『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』― 欲望のために人はどこまで非道になれるのか

  • 2016年01月29日更新

愛する家族と慎ましくもささやかな幸せを育んできた “家” が、ある日突然奪われてしまったら……あなたはどうするだろう?

サブプライム・ローン問題に端を発し、2008年9月にアメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザースが破壌。世界的金融パニックをもたらした「リーマン・ショック」後、アメリカでは多くの貧困層がローン滞納を理由に、裁判所から自宅の立ち退きを命じられた。本作は、そうした社会背景の中で悪徳不動産ブローカーに “家” 奪われた青年が、それを取り戻したい一心から憎むべき不動産王の右腕となり、かつての自分と同じように借金を抱えた人々をさらなる苦境に追い込んでいく姿と、その胸中で渦巻く欲望と良心の葛藤を描く社会派サスペンスだ。

ある日突然 “家” を奪い取られた主人公が、家族と生きるために選んだ道は……?

シングルファーザーのデニス・ナッシュは、幼いころから住み慣れた小さな家で母親と小学生の息子の3人で暮らしていた。しかし、大不況のあおりを受けて住宅ローンを滞納し、裁判所から自宅の明け渡しを命じられる。立ち退きまでたった2分間の猶予しか与えられず、なけなしの貴重品だけを持って家族とモーテルに転がり込むが、悲しみに暮れる余裕はない。生活のために職探しに奔走するデニスを雇ってくれたのは、皮肉にも彼らを自宅から追い出した不動産ブローカーのカーバーだった。生きるため、家族を守るために、非人道的な仕事に加担していくデニス。やがて欲望と良心の狭間でもがくデニスの葛藤が限界に達したとき、彼に重大な決断を迫る大事件が起こる……。

主演は『アメイジング・スパイダーマン』でブレイクしたアンドリュー・ガーフィールド。非情だがカリスマ的な魅力をもつ不動産王にはマイケル・シャノン。道徳的な信念を貫き通す愛情あふれる主人公の母親にはローラ・ダーン。演技派の俳優たちは作品の魅力を何倍にも引き上げている。

気鋭の監督ラミン・バーラニが徹底的な取材をもとに描く現代社会の闇。共同脚本はアミール・ナデリ!

監督・脚本を務めるラミン・バーラニは、日本ではまだ無名だがアメリカでは気鋭のインディペンデント作家として話題を集めている注目株。世界的な経済学者ジョセフ・E・スティグリッツが自著「世界の99%を貧困にする経済」の中で唱えた “世界中の富の4分の1をたった1%の最富裕層が所有しており、残り99%は貧困である ”という説をベースに、リーマン・ショック後の社会背景や実際に家を差し押さえられた人々の体験を徹底的に取材した上で映画化した。作品の舞台をフロリダ州にしたのは、住宅の差し押さえ率が特に高かった地域の一つだからだという。強制的に住民を立ち退かせるシーンは、取材をもとにリアルに描いたものであり、身寄りのない老人や幼い子どものいる家庭にも容赦はない。「これが現実なのか…… 」と驚愕と失望を覚えると同時に、とてつもない緊張感に引き込まれていく。さらに、強烈な映画愛と愛すべきキャラクターで日本にも多くのファンをもつ、鬼才アミール・ナデリが本作では共同脚本を担当。この点もミニシア読者の方々には興味深いのではないだろうか。

映画のラストは、観る者それぞれの心に波紋を広げることになるだろう。観賞後にどんなことを感じ、この結末をどう思うのか――多くの人が自分の幸せの尺度や価値観とじっくりと向き合うことになるかもしれない。

 

▼『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』作品・公開情報

(2014年/アメリカ/112分)
原題:99Homes
監督:ラミン・バーラニ
脚本:ラミン・バーラニ、アミール・ナデリ
出演:アンドリュー・ガーフィールド、マイケル・シャノン、ローラ・ダーン、ノア・ロマックス ほか
日本語字幕:アンゼたかし
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
コピーライト©2014 99 Homes Productions LLC All Rights Reserved

『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』公式サイト

※2016年1月30日(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次公開!

文:min

 

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