『エル・トポ 製作40周年デジタルリマスター版』

  • 2010年10月18日更新

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1970年に、ニューヨークにある場末の映画館で公開された『エル・トポ』。チリ出身のアレハンドロ・ホドロフスキー監督の代表作で、カルト映画の金字塔として語り継がれている。ニューヨークでの公開時は、ミニシアターでのレイトショーだったにもかかわらず、ミック・ジャガーやアンディ・ウォーホル、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの夫妻などが鑑賞に足を運んだとして話題になった。

タイトルで主人公の「エル・トポ」とは、「もぐら」の意味である。ガンマンのエル・トポは、ひとり息子を連れて旅をしている。ならず者と闘い、息子と象徴的に別れ、愛する女と出逢うエル・トポ。彼が撃ち殺すのは悪人に限らない。「最強であること」を追究して旅を続けるエル・トポだが、果たして、彼がたどりつく境地とは……。

ジョン・レノンが絶賛したということで話題になり、日本でも1987年に大々的に公開されたが、あまりに前衛的な内容だったため、たった3日で上映が打ち切られたという。

壮大な砂漠と荒野を舞台に撮られた本作には、一度目にしたら忘れられない映像美がある。その一方で、劇中に登場する大量のうさぎの死骸が実は本物であるなど、現代の映画では手法的にも倫理的にも考えられない演出がなされているため、喜ばしさからは遠い衝撃を受ける人もいるだろう。

アーティストたちの支持と、カルト・ムービー・ファンの興味を集めた本作が、製作から40年を迎えた今、デジタルリマスター版で蘇った。賛否両論が飛び交いそうな作品だが、記憶に残って、感想を誰かに話したくてたまらなくなる1本であることに間違いはない。『エル・トポ』が伝説として語り継がれる証拠をその目で確かめて、映画ファン同士で議論を戦わせるのも一興だろう。

▼『エル・トポ 製作40周年デジタルリマスター版』作品・公開情報
アメリカ・メキシコ/1970年/123分
原題:”El Topo”
監督:アレハンドロ・ホドロフスキー
出演:アレハンドロ・ホドロフスキー ブロンティス・ホドロフスキー 他
配給:ロングライド ハピネット
コピーライト:(c) ABKCO Films. All rights reserved.
『エル・トポ 製作40周年デジタルリマスター版』公式サイト
※2010年9月25日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開(全国順次)。

文:香ん乃

  • 2010年10月18日更新

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