『ロボット修理人のAi(愛)』 主演・土師野隆之介— “運命的に出会った作品” で輝きを放つ次世代俳優!

  • 2021年07月06日更新


ロボット修理人の少年と孤独な少女、そして旧型AIBOの不思議な出会いと“再生”を巡る物語、『ロボット修理人のAi(愛)』(田中じゅうこう監督)。7月10日(土)より全国順次公開される本作で、主人公の倫太郎を演じた土師野隆之介(はしの・りゅうのすけ)さんにインタビューしました。
孤児だった過去を持ち、ひとり暮らしをしながらアルバイトに励む16歳の倫太郎は、榛名湖畔の町で、周囲の人々に支えられ暮らしていた——。明るく前向きに生きる倫太郎を活き活きと演じた土師野さんに、作品に込めた思いなどをうかがいました。子役としてキャリアをスタートさせ、現在は高校3年生の土師野さん。次世代を担う若手実力派俳優の素顔の魅力にも迫ります!

【取材:min 撮影:ハルプードル】


本作と運命的に出会い、もう一度演技の道へ

— 不思議な味わいと温かな余韻が胸に残る作品でした。主人公の倫太郎は、明るく聡明で誰からも愛される少年ですが、演じている土師野さんの魅力が重なることで、さらにみずみずしい存在感を放っていたと思います。素敵な俳優さんだなと思いながら拝見していました。

土師野隆之介さん(以下、土師野):ありがとうございます。うれしいです。

— 土師野さんが主演に決まった経緯をお聞かせください。

土師野:監督が、「映画を撮りたいんだけど、こういう男の子はいるかい?」というお話を事務所にされて。事務所の方が僕を推薦してくれたんです。その時点では、次回作のイメージ資料用のPV撮影ということで、実際に映画がカタチになるのかどうかも分からない段階でしたし、本編で主演させていただけるなんて思っていなかったんです。僕が中2のはじめくらいの頃ですね。

— では、その時点ではまだ本編の脚本はできていなかったのですか?

土師野:少年の成長物語であるとか、温かな物語を作りたいというコンセプトだけを監督からうかがっていました。あとから聞いた話では、監督が「あの時、中学2年生の土師野隆之介くんに出会って、この映画をカタチにしようと決めた」とおっしゃっていたそうで、ほんとうにありがたいことだと思いました。

— 土師野さんの存在ありきで生まれた作品だったのですね! 初めて脚本を読まれたときは、倫太郎にどんな印象を抱きましたか。

土師野:倫太郎は壮絶な過去を経験して、大変な思をしたはずなのに、明るく真面目でまっすぐに育っていて、最初はそこに違和感を覚えたんです。なぜだろうと思って監督にお聞きすると、監督は「倫太郎の周りの大人たちの愛が、彼をそうさせたんだよ。周りの人たちのおかげで彼はまっすぐ育っていけているんだよ」っておっしゃって。それを聞いて腑に落ちました。

— 昔ながらの人情や人々の繋がりが息衝いている土地だからこそ、明るく聡明な青年に育ったんですね。とはいえ、倫太郎は複雑な生い立ちから16歳にして大人にならざるを得なかった部分もあったと思います。土師野さんご自身も、幼い頃から大人の中でお仕事をされていて、年齢よりも大人であることを求められたこともあったと思いますし、倫太郎に共感を覚える部分もあったのでは?

土師野:そうですね。倫太郎は辛い思いやネガティブな部分を周りの人には一切見せないんですよね。孤独は胸の内に秘めて、明るくふるまう。僕自身もグチったり、自分の暗い部分や弱さを人には見せたくないタイプなので、そこには共感を覚えました。

— 撮影開始当時14歳の土師野さんが、しっかり者の16歳の倫太郎という役柄から影響を受けたり、演じているうちに内面的に成長されたりした部分はありますか?

土師野:倫太郎は、簡単には乗り越えられないような過去をもっていますけど、前を向いて自分の未来をしっかりと考えて決めていて、そこはほんとうにすごいと思います。僕も倫太郎のように未来をしっかり見つめて考えたいと思っています。

— 本作では、土師野さんが子役から一人の俳優さんに脱却された印象を受けました。これからも本格的に俳優さんとしての道を進んでいかれるのでしょうか?

