『VHSテープを巻き戻せ!』-ブーム再燃。関係者やコアなファンがVHS愛を激白!

  • 2014年07月26日更新

どんなに小さな部屋も映画館になる。そんな夢の生活の実現に大きな役割を果たしたのが、1980年代に普及したVHSテープとデッキだった。今やソフトもハードも見かけることは少なくなり、“巻き戻す”“爪を折る”という言葉は死語同然に。そんな時代の遺物になりつつあるVHSだが、近年ブームが再燃しているという。本作はこのメディアに魅了された(取り憑かれた)人々のインタビューで構成された、懐かしさと映画への愛に満ちたドキュメンタリーだ。7月26日(土)より渋谷アップリンクにて再生開始!


VHSネタが次から次へと溢れ出る

ベータマックスとの規格戦争、地域密着型レンタルビデオショップの登場、インディペンデント映画や日本のVシネなど低予算ビデオ映画の製作、映画鑑賞方法の変化、アーカイブとしての貴重性、鑑賞当時の思い出などを、ビデオカルチャーの仕掛け人や熱狂的ファンが語り尽くす91分。『パペット・マスター』(1989)プロデューサーのチャールズ・バンド、『バスケット・ケース』(1982)のフランク・ヘネンロッター監督、トロマ社(『悪魔の毒々モンスター』(1984)社長のロイド・カウフマンなどの人気カルト作品製作者や、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995)の押井守監督ら日本人の映像関係者も出演する。

エロがVHSの普及を促進(!?)

数あるトピックのなかでも興味深いのは、オリジナリティあふれるビデオのケースカバーに関するエピソードだ。イラストレーターの話から、誇りと自信を持って仕事をしていたことが伝わってくる。確かに、表面積の大きなカバーは味のあるものが多く、特にB級ホラー作品などは箱の表裏の絵だけを見てレンタルすることも多かった。このように、VHSで作品を堪能した世代には、自身の思い出と重ね合わせることができる一方、若い世代には新鮮に映るにちがいない。また、VHSとアダルトビデオとの相関性にも注目したい。いまおかしんじ監督(『UNDERWATER LOVE -おんなの河童-』(2011))は、「自分ではじめて購入した家電は、AVを見るためのテレビとVHSデッキだった」と告白する。80年代には安価なVHS機材を使った独立系会社の作品が量産されたため、米国でも日本でも家で気軽に楽しめるようになった。また、ベータとのシェア争いの際には、VHSデッキ購入の特典として、伝説的ポルノ・AV女優、愛染恭子のビデオを付けて差別化を図ったところ、爆発的に売れたそう。VHSの普及はAVの隆盛をもたらし、AVはVHSを優勢に導いたのだ。その方面に疎い人(?)にも納得のエピソードといえるだろう。

果たしてその将来は?

近年、VHS人気が復活し、ビデオフォーマットで新しい映画が公開されているらしい。だが、自室をVHSテープで埋め尽くしたり(そのうち何本を再生できるかは不明)、身体にテープのタトゥーを施したりしているマニアでさえ、その未来に否定的な人は多い。現在アメリカではストリーミングが主流。この状況下でVHSが生き残るのは難しい。でもVHSは、それに付随する自分の経験とともに多くの人の心の中に記憶として留められるはず。ぶ厚く大きくかさばって劣化しやすいVHS。でも何ともいえない温かみがある可愛いヤツなのだ。映画を身近にしてくれたことに感謝!

▼『VHSテープを巻き戻せ!』作品・公開情報
2013年/英語・日本語(英語・日本語字幕)/91分
原題:REWIND THIS!
監督・脚本・原作:ジョシュ・ジョンソン
出演:アトム・エゴヤン、ジェイソン・アイズナー、フランク・ヘネンロッター、ロイド・カウフマン、押井守、高橋洋、千葉善紀、バクシーシ山下 、いまおかしんじ、中原翔子ほか
配給:アップリンク
宣伝:アップリンク、contrail
© Imperial Poly Farm Production

・公式サイト:http://uplink.co.jp/vhs/

米2014年7月26日(土)より渋谷アップリンクにて再生開始

文:吉永くま

  • 2014年07月26日更新

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