は、もう未来を見据えてはいない。ただ目の前にある理不尽な世界に復讐するという強固な意志と、深い哀しみだけが炎のように燃えていて、その姿にはどこか同情すら覚えてしまう。日本でも危険な「あおり運転」が問題となっている昨今だが、そんな世相に便乗した脱力感満載の邦題にだまされてはいけない。脱力どころか、スピード感あふれる地獄展開のたたみかけにラストまで緊張が緩まない快作。苛立ちは一瞬だが、その一瞬が大切なものを壊してしまうこともある——そんな教訓も身にしみる刺激的な一作だ。(min)

2021年5月14日(金)より全国順次公開 ※ 5月28日(金)より全国順次公開  公式サイト 予告編動画
(2020 年/アメリカ/90 分/PG-12)原題:Unhinged 監督:デリック・ボルテ 出演:ラッセル・クロウ、カレン・ピストリアス、ガブリエル・エイトマン ほか 配給:KADOKAWA © 2020 Unhinged Film Holdings LLC. All Rights Reserved.


『海辺の家族たち』

寂れた港町で紡がれる希望の物語

映画『海辺の家族たち』メイン画像フランスのケン・ローチと称えられるロベール・ゲディギャン監督作。舞台はマルセイユ近郊の美しい入り江を臨む寂れた港町。父親が倒れ、パリから久しぶりに帰郷した人気女優のアンジェルは、2人の兄と再会する。家族の思い出の詰まった家の今後のことなど話し合うべきことはたくさんあったが、次第にそれぞれ胸に秘めた過去があらわになっていく。家族の間に亀裂が入り始めたそのとき、彼らは漂着した難民の姉弟を見つける――。かつては人気の別荘地だったこの町に漂う寂寥感に、人生を模索する兄妹やここに住む人々の埋めようのない虚しさが重なる。監督はいくつかの深刻な社会問題を巧みに絡めながら、過去にとらわれた人々の灰色の日々が、ある出会いによって色づいていく様子を丁寧に紡いだ。寒い季節の先に暖かい春が待っていることを予感させる希望の物語だ。(吉永くま)

2021年5月14日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2016年/フランス/107分)原題:La Villa 英題:The House by the Sea 監督:ロベール・ゲディギャン 出演:アリアンヌ・アスカリッド、ジャン=ピエール・ダルッサン、ジェラール・メイラン ほか 配給:キノシネマ © AGAT FILMS & CIE – France 3 CINEMA – 2016


『ファーザー』

アンソニー・ホプキンスが魅せる老いの極致

イギリスの名優、アンソニー・ホプキンスが、老いの極致に挑んだ話題作。フランスの小説家で劇作家のフロリアン・ゼレールが、初の長編監督作として自らの代表戯曲を映画化した。ロンドンに一人で暮らす81歳のアンソニーは、暴言がひどくて介護人が長続きしなかった。近くに住む娘のアンが、自分を見捨ててパリに引っ越すというのも気に食わない。そんなある日、アンソニーのアパートに見知らぬ男が入り込んでいるのに出くわす。映画が進行するにつれ、ところどころ認知症を患うアンソニーの視点を織り交ぜていることに気づく。その表現が絶妙で、観客にはどこが現実でどこがアンソニーの頭の中なのか判然としない。ミステリー仕立てのケレン味の中に、高齢化社会における大事なテーマが内包されていて舌を巻いた。(藤井克郎)

2021年5月14日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/イギリス・フランス/97分)原題:THE FATHER 監督:フロリアン・ゼレール 出演:アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン ほか 配給:ショウゲート © NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINÉ-@ ORANGE STUDIO 2020


『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』

秘密警察の協力者だったミュージシャンの信念と苦悩

旧東ドイツで活躍したシンガー・ソングライターで、秘密警察(シュタージ)のスパイでもあったゲアハルト・グンダーマンの生き方を、やはり東ドイツ出身のアンドレアス・ドレーゼン監督が映画化した。昼間は炭鉱で働くグンダーマンは、仕事が終わるとステージに立ち、自作の歌で多くの人々を引きつけていた。その一方で、シュタージに仲間を密告するなどしていたが、1990年に東西ドイツが統一されると、次々とシュタージ協力者が暴かれていく。ドレーゼン監督は、東ドイツ時代と統一後とを交錯させつつ、一貫して理想の社会を目指して歌を作り続けたグンダーマンのぶれない信念を、共感を持って描く。予期せぬ時代の波に翻弄された労働者ミュージシャンの苦悩と決心が心に染みた。(藤井克郎)

2021年5月15日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2018年/ドイツ/128分)原題:GUNDERMANN 監督:アンドレアス・ドレーゼン 出演:アレクサンダー・シェーア、アンナ・ウンターベルガー ほか 配給:太秦 © 2018 Pandora Film Produktion GmbH, Kineo Filmproduktion, Pandora Film GmbH & Co. Filmproduktions- und Vertriebs KG, Rundfunk Berlin Brandenburg


『藍に響け』

和太鼓に懸ける女子高校生の友情と葛藤

ミッション系の高校に通う環は、父の会社が倒産したことで、富裕層の友人たちとの会話に入り込めなくなってしまう。そんなとき、校内でふと耳にした音に吸い寄せられるようにして向かった建物では、マリアが一人で和太鼓をたたいていた。マリアは、交通事故の後遺症で言葉を話すことができなかった。すたひろ原作の漫画『和太鼓♰ガールズ』を基に、企業のプロモーションビデオやミュージッククリップなど数多くの映像を手がけてきた奥秋泰男監督が映画化。思春期の不安定な心の揺れや友情のもつれなど、和太鼓を題材にしてみずみずしくつづった。モデル出身の紺野彩夏、若手のホープ、久保田紗友をはじめ、女子高校生を演じた若い女優たちのバチさばきも見ものだ。(藤井克郎)