土師野:子役の演技って、観ている方に伝わるようにすごくハッキリとセリフを言ったりするんですが、監督がよくおっしゃっていたのは、子役の演技じゃなくて大人として演技するようにと。それをずっと意識していました。将来的に自分が俳優として生きていけるのか、将来どういった道に行くべきなのかがまだハッキリと見えているわけではないですが、とにかく今はできることを全力でやっていきたいと思っています!

— これからの土師野さんがすごく楽しみです。子役でデビューをして、一時期は芸能活動をお休みもされていましたよね。

土師野:はい。中学受験のためにお仕事から離れて、しばらく学業に専念していたんですけど、中2の時に『ロボット修理人のAi(愛)』の出演が決まって、この作品が僕をもう一度俳優の道に引き戻してくれたというか。この世界に留まらせてくれたんです。

— まさに運命的な作品ですね!

土師野:ほんとうにそうなんです!

ほかにはない、すべてが見どころの作品!

— 窓ふき掃除のアルバイトのシーンで高いところに登ったり、鉄パイプを切断したり、チャレンジングなシーンも多かったと思います。 

土師野:初めての体験ばかりでした。窓ふきのシーンは、撮影に入る前に本職の方にワイヤーロープの使い方などを教えていただいて練習しました。体とロープをつなぐ安全帯の脱着に時間がかかるので、撮影中は3時間くらいずっとぶらさがったままだったんです。

— 過酷な撮影だったんですね! 怖くはなかったですか?

土師野:屋上から下降する時に一瞬ガクンとなるのでドキっとしましたけど、スパイダーマンになったみたいで楽しかったですよ(笑)。

— たくましい(笑)。高校ではサッカー部に所属しながら、ジムで体も鍛えているとうかがいました。アクションもできそうですね。

土師野:アクションにはぜひ挑戦してみたいんです! 3歳から空手を習っていて、子どもの頃は全国大会で準優勝をしたこともあって、いつか作品に生かせたらと思っています。今はジムにあまり通えていないですが、ムキムキになりたいです(笑)。

— ムキムキの土師野さん!? み、見たい(笑)! チャレンジングといえば、年上美女(演:柚月美穂)に誘惑されるちょっとドキドキのシーンもありましたね。

土師野:そうですね。ああいうシーンももちろん初めてだったので緊張はしましたけど、柚月さんが優しい方だと分かっているので、現場では楽しく撮影できていました。

— あの女性と倫太郎の母親とイメージが重なるようなシーンがあったり、過去と現在がリンクしているような描写や意味深なシーンがあったり、不思議な余韻を残すシーンが随所に出てくる作品です。その解釈や答えを自分なりに考えながら観ていました。

土師野:監督も「あの女性とお母さんのイメージが重なっているんだよ」とはおっしゃっていましたが、この映画は「生と死」や「過去と現在」、「現実と非現実」が入りまじっていて、観る人によって違う解釈になるような作品になっているんです。難しく思える部分もあるかもしれませんが、そこもとてもおもしろいと思うんです。

— 観る人によってさまざまな解釈があっていいんですね。そういったシーンも含めて、ほかにはない、とても不思議な独特の味わいのある作品ですよね。

土師野:昔のホームドラマを観ているような雰囲気の中に、笑いがあったりファンタジーの要素があったり、ほかにはなかなかない作品だと思います。

— 古き良き昭和を彷彿とさせるシーンが散りばめられているかと思えば、AIという現代的なモチーフもあり、ファンタジーでもあり。榛名湖の美しい風景も、個性的なキャスト陣も魅力的で、そしてなんと言っても土師野隆之介さん、すずめ役の緒川佳波さんのフレッシュな魅力が輝いていて……見どころ満載の作品ですね!

土師野:はい、すべてが見どころの作品です!

各国の映画祭が演技を絶賛! 受賞の知らせに「ほっとした」

— 大村崑さんや大空眞弓さんなど大ベテランの方とのご共演はいかがでしたか?

土師野:大空さんとは、小学生の時に舞台「春日局」(2015年)でご一緒させていただいたことがあって、今回お会いした時に「覚えていらっしゃいますか?」って聞いてみたんです。そしたら、「覚えているわよ! 大きくなったわねぇ」ってすごく優しく言ってくださって。素敵な方だなぁと、あらためて尊敬しました。

大村さんからは、皆さんで集合写真を撮る時に、「元気ハツラツ!」のかけ声をいただいて。一世を風靡した生の「元気ハツラツ!」が聞けて、その場にいる皆が笑顔になって。ベテラン俳優さんなのに、こんなふうに和やかな雰囲気を作ってくださって、とても素敵な方でした。

— 貴重なご体験ですね! 大村さんがビタミン飲料のCMにご出演されていたのはご存知でしたか?

