【実践映画塾シネマ☆インパクト】シネマ☆インパクト第3期 いまおかしんじ監督インタビュー-映画を作るには仲間が必要

  • 2013年03月30日更新

いまおかしんじ監督の『集まった人たち』は、セックスしたいけどなかなかできない人たちの悶々とした気分の連鎖を描いています。世の中にはいろんな人がいる、ということで、ヤリマンを自称する女。彼女が好きだからこそ手が出せない誠実な男。引きこもってエロ動画見てばかりの男。ロリコン教師。セックス好きのデリヘル熟女。不倫カップル。売春コンビ。などなど老若男女いろんな人が登場します。それぞれが誰かを求めているのだけれど、うまく表現できなくて、逆に他人を傷つけてしまう。
滑稽なまでに不器用な人たちのありのままの言動が、次第に愛おしく見えてきます。


ゲリラ撮影の醍醐味

—外で「セックスしたいセックスしたい」と騒ぐシーンがありますが、そういうシーンを撮っている時の近隣の人の反応は大丈夫なんですか?
いまおかしんじ監督(以下いまおか):大丈夫じゃないですよね、たぶん(笑)。一番最初は新宿のホコ天でゲリラっぽく撮ろうとしていたんです。そしたらその日が雨だったんですね。しょうがないなあってカメラマンと相談して、制作担当の甘利くんにも相談してほかの場所を探して、新宿駅西口の青梅街道にかかる歩道橋でぶっつけ本番でやってみたもののうまくいかなくて。通行人に止まられて何回か撮り直しているうちに通報があって近くの交番から警官が出てきたので、逃げました。仕方なく近くの公園に行って勝手に撮影したんです。なんかインパクトがあることしなきゃと思ってやったのに、結果あんまりインパクトない感じになったというか(笑)
甘利類(以下甘利):雨の日に歩行者天国がなくなることをあまり考えてなくて、撮影当日、撮影の合間、裏でずっと場所を探して、写メ撮って確認してました

—雨天の場合について事前に考えて準備してないことを、講師であるいまおか監督は怒ったりはしないんですか?
いまおか:いや別に怒らないですよ(笑)。そんなにあれこれ事前に考えられないっていうか、とりあえず想定したところでやって、ダメならまた考える。みんなで話し合えばアイデアは出てくるものですよ」

—寛容ですね。
いまおか:「まあ、適当なんです(笑)」

−雨のシーンもありました。
いまおか:「雨の予定じゃなかったけど、急遽傘をさして撮りました。教室として使用している新宿文化センターの前のベンチで撮ろうとしていたら、そこもどこかの敷地みたいで警備員が出て来て『そういうことされたら困ります』と追い出されまして。どうしようかと言っていたら雨が降ってきて。傘さして公園でやるかっていう感じでやったんですけどね。どのみち東京では撮影許可がなかなか下りないんですよ」

—しょっちゅう場所を追われる気持ちは?
いまおか:「いつも思うんだけど、追い出されて、『あ、すみません』と言って撤収しますけど、心のどこかで『別に悪いことをしているわけじゃないんだけど』と思っています。もちろん、警備している人は追い出すことが仕事ですから仕方ないことですが、基本的に悪事を働いているんじゃないという思いがあって。だからかもしれないけれど、あえてそういうことをやりたくなりますね」

—甘利さんはゲリラ撮影の経験は?
甘利:「あったんですけど、こんな大規模なものははじめてでした。やっているとき、すごくゾクゾクしました。歩道橋で撮っていた時は、ワンカットで撮って逃げるかと思ったら、いまおかさんはすごく粘っていて、すごいなって思いました」

—長年やっていると度胸がつくのでしょうか。
いまおか:どうなのかな。でもまあ、その、なんていうのかな、もともと低予算の作品が多いというのもありますが、きっちり準備を整えて、リハーサルも重ねてやるよりは、偶然を利用するというか、今、起こっていることを映画に取り入れたいと思っています。そのほうが今、撮る意味も、緊張感も、お祭り感も出ますから