2021年5月21日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/117分) 監督:奥秋泰男 出演:紺野彩夏、久保田紗友、筒井真理子 ほか 配給:アンプラグド ©︎すたひろ/双葉社 ©︎2021「藍に響け」製作委員会


『やすらぎの森』

世を捨てた男たちの前に現れたのは……

カナダ・ケベック州の森の中の湖畔を舞台に、老いと死をユニークな視点から見つめた意欲作。同州出身のルイーズ・アルシャンボー監督の長編第3作に当たる。精神を患い、長く施設に入っていた80歳のジェルトルードは、弟の葬儀の後、もう戻りたくないと甥のスティーヴに告げる。森のホテルで支配人をしているスティーヴは、さらに森の奥深く、人目を避けるように3人の老人が暮らす湖畔に彼女を連れていくが……。ひっそりと余生を送る男たちとジェルトルードとの交流を軸に、生きること、老いることの意味を問いかける。静まり返った寂しい森林の情景と、生気を秘めた老優たちの表情が対照的で、中でもベッドシーンには目を見張る。人が枯れていくのはそんなに簡単なことではない、と感じさせられた。(藤井克郎)

2021年5月21日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/カナダ/126分)原題:Il Pleuvait des Oiseaux 英題:And the Birds Rained Down 監督・脚本:ルイーズ・アルシャンボー 出演:アンドレ・ラシャペル、ジルベール・スィコット、レミー・ジラール ほか 配給:エスパース・サロウ © 2019 – les films insiders inc. – une filiale des films OUTSIDERS inc.


『ペトルーニャに祝福を』(再掲)

女性に禁じられた“幸せの十字架”が巻き起こす大騒動

映画『ペトルーニャに祝福を』メイン画像まだ女性の地位が低く、男性優位社会である北マケドニア。美人でもなく太目で恋人なしの32歳のペトルーニャは、セクハラを受けた仕事の面接の帰り道、男性しか参加を許されていない伝統儀式の十字架投げで、思わず“幸せの十字架”をつかみ取ってしまう。だが男たちから猛反発を受け、教会や警察を巻き込んだ騒動に……。ガラの悪い現代風の男たちが持つ古臭い固定観念、保守的な価値観を押し付ける母親、無理解な警察に心が折れそうになりながらも抵抗し、頑固なまでに十字架を手放そうとはしないペトルーニャは強く逞しい。主演のゾリツァ・ヌシェヴァは主にコメディ女優として活躍。本作では息苦しい世界の生きづらさを、時にシリアスに時にユーモラスに表現する。この物語のラストの先に、進歩と伝統が共存する清々しい世界が待っていると信じたい。(吉永くま)

2021年5月22日(土)より全国順次公開 公式サイト
(2019年/北マケドニア・ベルギー・クロアチア・フランス・スロヴェニア/100分)英題:God exists, her neme is Petrunya 監督:テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ 出演:ゾリツァ・ヌシェヴァ、ラビナ・ミテフスカ 配給:アルバトロス・フィルム © Pyramide International


『5月の花嫁学校』

笑いを絡めて女性の自立をうたい上げる

1967年のフランス・アルザス地方。小さな村にある家政学校では、校長のポーレットの下、良妻賢母に育てる厳しい教育が施されていた。そんなある日、経営を担っていたポーレットの夫が急死し、莫大な借金が残される。孤軍奮闘する中で、ポーレットは学校が時代遅れであることに気づく。『セラフィーヌの庭』などのマルタン・プロヴォ監督が、主演にジュリエット・ビノシュを迎え、女性たちが織り成す自由と解放の賛歌をコメディー仕立てで描き上げた。五月革命という時代のうねりを背景に、男性社会に立ち向かう女性たちの行動は胸のすく思いだ。女性の自立を目指しながらも、決してヒステリックに叫ぶのではなく、笑いと人情を絡める手法が何ともしなやかで好感を抱いた。(藤井克郎)

2021年5月28日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/フランス/109分)原題:La bonne épouse 英題:How to be a good wife 監督:マルタン・プロヴォ 出演:ジュリエット・ビノシュ、ヨランド・モロー、ノエミ・ルヴォウスキー ほか 配給:アルバトロス・フィルム © 2020 – LES FILMS DU KIOSQUE – FRANCE 3 CINÉMA – ORANGE STUDIO – UMEDIA


『のさりの島』

あるがままを受け入れる「まちおこさない」映画

京都芸術大学映画学科の学生がプロのスタッフとともに映画作りに取り組む「北白川派」の第7弾で、プロデューサーを務めた同大学副学長の放送作家、小山薫堂の生まれ故郷、熊本県天草市を舞台に、映画学科教授でもある山本起也監督がメガホンを取った。さびれた商店街にやってきた男の目的はオレオレ詐欺だった。看板にある楽器店に電話すると、受話器を取ったおばあさんはまんまと孫と思い込んでくれた。訪ねてくる男に現金を渡すように諭して店に向かうが、おばあさんに本当の孫と勘違いされる。「のさり」とは、すべての境遇を受け入れるという天草の言葉で、あるがままの地方の姿をまさに「のさって」映し出す。地元の古い映画館、本渡第一映劇に詰めかけた観衆など、天草の人々の自然な表情にも注目だ。(藤井克郎)

2021年5月29日(土)より全国順次公開(※天草、熊本にて5月先行公開予定) 公式サイト 予告編動画
(2020年/日本/129分) 監督・脚本:山本起也 出演:藤原季節、原知佐子、柄本明 ほか 配給:北白川派 ©北白川派

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  • 2021年04月28日更新
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