『へんげ』―恋愛、ホラー、特撮、SF、人間ドラマ……、娯楽映画のあらゆる要素がつまった、快感あふれる1本。

  • 2012年03月11日更新

ネタバレ厳禁! 驚愕と興奮のラストに酔おう。

 公式の呼びかけで「ネタバレ厳禁」の戒厳令が敷かれるほど、驚愕と興奮のラストが用意されている『へんげ』 ― 2012年3月10日(土)より、いよいよ公開だ。東京のシアターN渋谷を皮切りに、全国順次上映予定である。

 昨年と今年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭でも大変な注目を集めた本作は、『大拳銃』の大畑創監督の新作。「『普通の』娯楽映画」を作りたい、と語る大畑監督の言葉通り、「エンターテインメントの純粋な愉しみ」に、どっぷりと浸って酔える1本だ。

 ひと組の、ごく平凡な夫婦 ― 門田恵子(森田亜紀)と吉明(相澤一成)は、深刻な悩みに直面していた。夫の吉明がたびたび激しい発作に襲われるのだが、現代の医学では、原因も判明しなければ治療の余地もないのである。発作の回数は日に日に増え、苦しんで叫び声をあげる吉明を見るたびに、恵子の不安は膨張していく。それでも、吉明を献身的に介護し続ける恵子だが、ある日、想像を凌駕する事態に見舞われた。発作を起こした吉明の体が、「変化=へんげ」したのだ。

エンターテインメントのあらゆる要素がてんこ盛り。

 夫の奇病に悩む夫婦のラヴ・ストーリーであり、ホラー、特撮、SFの愉しみも味わえる、娯楽映画のあらゆる要素がてんこ盛りに備わった作品だ。恵子と吉明の不安に同調しつつも、処々で思わず笑みがこぼれてしまう。奇想天外な事態に直面したときの人間が起こす言動は、ときとして滑稽に映るからだろう。また、当事者の門田夫妻を取り巻く人々の「身勝手さ」も如実に描かれていて、人間の欲望や思惑について考えさせられる部分も多い。クライマックスからエンディングにかけては、溜飲が下がる爽快感が待っている。「なるほど、これは『ネタバレ禁止』だ」と拍手を贈りたくなるラスト・シーンは、映画館の大きなスクリーンで見届けてこそ、快感が何倍にもふくれあがるだろう。

▼『へんげ』作品・公開情報
2011/日本/54分/カラー
出演:森田亜紀 相澤一成 信國輝彦
監督・脚本・編集:大畑創
音楽:長嶌寛幸  
特技監督:田口清隆  
撮影:四宮秀俊  
照明:玉川直人・星野洋行  
録音:高田伸也・新垣一平・根本飛鳥  
特殊メイク:宇田川祐  
美術:伊藤淳・間野隼人・福井早野香  
衣装:加藤麻矢  
助監督:川口陽一  
制作:名倉愛・藤岡晋介・加藤綾佳
配給:キングレコード
宣伝:ブラウニー
コピーライト:(c)2012 OMNI PRODUCTION
『へんげ』公式サイト
※2012年3月10日よりシアターN渋谷ほか全国順次公開!

文:香ん乃

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  • 2012年03月11日更新

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