受講生全員を均等に出す
—今回は、シネマ☆インパクトの受講生と出会って、どうやって映画ができていったんでしょうか。
いまおか:タイトルはそのまんま、いまおかクラスに『集まった人たち』(笑)。内容は、みんなに会ってから考えようと思っていたんです。初日に会って考えたのは、誰かひとり主人公を決めて作っていくやり方もあるけれど、全員均等に出そうということで、『集まった人たち』とタイトルをつけました。最初にねるとんみたいなことをやって、できた男女カップルに短い芝居やコントを作ってもらったんです。それを見て、参考にしながら、僕がシナリオを書きました

—受講者全員がまんべんなく出演しています。
いまおか:全員出すには、19人くらいがギリギリっすよ。2期の山下敦弘君のクラスは35人くらいいて。山下君も最初は全員出すって決めていたらしいんだけど、結局無理でしたって言ってました(笑)

—ヤン・イクチュン監督作はかなり少なかった。
いまおか:メインが2人ですものね

—いまおかさんのところは、受講生は嬉しかったというかやりがいあったでしょうね。
いまおか:「うーん、ただ、そういうことでいいのかなとも思っているところもあるんですよ。例えば、大根仁さんのところもいっぱい受講生がいて。2日目くらいでキャストをぐっと絞ったそうです。そうなると、選ばれなかった人は、あとの2週間近く見学するしかないんですよ。あらかじめそういう可能性もあることは明言されているんだけど、それを強いてまで自分の作りたいものを作る意思はすごいと思います。ある程度の覚悟がないとできないですよね。俺なんかはそこまで厳しくいけなかったから」
甘利:「他のクラスの話を聞いたら、落ちて見学組になった人でも、中には来なくなってしまう人もいるそうで。それはやっぱさみしいと思いました。いまおかさんのクラスは毎日行くのが単純に楽しかったです。役者さんが、なんかそれぞれ違う面をエチュードの中で出して、それをだんだん取り入れて作品ができていく感じが毎回面白かったから。みんなが出ていてすごく嬉しかった」

—スタッフクラスもほぼほぼみんな働けたんですか?
いまおか:「どうなんだろう? でも前半は暇だよな、わりと? 後半、シナリオできてからはロケ場所を探したり、忙しくなるんだけど」
甘利:「暇な時期は、エチュード用の机を出すような仕事を、我先にとやっていました。エチュードごとに机と椅子の形が変わるので、我先に動いて、できるスタッフ感を出していました。それがいいとか悪いとか関係なくて、それくらいしかすることがないんですよ(笑)。後半はロケ地探しにはじまって、撮影中はほんとうに忙しくて充実していました」

—常に何かできることを探すのが大事ですね。いまおか監督もそういう時代があったんですか?
いまおか:「そうすね、ありましたね。助監督やっていましたから」

—よく世代論で、今の20代と、30代、40代は違うって言われますけど、違いを感じますか?
いまおか:「そうは思わないけど……。なんなのかな、いや、なんか、あのう、うーん……やっぱり僕は最後のプロダクション世代なんですよ。昔は、若松プロとか、なんとかプロっていうのがあったんです。ピンク映画にも。で、まあ、自分の実感として、フリーの助監督でやっていたら監督になれていなかったなと思って。プロダクションである程度の関係性——師弟関係みたいなものができて、何年か過ごすことがないと、やりきれなかったなって思うんですよ。今はそういうのがなくて。学校がいろいろあるけれど、結局は自分で撮るしかない。自分で仲間を作って自主映画を撮っている。そういう意味では撮る環境も上映する環境もよくなっているとは思いますが、なんかやっぱりバラバラな印象があります。すごくがんばらないと続けられないっていうか、1本くらいはできますが、じゃあ次にまた仲間集めてやるかっていうと、けっこう大変ですよね。僕らの時代は、なんかしらんけど、グループがあって、似たようなやつがいて、先輩がいて。それで、辞めようと思っても、もうちょいやろうぜっていうのがあって、続けることができた。そのへんが違うと思いますね」