土師野:今も商品のキャッチフレーズは同じなので、母から「初代のCMに出ていたのが大村さんなんだよ」と聞いて、「うわぁ、そうなんだ!」って。

— 昭和の喜劇王と呼ばれた大スターです。そんな大村さんから土師野さんの演技で  “感動した” というお言葉もいただいたそうですね。

土師野:ほんとうにありがたいです。大村さんはあまり人の演技を観て泣いたりしないとうかがっていましたし、それなのに、僕の演技で泣かされましたって、コメントを出してくださって。さまざまな作品を観てこられた方だと思うので、すごくうれしかったです。

— ご自身の主演作で大空さんと再共演されたり、往年のスターから感動したとおっしゃっていただいたり、さらにブータンのドゥルク国際映画祭で主演男優賞、カンヌ世界映画祭では、月間外国作品賞と優秀若手男優賞を受賞されましたね。多くの方に演技が認められるのはどんなお気持ちですか?

土師野:受賞の知らせを聞いたときは、驚きと喜びでいっぱいでしたけど、それ以上にほっとした気持ちが大きかったです。撮影中はモニターで自分の演技を確認する時間があまりなくて不安もあったんです。賞をいただいて、自分の演技が大丈夫だったんだなと思えましたし、何よりも田中監督に少しは恩返しができたかなと思って。

— そうだったんですね。では、実際に完成作品をご覧になったときは、どんな印象をもちましたか?

土師野:榛名湖の美しい風景と、美しい音楽と、愛情いっぱいの個性的な人々のなかで、倫太郎が確かにそこに生きていると感じることができたので、「ああ、良かったな」と思いました。

— 田中監督からは、何かお言葉をいただきましたか?

土師野:この作品の撮影がすべて終わるまで3 年くらいかかっているんですけど、ほぼ撮り終えたくらいのお正月に、監督から年賀状をいただいたんです。「あの時、中学2年生の土師野隆之介くんに出会えたことでこの映画ができました。ありがとうございます」と書かれていて、それを読んだ時は、すごくうれしかったです。

— 素敵なお話ですね。そういえば、カンヌ世界映画祭の優秀若手男優賞受賞を受けて、英語のコメント動画を出されていましたね。とても流暢にお話されていましたが、英語はお得意なんですか?

土師野:いちおう英検2級は持っていますが、得意と言うにはまだまだです。でも英語を勉強するのは好きで、あのコメントも姉の力も借りながら自分で作りました。

— すごい! 発音もとても滑らかでしたが、学校以外にどこかでお勉強をされたんですか?

土師野:この作品の撮影に入る前に、フィリピンに3週間ほど短期語学留学をしたんです。帰国してからは、1日30分程度オンラインで英会話のレッスンも受けていました。

— いつか海外の作品で土師野さんを拝見できるかもしれないですね!

土師野:もっともっと語学力をレベルアップさせなければいけないですが、ゆくゆくは海外の作品にも出てみたいです。

趣味は弾き語り。アクションやコメディにも挑戦したい!

— 本作でアパートの管理人役でご出演されている水沢有美さんのYoutube番組「水沢有美のキラキララ」で、本作の主題歌である「ゆうすげ」をギターと生歌で披露していらっしゃいましたね。

土師野:ギターを弾きながら歌うのはすごく好きで、ほんとうに適当ですけど家で弾き語りをするのが、今の日々の楽しみです。

— 歌声も透明感があってすごく素敵でしたよ! ギターは独学ですか? 歴はどのくらい?

土師野:中学・高校とサッカー部に所属しているんですけど、実は高校に入学してすぐに、少しの間だけ軽音楽部に入ったんです。その頃からちょこちょこ練習していて、今も毎日のように弾いているので、ギター歴は3年くらいですね。といっても、コード名もすべて覚えているわけではないし、自己流ですけど……。

— ほんとうに多才ですね。逆に不得意なことはありますか?

土師野:実はずっと泳ぎが苦手でした。でも、本作の中に湖で平泳ぎをするシーンがあったので、ちょうどフィリピンに留学した時に練習したんです。短期猛特訓してなんとかカタチにしました。

— カナヅチだったのに、いきなり水深の深い湖で泳ぐとは、かなり頑張りましたね!

