会期中にロケハン。観なきゃいけない作品を観て、それで自分も撮影に入ります。-第13回東京フィルメックス審査委員長SABU監督インタビュー

  • 2012年11月20日更新

11月23日から第13回東京フィルメックスが開催される。東京フィルメックスで選ばれた作品の監督たちは、後にカンヌやベルリンなど主要国際映画祭で賞を取る映画製作者もいて、未来の巨匠となる才能を青田買いする絶好のチャンスだ。今年も映画の目利きが選んだ“個性的な光を放つハイセンスな作品”46本がラインナップ。海外映画祭で最も注目される日本人監督の一人、SABU監督を審査委員長に迎え、コンペティション9作品からグランプリが選出される。『ミニシアターに行こう。』ではSABU監督に東京フィルメックスでの出会い、東京フィルメックス直後に撮影が始まる新作についてなどたっぷりとお話をうかがいました。



到着したら、上映が終わっていた?!マレーシアで驚きの映画祭体験。
-海外の映画祭で活躍されている監督のイメージがあるSABU監督ですが、海外の映画祭の思い出をお聞かせ下さい。
SABU監督:(以下SABU)マレーシアの映画祭のコンペティションに参加した時のこと。新人だったのに、ビジネスクラスを利用させてもらって、到着したら“VIP”って書いてある車に乗り、白バイに先導されてホテルに向かったんです。「すごーい」って感じで。その後、事務局に行ったら(上映が)終わったというんです。来るはずの監督がたまたま来なかったらしく、昨日上映したと(笑)。

-到着前に上映が終わっていたんですか?
SABU:本当に終わっていました。その時、同じく『眠る男』が招待されていた小栗康平監督を探したけれど、先に上映されたので怒って帰った後でした。「マジすか」みたいな感じ(笑)。上映もないからさんざん遊んでいました。それでもコンペティション作品だから、(賞が)もらえるかもしれないと思っていたのに、事務局の人が来て「プレゼンテーター」だって言うんです。「違う、違う。(賞を)もらいに来たほう」って言っているのに「プレゼンテーターだ」と言いきっている。よく見たら、コンペのほうじゃなくて特別招待作品で出品されていたんです。十何年前ですけど、新人監督で、金髪の日本人がプレゼンテーターで大丈夫なのかな?と思いつつ、東京ドームみたいなところでグランプリ発表しました。チャラチャラした俺が、ハサミで切って、発表するんですよ。切って開けたら「Sleeping Man」…小栗康平監督の『眠る男』がグランプリでした。

-小栗監督はいらっしゃらなかったんですよね?
SABU:トロフィーを持って帰れと言われました(笑)宅急便で送ってくれって言いましたけどね。強烈でしたね。その映画祭は一回だけの開催で終わりました。

東京フィルメックスは毎年楽しみにしているイベント。子どもの頃の花火大会のように。

-東京フィルメックスの会場でSABU監督を良くお見かけしますが、SABU監督にとって、東京フィルメックスはどのような映画祭ですか?
SABU:もともと林加奈子さん(東京フィルメックスディレクター)は『弾丸ランナー』の時からお世話になっていました。それから市山尚三さん(東京フィルメックスプログラムディレクター)と、(選ぶ作品に)信用できるお二人なので、楽しみです。毎年、楽しみにしているイベントっていうのが子どもの頃から花火大会くらいしかなかったんで…。大人になってからこういう楽しみができて嬉しいです。

-東京フィルメックスは今年13回目を迎えます。
SABU:これだけ続けられること自体もすごいですね。(東京フィルメックスは)観られなくなった光景がここで観られる貴重な期間です。海外のどこに行っても、街そのものがどこか似ている。建物のつくり方も、中に入っているブランドも、かかっている映画も一緒。映画には昔っから独特な空気があったでしょ。ミニシアターで観ていた、そこでしか観られない「特別感」というか、なにか分かち合っているような。そういう独特な空気がなくなっていくなか、東京フィルメックスはもう一回、空気を分かち合える人たちと一緒に観られるって言うのが楽しみですね。もちろん新しいお客さんもどんどん来て欲しいですけど。

「おごって~」鬼才ヤン・イクチュン監督との出会いは東京フィルメックスで。
―共有する空気の中で生まれる、東京フィルメックスでの出会いも数多くあると思いますが
SABU:ああ。それはまさに、寺島(進)さん。寡黙な男の話を考えていた時に、東京フィルメックスに寺島さんが来られていて。そのときに「寺島さんを主役で書くんで」って話をしました。そこで出来上がった『幸福の鐘』が東京フィルメックスで上映できてよかったです(第三回 特別招待作品として上映)。他にも、NEWSの加藤(シゲアキ)君は、映画好きで、東京フィルメックスの話をしてから来ています。東京フィルメックスでの出会いは多いですよね。キム・ギドク監督とか。それから東京フィルメックスで観たヤン・イクチュン監督の『息もできない』。あれは面白かったですね。イクチュンは(役柄では)怖い感じだったのに、パーティで会ったらいきなり『ポストマン・ブルース!!!』って寄ってきて。「おごってー」って言うの。そればっかり連発して、なんだこれって(笑)。東京フィルメックスの後、『息も出来ない』が公開される時に、雑誌の対談でヤン・イクチュンから指名されて新宿のゴールデン街の狭い二階で対談をしましたよ(笑)

