「演劇」と映画館の『親密さ』- 映画館で、演劇を、観る?生でしか味わえないはずの演劇が、映画という違ったフィルターを通した時、新たな創造として生まれ変わる。

  • 2013年01月28日更新

とにかく、よくぞ、様々な演劇映画を選んだものだ。マルグリット・デュラスから、フレデリック・ワイズマンがあるかと思えば、山下敦弘監督の貴重な記録など…多角的な視点で舞台と映画のコラボレーション作を選んでいる。
最近、演劇の映像化が増えている。劇団☆新感線の舞台を劇場にかける企画の〈ゲキ×シネ〉、歌舞伎を撮影した〈シネマ歌舞伎〉、メトロポリタンオペラを撮影した〈METライブビューイング〉など。これらは、舞台の記録映像は退屈という先入観を大きく覆し、何台ものカメラを使って撮った映像に編集を施して、映画としての質を高めたものだ。 演劇の映像化といっても、こういった記録映画スタイルだけではない。昨年は、想田和弘監督が、平田オリザの演劇を作る様子を多角的に追ったドキュメンタリー『演劇1』、『演劇2』が話題になった。オーディトリウム渋谷の〈「演劇」と映画館の『親密さ』〉という企画に並んだ演劇を題材にした映画は、実に様々で、演劇が映画の題材になり得る魅力的なものであることがわかると同時に、対象をどう撮るか、映画の可能性も提示してくれる。

とにかく、よくぞ、様々な演劇映画を選んだものだと思う。朗読によって物語が進んでいくマルグリット・デュラスの『アガタ』から、コメディ・フランセーズの女優のために書かれた小説を、フレデリック・ワイズマン映画化した『最後の手紙』があるかと思えば、山下敦弘監督が11年に中野の小劇場で舞台演出した時の貴重な記録『ぶたい版・中学生日記』や、もともと舞台で上演された作品を映画に作り直した『金子の半生』など、多角的な視点で舞台と映画のコラボレーション作を選んでいる。

この刺激的な企画及びラインナップが誕生したきっかけを、オーディトリウムの番組編成を担当する杉原永純氏に聞くと、「2012年夏当館開催の【濱口竜介レトロスペクティヴ】で上映した『親密さ』に端を発したのと、同時期に試写で見た想田和弘監督作『演劇1』『演劇2』にも強く感銘を受け、同時期にこうした〈演劇〉にまつわる意欲作が発表されていることに映画館も何らかの反応すべきと思い、この特集を企画した」と言う。

「映画と演劇という、近そうで今では何故か遠くなってしまった2つのジャンルをつなげるように、まさに『親密さ』というタイトルに導かれて作品を選んでいます。製作年代も国も映画ジャンルもさまざまですが、どの作品からでも良いので、一本観てもらって、もう一本観てみたいと興味をもってもらえるように編成しています。演劇の上演記録の映像作品もあります。スクリーンの中で、そしてスクリーンと客席でこれまでなかったような化学反応が起きることを期待しています」と杉田氏はアピールする。

大滝秀治も仲代達矢も渡辺謙も劇団出身。舞台俳優が映画に出ていることが当たり前だったこともあるのに、今では、舞台俳優、映画俳優と、分たれて考えられがち。舞台人が映画の脚本を手がけたり監督までやることもある昨今、映画と演劇の出会いが新たな創造の可能性を拓くものであってほしいものです。

▼「演劇」と映画館の『親密さ』上映情報
上映作品

濱口竜介『親密さ』(2012/255分)
想田和弘『演劇1』(2012/172分)『演劇2』(2012/170分)
ジョン・カサヴェテス『オープニング・ナイト』(1978/144分/アメリカ)
フレデリック・ワイズマン『最後の手紙』(2002/62分/アメリカ)
松井周演出『カガクするココロ』(2012/110分)※映画美学校アクターズコース修了制作上演記録
岩井秀人『金子の半生』(2010/40分)
山下敦弘『ぶたい版・中学生日記』(2012/60分※予定)
深田晃司『東京人間喜劇』(2008/140分)
阪本順治『大鹿村騒動記』(2011/93分)
マルグリット・デュラス『マルグリット・デュラスのアガタ』(1981/86分/フランス)

開催期日:2013年2月9日(土)〜23日(土)
会場:
オーディトリウム渋谷

■ 料金:当日一般=1500円/学生=1300円/シニア=1200円/高校生800円/中学生以下=500円 *『親密さ』のみ当日一般=2000円/学生・シニア=1800円
回数券 3回券=3600円/5回券=5500円(*『親密さ』は一回分+500円)整理番号制/自由席

※  作品詳細はオーディトリウム渋谷公式ページ

文:木俣冬

  • 2013年01月28日更新

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