土師野:そうなんです。地元の方に後で聞いたら、「あそこで泳ぐ人はいないよ」って(笑)。

— あはは(笑)。でも、やりきってしまうのがすごい。才能と可能性がいっぱいの土師野さんですが、今後やってみたい役や挑戦してみたいお仕事はありますか?

土師野:アクションと、コメディにも挑戦してみたいです。コメディ作品は観るのも大好きですが、演じるには自分を捨てきれるかどうかだと思うんですよね。ちょっと遠慮しちゃったり、自分が出ちゃったりしていると、観ている方にも伝わってしまうと思うので。人を笑わせたりするのが得意というわけではないですけど、そこにあえて挑戦してみたいんです。

— ぜひ拝見したいです。これからの土師野さんのご活躍が楽しみで仕方ありません! めちゃくちゃ応援しています!

土師野:ありがとうございます!

 

プロフィール & 靴チェック!

土師野隆之介(はしの・りゅうのすけ)
2003年生まれ、神奈川県出身。NHK大河ドラマ『平清盛』牛若丸役、『水戸黄門最終回スペシヤル』ほか、幼い頃から雜誌やテレビに出演。映画『ロックわんこの島』(2011/中江功監督)では、300 人を超えるオーディションで主人公に抜擢された。ほか、主な映画出演作に、映画『呪怨 黒い少女』(2009/安里麻里監督)、『猿ロック THE MOVIE』(2010/前田哲監督)、『MONSTERZ モンスターズ』(2014/中田秀夫監督)、『最後の命』(2014/松本准平監督)などがある。2020年、『ロボット修理人のAi(愛)』で、ブータンのドゥルク国際映画祭で最優秀主演男優賞、カンヌ世界映画祭で優秀若手男優賞(best young actor)を受賞。次世代を担う、若手実力派イケメン俳優。


◆ミニシア名物! イケメン靴チェック
ネイビーのコンバースのハイカットスニーカー(私物)で登場してくれた土師野さん。どんなファッションにも合わせやすくて、遊びに行くときによく履いているとか。清潔感とカジュアルさの絶妙なバランスが、土師野さんにとってもお似合いです!
現在18歳の高校3年生。倫太郎を演じた時よりも少し顔つきに精悍さを帯び、フォトセッションでは豊かな表情を見せてくれました。大人っぽい表情をしたかと思えば、次の瞬間には無邪気な笑顔でくしゃっと笑い……あっという間に取材班のハートを鷲掴みに!

作品・公開情報

(2021 年/日本/108 分)
監督:田中じゅうこう
出演:土師野隆之介、緒川佳波、金谷ヒデユキ、亮王、岡村洋一、堀口聡、野口大輔、水沢有美、丸山ひでみ、亜湖、ぴろき
大村崑、大空眞弓
プロデューサー:中村明 脚本:大隅充 撮影:本吉修 録音:有國浩
美術:田中太賀志 メイク:小堺なな 助監督:金岡準也 美術協力:林隆
制作協力:(株)ア・ファン 乗松伸幸
夕焼け劇場 presents ©2021 GENYA PRODUCTION ROBOT REPAIRBOY
配給:トラヴィス

公式サイト

映画『ロボット修理人のAI(愛)』メイン画像【STORY】天才的な技能を駆使し、古い家電からロボットまで修理を請け負う工房で働く16歳の倫太郎。孤児として育った彼は、高校を中退しバイトをしながら深夜独学でロボットの勉強をしていた。ある日、東京でひとり暮らし中の老婦人からAIBOの修正依頼が倫太郎に舞い込む。亡き息子が遺したと言うAIBOは、音声装置とメモリーが壊れていた。
時を同じくして、倫太郎は発声障害のある14歳の少女すずめと出会う。すぐに仲良くなったふたりは、依頼品のAIBOと共に20年ぶりに復活した榛名湖のダイダラ祭りへと向かう。湖には「甦りの伝説」があり、願いが叶うと亡くなった人が甦るという。その帰り道、AIBOがとある録画映像を映し出したことで、倫太郎も知らなかった過去が明らかとなっていく……。

※2021年7月10日(土)新宿Kʼs cinemaほか全国順次公開

  • 2021年07月06日更新

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