会期中にロケハン。観なきゃいけない作品を観て、それで自分も撮影に入るっていうのは新しい。
―東京フィルメックスを通して、新しい企画が生まれたり、アイデアが発展したことはありますか?
SABU:影響は受けていると思います。今回も12月に撮影があって、(東京フィルメックスの)期間中にロケハンしなきゃいければならないんですよ。映画祭が終わって、すぐ撮影に入るんですけど。観なきゃいけない作品を観て、それで自分も撮影に入るっていうのは新しい。勉強してからのぞむっていうか。低予算なんですけど、その分、久しぶりに、やりたいことをやるって感じなんです。書いた本がどんどん面白くなってしまって。「ヤバい」ってくらい、面白くなりました。初の女の子が主役です。楽しみにしてください。

映画は知恵でつくるもの。予算がないところから「走る」というワンアイデアが生まれてきた。
―新作というだけで楽しみですが、それが低予算の映画と聞くとより期待が高まります。SABU監督の感じる低予算の魅力はなんでしょう?
SABU:もともと『弾丸ランナー』をつくったときが、原点ですね。周りのプロデューサーが「予算がない、予算がない」って言っていたけれど、(映画は)アイデアというか、知恵でつくるものだとずっと思っています。(予算がないところから)ワイヤーアクションじゃなくて、「走る」っていうワンアイデアが生まれてきた。今はCGや、合成で全部観せられるようになったけれど、昔はカットとカットの間で想像をさせるアイデアとか工夫があった。そんなアナログ的なことが面白い。低予算だと「もっと面白くするには、どうしたらいいか?」と普段より考えます。だから普段より楽しいですよ。どんどんアナログ化していっているけれど、それが面白い。


-オリジナル作品が少なくなっている中、楽しみな作品になりそうですね。

SABU:これからは原作を書こうと思っています。自分がやりたいことをよりできるかなと思って。その小説を映画化したいと。手加減せずに書いているから、若干、お金もかかりそう。でもね(先に原作を)書いていたら、面白い。かえっていいですよ。自由だし、一番妥協してない。もちろん映画になると音楽が入ったり、いろんな役者さんが動きだしたりするんで、思っていた以上のところもあるし、そうじゃなかったところもあるけれど。原作の段階が一番自分の中ではパーフェクトっていう形にはなってますね。

―映画監督が作った原作であれば、オリジナル作品として観ることができますね。
SABU:完全にオリジナルですから。原作ものじゃないとなかなか企画が通らないとか、オリジナルは通らないって去年は言っていましたが、言い訳だなと。面白い本だったら、絶対通るはずです。そこが書けてないだけの話で。やっぱり原作ものは手を抜いてない。それなりの時間がかかったものですからね。だから結局は、ちゃんとやって、本気で面白いものが勝つっていうところは、昔も今も変わらないんです。

―正々堂々と勝負するというか。
SABU:そうですね。もともと役者あがりで。なんていうか、自由な立場にいたんで。「いいな」って、うらやましがられるくらい自由なことをやってきています。あんまり形にはめたりせずにやっていけたらなと。例えばアニメしか客が入らないっていうならアニメを作っていくし。原作ありきでもそう。楽しければ問題ない。

「審査委員長なんでしょうがないんですよ」っていいながら、全部観られるのが嬉しい。
-東京フィルメックスで審査委員長として期待されていることはなんでしょうか?
SABU:まず俺を呼んだところがカッコイイですよね。フィルメックスは。根性あるっていうか。僕の中学校の修学旅行は、ヤンキーたちが委員長になって、旗持って先頭を歩くっていうのが流行っていたんです。そのとき委員長だったんです。力づくでね(笑)。当時の先生が一言「副委員長はもっとちゃんとした人に」って。それ以来の委員長だもの。だからね、俺以外はちゃんとした人になってる。僕は黙ってるようにします。本当に価値を下げないようにしないと。

―SABU監督自身が東京フィルメックスに期待されることはなんでしょうか
SABU:もちろん、映画です。(コンペを)全部観なきゃいけないという責任感と、観られるっていう嬉しさと両方なので。毎年来ているからって、全部片っぱしから観るわけにいかないでしょう? あんまり来すぎるのも、ちょっと恥ずかしいし。今年は「審査委員長なんでしょうがないんですよ」っていいながら、全部観られるのが嬉しい。コンペティション作品以外の特別招待作品ももちろん、(特集上映の)木下惠介監督作品も面白そうですし。ここでしか観られないので楽しみ満載って感じです。


恒例の靴チェック!
NYブランド「アルド(ALDO)」のスニーカー。かかと部分にずらっと安全ピンで飾られた粋な男前デザインはSABU監督にぴったり

 

13 東京フィルメックス情報
期間 2012年11月23日(金)~12月2日(日)
会場 有楽町朝日ホール 他
主催 特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
「第13回 東京フィルメックス」公式サイト
※会場が異なる上映もございます。詳細は上記の公式サイトをご参照ください。

取材・編集・文:白玉 編集協力:市川はるひ スチール撮影:荒木理臣

 

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