—良いところと悪いところがあると。
いまおか:「ありますね。映画を作ることはなかなか大変です。自分もそうだけど、人を巻きこまないとならないから」

シネマ☆インパクトだからできたこと
—ところで、いまおかさんは第一期の山本政志監督作『アルクニ物語』では出演もされました。そもそもどういうきっかけでシネマ☆インパクトのプロジェクトに参加されたのですか?
いまおか:「元々、山本さんの作品をけっこう見ていて、3年くらい前に飲み会があってそこではじめてしゃべったんです。それがきっかけで、やらないかって誘われました。ただ授業があるんじゃなくて最後に何らかの作品を作ることは緊張感があっていいなと思いました。形に残るのはいいなと。出演は突発的ですよ。撮影の3日前くらいに電話があって、出る予定の人が出られなくなってしまったからって。その役名は『鈴木卓爾』で、なんだよ、卓爾さんの代役かよ!って。ハハハ」

—山本監督の演出はいかがでしたか?
いまおか:「見かけによらず繊細なんですよ(笑)。例えば、『アルクニ物語』は時間が経過していく中で、衣裳が汚れていくんだけど、少し汚し過ぎちゃったんですよね、美術のスタッフが。たいてい、もう汚しちゃったんだからしょうがないって思うじゃないですか。でも山本監督は『もうちょっときれいにしろ』って言うんですよ。それをしたら時間かかるのに、それでもやるんですよ。妥協しないなあって思いました」

—いまおか監督だったら?
いまおか:「こだわらないです。いいんじゃないのって。後半もっと汚せばいいんでしょって思っちゃう。僕は大雑把なんですよね(笑)」

—いろいろなタイプの監督作が一挙に見られるのがシネマ☆インパクトの面白さのひとつです。第3期作品はご覧になりましたか?
いまおか:「大根さんの『恋の渦』以外は見ました。みんな、ふだんからいろんな方法で映画を撮っているのでしょうけれど、こういうシネマ☆インパクトという場で映画を撮る方法を考えているというか、通常の劇場公開作品では撮れないものをやろうとしている印象を受けました。廣木隆一さんは福島で撮って、映像詩じゃないけどストーリーじゃないもので見せているし、山本さんも、映画の序盤30分でぶちって終わっているとかね。ふつうはできないじゃないですか(笑)。なんかそういうある種の実験性をもってやっていることが面白いんじゃないかって思いますけどね」

—いまおか監督がシネマ☆インパクトでしかできないと思ってやったところは?
いまおか:「オーディションで出演者を選ぶのではなくて、来た人を全員出演させることが力になる作品を撮ったこと。ある種のストーリーはなくて、ただ人物が連なっていくだけというのは、作り方としてはなかなかできないことですよね。あとは、60分くらいの長さのシナリオを1日で書いたことが画期的でした。やればできる俺は、みたいな(笑)」

—『苦役列車』は。
いまおか:「あれは、2時間弱の作品で、3ヶ月くらいかかっていますからね。ものによりますけど、さすがに1日じゃ書けないと思います。今回は、自分の脳内が何かに取り憑かれたように、思いついたことをただダーって書き出すみたいな感じで、自分の中のものがストレートに出ている気がするんですよね。ふだん考えていることとかが」

—甘利さんは、いまおか演出をどう思いましたか?
甘利:「とても細かく芝居をつけていて、すごい演出家だなって。役者さんを輝かせるために、こだわるとことはすごくこだわっていた。面白くするためには全く妥協してなくて、制作チームはちょっと感動していました。流れに乗ってやっていながら、どこかに揺らがないところがあるんです」
いまおか:「やっぱりみんなどこか面白いところがあるから、引き出すだけでいいんですよ」

