『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』―ブルーの瞳で撃ちまくる、処刑人は夢見るティーンエイジャー―

  • 2013年10月12日更新

『プレシャス』でアカデミー賞最優秀脚色賞を受賞したジェフリー・フレッチャーが、再びティーンエイジャーの女の子を題材に、脚本を執筆。監督デビューを果たした。魅惑のヒロイン2人組には、シアーシャ・ローナンとアレクシス・ブレデル。ハリウッド注目の若手女優2人をW主演に迎え、異色のロリータ・バイオレンスを誕生させた。ブルーの瞳の天使たちが、気持ちよいほど撃ちまくる! 刺激的でキュートなガーリー・ムービー!
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10月12日(土)より 新宿シネマカリテ ほか全国 ロードショー。


処刑人は夢見るティーンエイジャー。
ニューヨークで「お手軽な仕事」だけ請け負う、ティーンエイジャーの殺し屋バイオレット(アレクシス・ブレデル)とデイジー(シアーシャ・ローナン)。ある日2人は、仲間のラス(ダニー・トレホ )から仕事を依頼されるが、休日を決めこもうと断ることにする。ところが電話を切った直後、彼女たちのあこがれのアイドル、バービー・サンデーの「新作ドレスの予告」を見つけたがために、前言撤回、電話をかけなおし報酬アップの仕事を引き受ける。今回の殺しのターゲットは、なんとも謎の男。盗みを働きながら自ら電話をかけてきて、名前や住所を明かしたという。好条件が重なって、かなりやりやすそうなおいしい仕事だ。この仕事について、ラスとバイオレットがやり取りする中で、妹分のデイジーは、かつてバイオレットに「ローズ」という名の、死んだ相方がいたことを知る。小さな嫉妬心を抱きながらも、明るく素直なデイジーは「ドレスを手に入れたら、何かが変わる」と前向きに考える。2人はおそろいのドレスを手に入れることを夢見ながら、現場に向かう。ラスの言う通り、あっさりとターゲットのアパートに入り込んだ2人だったがターゲットは不在、待ちくたびれた2人は寝入ってしまう……。次に2人が目覚めると、目の前でターゲットの中年男マイケル(ジェームズ・ガンドルフィーニ)が無防備に眠っている。あわてて銃口を向ける2人だったが、目覚めたマイケルが「殺してくれ」と求めることに動揺。「ターゲットと仲良くなってはならない」という殺し屋としてのルールはあるものの、2人はマイケルが死にたがる理由を知りたくなってしまう。そしてそのころ、よりによって2人の天敵の殺し屋集団も、マイケルを狙い、このアパートに向かっていた……!



大人へのカウントダウン、貴重な乙女のひととき!
『つぐない』(監督:ジョー・ライト)や『ラブリー・ボーン』(監督:ピーター・ジャクソン)では完全なる子役であったシアーシャ・ローナンが、成長し大人に近づいてきた。あと一歩で「女性」になる微妙な時期だ。そんな少女と女性のはざまで揺れている年頃独自の「乙女のヘリクツ」を、本作でシアーシャ・ローナンが見事に披露。天使の処刑人・デイジーの得意技は、大人を煙に巻く脱力系乙女のおしゃべりなのだ。ところが、そんな怖いもの知らずに見えるデイジーの態度が、実は強がりだったとわかれば、抱きしめたくなるほどの愛おしさだ。 コスプレシーンもあり、まさに今の彼女しか見せられない魅力がいっぱいである。一方、アレクシス・ブレデル演じるバイオレットは、タフネス担当でちょっぴり姉御肌。バブルガムを膨らませ、ウインクしながら撃ちまくる。やられたら仕返しはこっぴどく! その思い切りのよさは爽快の一言に尽きる。実戦ではデイジーをリードしたりかばったりと、危険な役を買って出る。だけど素顔はドレスやプレゼントにキュンキュンする女の子で、一皮脱げばみんなの大好物「泣き虫の殺し屋」だ。こんな最強の処刑人・バイオレット&デイジーが、そろってともに見事なブルーの瞳! まさに天使の降臨といえる美しさであろう。



脇を固める、味のある実力派。
本作は、アパートメントでのシーンが中心に描かれ、登場人物の多くはここに集まってくる。バイオレット&デイジーを取り巻くのは、屈強そうな殺し屋集団、父のような世代のおじさまたち、そして幾人かの女性。すべてのキャストが見事に作用し、バイオレットとデイジーを、さらに魅力的に輝かせている。このすばらしきバイプレイヤーの中には、惜しくも本年亡くなったジェームズ・ガンドルフィーニがいる。父親のような情の深さと、人生を味わいつくしてきた憂いある表情で、この作品をどっしりと支えている。さて、本作には男と女という関係は出てこない。パパ世代と娘世代、あるいは大人たちとティーンエイジャー。その関係性により、作品自体に違和感ともいえる妙な感覚を与えている。これが新しいジャンルなのだろうか。「ロリータ・バイオレンス」といったところか。また、バイオレットとデイジーがアイドルやファッションに熱をあげたり、後先を考えぬ無防備な行動をとったりすれば、だれにも身近な浮かれ気味のティーンエイジャー像に重なる。しかし処刑人である2人は、信じられる相手が少なく、深いところでは殻に閉じこもっていたり、コンプレックスをかかえていたり、傷ついているシリアスな部分もある。そういった「処刑人ならでは」だったはずの陰の部分までも、彼女らの会話を聞いていると、いつの間にか等身大のティーンエイジャーに重なってくる。ジェフェリー・フレッチャーが描くティーンエイジャーの世界観は、実に見事である。



▼『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』作品・公開情報
2011年/アメリカ/88分/ドルビーデジタル
原題:Violet & Daisy
監督・脚本:ジェフリー・フレッチャー
製作総指揮:ジョン・ペノッティ/ジェームズ・スコッチドープル
製作:ジェフリー・フレッチャー/ボニー・ティマーマン
撮影:ヴァンヤ・ツァーンユル 編集:ジョー・クロッツ
美術:パトリツィア・フォン・ブランデンスタイン 音響:ボブ・ハイン 音楽:ポール・カンテロン
出演:シアーシャ・ローナン/アレクシス・ブレデル/ジェームズ・ガンドルフィーニ/ダニー・トレホ/
マリアンヌ・ジャン=バプティスト/タチアナ・マズラニー ほか
配給:コムストック・グループ  配給協力:キノフィルムズ
●『天使の処刑人 バイオレット&デイジー』公式サイト
10月12日(土)より 新宿シネマカリテ ほか全国 ロードショー
©MV NEPENTHES. LLC MMXII ALL RIGHTS RESERVED
文:市川はるひ

  • 2013年10月12日更新

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