盲養護老人ホームの日常から見えてくる大切なもの — 澤佳一郎監督作品『そこにあるもの』11月公開

  • 2019年09月15日更新

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盲養護老人ホームで生活する人々の日常に密着したドキュメンタリー映画、『そこにあるもの』が、2019年11月16日(土)〜29日(金)に、池袋シネマ・ロサにてモーニングショー上映される。『モラトリアム』の澤佳一郎監督が、映画美学校ドキュメンタリー・コースの卒業制作として、2010年に手がけた作品だ。

大切なものが「見えて」くる——  “愛”をテーマに臨んだ作品

東京都青梅市にある盲養護老人ホーム「聖明園曙荘」。ここでは、先天盲、後天性失明、ロービジョン者の方など、100名ほどが暮らしている。朝はラジオ体操から始まり、午後はさまざまなクラブ活動や行事を楽しむのが彼らの一日だ。

「視覚情報に頼る日常のなかで、埋もれてしまっている大切なもの」を追求したという本作。澤監督らスタッフは施設に通い、視覚障がいを持つ人々の「見えないことについて」の世界を丁寧に描写していく。そのなかで、「見えないとはどういうことか」という問題にぶつかり、やがて、目の見えない方々が日々をいとおしむ姿から、少しずつ「物事の見方」についての変化が生じていく……。

人と人とのふれあいにフォーカスを合わせ、全編「愛」をテーマに構成したというこの作品からは、観客たちも、それぞれに「目に見えない大切な何か」を受け取ることができるだろう。

女優・しゅはまはるみによる音声ガイド付き上映も

11月23・24・25日には、女優のしゅはまはるみが音声ガイドを務める「字幕と音声ガイド付きの上映」も行われる。

視覚障がいのある方が本作を楽しめるだけでなく、障がいがない人でも「音声ガイド」を体験することで、目から得る情報とは異なるものの見方や、より深い作品への理解が得られるかもしれない。興味がある方は、この機会に劇場に足を運んでみてはいかがだろうか。

諏訪敦彦監督、飯塚俊男監督からのコメント

今回の公開を祝し、諏訪敦彦監督、飯塚俊男監督がコメントを寄せている。(全文掲載)

▼諏訪敦彦監督コメント

「そこにあるもの」の映像に初めて出会ってから、長い年月が流れた。しかし時を隔てて今再びこれらの映像を見はじめた途端、この人々の声、身のこなし、笑い方、庭の草花の佇まい、 施設の廊下に流れる時間、そんな細部までもが瞬間にありありと思い出された。 まるで彼女たちがずっと私の中に棲んでいたかのような不思議な感覚。何か特別な物語が語られるわけではない。 声高な主張もないし、始まりも終わりもない。ただ「見えない」世界を生きている彼女たちの時間と、見たいものしか 見ようとしない私たちの時間が、やがて溶け合って地続きの時間として映画の中に流れてゆく。 ささやかだけれど、それは稀有な体験であると思う。 そっとバラの花弁に手で触れながら花を楽しむ彼女を見つめる観客の瞳に今また彼女たちの時間が流れ始める。 そして、きっと伊藤さんや、初枝さんは、朗らかな笑い声と共にずっとそこに棲み続けるのだろう。

▼飯塚俊男監督コメント

映画美学校において、ドキュメンタリー制作コースの募集が中止になって久しいが、この映画は、2010年そこで学んでいた人たちの卒業制作の作品である。 今見ても、映画の初心が表現されていて、すがすがしい気持ちで見終えることができた。 映画は、とりわけドキュメンタリー映画は、作り手と被写体との関係性が物語の軸になるが、目が見えない世界で生き ている人に向き合う作者の心のあり方が素直で、共感を覚える。

 

映画『そこにあるもの』予告編(字幕付き)

▼『そこにあるもの』作品・公開情報
(2010年/日本/68分)
英題:scene in the dark
監督・撮影・編集:澤 佳一郎
撮影:曽我由香里 録音:須藤慎
音声ガイド:しゅはまはるみ
制作:映画美学校、 reclusivefactory
配給:株式会社 ロサ映画社
協力:社会福祉法人聖明福祉協会 盲養護老人ホーム聖明園曙荘
後援:社会福祉法人日本視覚障害者団体連合(旧 日本盲人会連合)
助言:諏訪敦彦、筒井武文、塩崎登史子、内藤雅行
©2010 reclusive factory

『そこにあるもの』公式サイト

※2019年11月16日(土)より、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

編集:min

  • 2019年09月15日更新

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