『ゆるせない、逢いたい』-デートレイプ。激しい憎しみと楽しかった思い出が複雑に入れ乱れる感情に向き合う。

  • 2013年11月23日更新

17歳の高校生、はつ実は引っ越先で古紙回収業者の青年、隆太郎と偶然出会い、恋が芽生える。しかし、はつ実が母親に隆太郎の存在を隠したことから、隆太郎はふられたと誤解し、彼女を襲う。デートレイプ―友人や知人などによる強姦-の被害者になったはつ実は激しい憎しみを持ちながら、その一方で楽しかった隆太郎とのデートを思い出し、複雑な気持ちに苦しむ。解決することのない思いに向き合うためにはつ実はある決断をする。「誰も知らない」の柳楽優弥演ずる隆太郎のセリフがなくても“語る背中”に注目。第18回釜山国際映画祭出品作品。11月16日(土)より ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館 にて全国ロードショー ©S・D・P/2013「ゆるせない、逢いたい」



ゆるせない、逢いたい。複雑に入れ乱れた感情に向き合うための対話。
高校生のはつ実は母と二人、郊外の一軒家に引っ越してきた。引っ越しの整理をする中、段ボールを回収する業者の青年、隆太郎に出会い、恋が芽生えていく。はつ実は母親に心配をさせないため、隆太郎の存在を隠し続け、それが原因で隆太郎は嫌われたと思いみ、衝動を抑えきれずはつ実を襲ってしまう。心を通わせていた男性から受けた暴行。はつ実は事件を通して、世間のこころない言動に苦しみながら日々を過ごすことを強いられていた。「ゆるせない」という強い気持ちと、ふとした瞬間に思い出す楽しかった思い出。複雑に入り乱れた、止めることができない感情に向き合うため、一度きり、最後という条件で、はつ実は隆太郎との「対話」という手段を選ぶ。母親に支えられながら、はつ実は「対話」の場所に向かう。



「本当にレイプなの?」意思表示の消耗
被害者であるはつ実が体験するのは、レイプの時に経験する恐怖心と体の傷だけではない。「本当にレイプだったの?」調査の時に何気なく投げかけられる問いがはつ実のこころに突き刺さる。特に加害者が知り合い、もしくは恋人であった場合、合意のもとでの性行為であれば起訴はされない。しかしどんな親密な関係であろうと、女性が望まない行為はまぎれもなく暴行であり、そこでうけた傷は大きい。デートレイプは女性の意思表示によって表面化するもので、その意思表示にために心が消耗する女性が多いのも事実だ。はつ実を演じる吉倉あおいは10代特有のもろさをもちながら、どのような意思表示をしていくのだろうか。



被害者と加害者を支える人々の姿を描く
隆太郎に強い憎しみを持ちながら、二人の楽しかった思い出が瞬間的によぎることがある。相反する複雑な思いを抱え、前に進めないはつ実に提案されたのが「対話」だ。吐き出すことのできなかった自分の気持ちに向き合い、事件を少しでも消化させていくという手段であるが、心の傷を悪化させる可能性は高い。危険を伴う「対話」は二人だけで行うものではなく、二人を支える人々の存在があって初めて成立する。二人を受け入れ、いやしていく周囲の人々こそが事件に向き合う原動力となる。金井監督が描く、包み込むような周囲の人々の姿にも注目してほしい。



▼『ゆるせない、逢いたい』作品・上映情報
監督・脚本・編集:金井純一
製作:細野義朗
共同プロデューサー:坂本雅司
プロデューサー:加藤伸崇 古賀奏一郎
出演:吉倉あおい 柳楽優弥 / 新木優子 原扶貴子 中野圭 (劇団前方公演墳) / ダンカン / 朝加真由美
主題歌:「ライン」Salyu (作詞・作曲・編曲:小林武史)
配給:S・D・P
●「ゆるせない、逢いたい」公式サイト

©S・D・P/2013「ゆるせない、逢いたい」
11月16日(土)より ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館 にて全国ロードショー

文:白玉

  • 2013年11月23日更新

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