—最後に甘利さんは、受講していかがでしたか?
甘利:「いまおか監督の作品が好きで、その現場につくことができて嬉しかったです」
いまおか:「僕も助監督のとき、例えば瀬々敬久監督の現場につきたくて、つかせてもらったりしていました。シネマ☆インパクトは短期間ではありますが、好きな監督の下につくにはいい場ですよね。なんとなく映画会社に行くのではなくて、誰か好きな監督につくのが映画の世界に入るやりかたのひとつですから。そのことがなんらかの入り口になると思います」

—シネマ☆インパクトは1年間の企画かと思ったら、2013年度版もあるんですね。
いまおか:「そうなんですよね。僕もつい最近知りました。チラシを見て、まだ続くんだ!と驚きましたよ(笑)」


[プロフィール]
いまおかしんじ Shinji Imaoka
1965年、大阪府生まれ。映画製作会社獅子プロダクションに入社、ピンク映画の助監督として修行を積み、1995年『獣たちの性宴 イクときいっしょ』で監督デビュー。主な作品に『たまもの』『かえるのうた』『おじさん天国』『UNDERLOVE−女の河童』などがある。『苦役列車』では脚本を担当した。


シネマ☆インパクト 第3弾
『止まれない晴れ』
2013年|32分  監督:熊切和嘉
脚本:辻田洋一郎、撮影:高木風太、録音:小山道夫、編集:堀善介
平凡だが幸福な生活を送っていた夫婦が同窓会に参加したことで、驚愕の事実が明るみになる。




『集まった人たち』
2013年|62分  監督・脚本:いまおかしんじ
撮影:戸田義久、録音:光地拓郎、編集:神谷朗、助監督:甫木元空
セックスしたいのになかなかできない人たちの思いが連なっていく……。



『恋の渦』
2013年|138分  監督・撮影:大根仁
原作・脚本:三浦大輔、撮影:高木風太、大関泰幸、録音:岩倉雅之、光地拓郎
劇団ポツドールの三浦大輔脚本による舞台作品を映画化。男女数名の入り乱れる恋愛模様。『モテキ』の大根仁、初の自主制作映画は2時間20分の力作に。


『海辺の町で』
2013年|64分  監督・脚本:廣木隆一
撮影:鍋島淳裕、録音:ジョイスあゆみキャスリーン、編集:和田剛
福島出身の廣木と撮影カメラマンの鍋島淳裕による、オール福島ロケ。受講生全員がバスに乗って一泊2日の撮影に挑んだ意欲作。


『水の声を聞くープロローグー』
2013年|31分 監督・脚本:山本政志
撮影:高木風太、録音:小山道夫、編集:山下健治、制作:吉川正文、音楽:Dr.Tommy
新宿コリアンタウンの巫女は、水と緑からのメッセージを伝えている。彼女の元に訪れる人々は救済されるのか。壮大な長編の序章。



3月30日〜4月19日 オーディトリウム渋谷
詳しい上映スケジュールは
http://cinemaimpact.net/vol3/sche.html
http://a-shibuya.jp/archives/5405

 

シネマ☆インパクト2013 Vol,1 4/1(月)始動!!
今年は、長編作品制作 林海象(『濱マイクシリーズ』『弥勒』)平波亘(『労働者階級の悪役』)タナダユキ(『ふがいない僕は空をみた』)、行定勲(『春の雪』『クローズドノート』)大森立嗣(『ぼっちゃん』『さよなら渓谷』)各監督 HPからお申し込みください!
http://www.cinemaimpact.net/info@cinemaimpact.net CINEMA☆IMPACT
1600-0000 新宿区新宿6-7-17-401
TEL&FAX 03-6273-2158

 

取材・編集・文:木俣冬

  • 2013年03月30日更新

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