アンソニー・ホプキンスが恋人、真田広之と問う“自分の居場所”とは?-『最終目的地』

  • 2012年10月07日更新

『眺めのいい部屋』『モーリス』など名作を生み出してきたジェームズ・アイヴォリーの最新作。南米、ウルグアイ。作家ユルス・グントは著作を一作だけ残しピストル自殺をした。妻、そして作家の愛人と娘、作家の兄とその恋人は作家が亡くなってなお、自殺した地で奇妙に結ばれながら暮らしをしている。作家の伝記を書くため、一度は断れた公認をなんとか取り付けようと大学教員がアメリカから訊ねてくるが、家族の反応はそれぞれで… 作家の兄にアンソニー・ホプキンス、その恋人に真田広之、作家の愛人にはシャルロット・ゲンズブール、作家の妻にはローラ・リニー。80歳を超えたジェームス・アイヴォリー監督の描く重厚で艶のある文芸絵巻をたっぷりと。

“世界には私たちだけだと思い始めていた” 未亡人、愛人、兄とその恋人。作家亡き後、行き場の失った人々の奇妙な共同生活。

大学教員のオマー・ラザギはラテンアメリカの作家ユルス・グンドの伝記を執筆するための許可を、遺産相続人に求めるが、許可は降りなかった。遺産相続人は作家の妻であるキャロライン、作家の愛人であるアーデン、作家の兄であるアダムの三人。三人はウルグアイの人里離れた“オチョ・リオス”という場所にアーデンの娘とアダムの恋人とひっそりと暮らしている。恋人にたきつけられ、オマーは遺産相続人のもとに赴き、伝記の許可を直接申しこもうと試みる。自殺してしまった作家を想い、その場所から離れることが出来ない未亡人と愛人。密やかに青年との恋を続けるためにこの地に籠る老いた兄。外界に触れることもなく、どこかに行くこともなく、ただ時が過ぎるのを待っているような“オチョ・リオス”の住人達。オマーの申し出に、妻のキャロラインは『(伝記執筆は)遺体を掘り起こすような作業』と頑なに公認を拒むが、愛人アーデンや、兄アダムの考えはキャロラインとは違うものだった。

「理由などないわ、私は不合理な人間なの」気高い女の不条理な諦め

“オチョ・リオス”の人々の中でも注目は妻キャロライン。彼女の中には作家を愛する心と、夫の裏切りの結果である愛人アーデンを受け入れなければならなかった気持ちが微妙なバランスで保たれている。そんな時に現れるオマーの存在。知られたくない作家の過去を掘り出し、自分の思いをかき乱そうとするオマーにいら立つキャロラインの言葉が見どころ。行間にある複雑で未分化な感情の膨らみをずっしり感じ、文芸作品を味わっているかのような感覚に陥る。キャロラインを演じるのはオスカーに3度ノミネートされたアメリカ実力派女優ローラ・リニー。鉄のような頑強な個性と今にもほころびそうなもろさを併せ持った演技を味わっていただきたい。

「ここにいていいの?」異国だからこそ生まれるシンプルな問いかけ

ウルグアイを舞台にした作品ではあるが、主要登場人物は異国からやってきた異邦人ばかり。作家と作家の兄アダムはドイツから難民として南米に渡り、愛人アーデンはスペインから、アダムの恋人ピートは日本の徳之島から南米に辿りついた。ジェームズ・アイヴォリー作品にある「国籍喪失者」を描く作風がこの作品にも色濃く表れている。異邦人だからこそ、縛られず自由に生きることを許されている登場人物。「ここが本当に自分の居場所なのか」と投げかける問いはどのように動くのだろうか?80歳を超えたアイヴォリー監督の「ここにいてもいいのか?」という投げかけに注目だ。

 

 

『最終目的地』作品・上映情報

2009年/アメリカ映画/117分

原題「The City of Your Final Destination」
監督:ジェームズ・アイヴォリー
脚本:ルース・プラワー・ジャブヴァーラ
原作:ピーター・キャメロン
撮影:ハビエル・アギーレサロベ
音楽:ホルヘ・ドレクスレル
出演:アンソニー・ホプキンス、ローラ・リニー、シャルロット・ゲンズブール、オマー・メトワリー、真田広之
提供・配給:ツイン
配給協力・宣伝:太秦
協力:パラマウント ジャパン
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『最終目的地』公式サイト

10月6日(土)よりシネマート新宿にてロードショー

他全国順次ロードショー

文:白玉

 

  • 2012年10月07日更新

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