【実践映画塾 シネマ☆インパクト】実践映画塾からシネマ☆インパクトから生まれた、とんでもなく粋のいい映画5本。

  • 2012年09月01日更新

 山本政志がプロデュースするシネマ☆インパクトの現場を取材してきて、ここは「映画を習う」というより「映画になる」場所だと感じていた。

 振り返ってみて、学校の授業で役に立ったことがどれだけあるだろうか。学校の収穫といえば、友達だったりサークル活動だったり、学校に反抗した思い出だったり、そんなもののような気がしないか。

 それでもなお、人は学校に入って何かを得ようと期待してしまう。そんなボンヤリした気分に、シネマ☆インパクトは喝を入れるのだ。

『2.11』
監督:大森立嗣

5本の短編には、今を生きてる人の顔がある。

 シネマ☆インパクトの活動の詳細は、本サイトの特集ページを見てほしい。このプロジェクトは2012年1月末に開講してから矢継ぎ早に、2週間に1度の割合で映画を撮ってきた(撮影期間は2、3日。それまではその準備といえるエチュードやリハーサル)。その心身ともに酷使する無茶苦茶な活動の成果は、かなり面白いものになっていた。

 大森立嗣の『2.11』、瀬々敬久の『この森を抜ければ』、鈴木卓爾の『ポッポー町の人々』、深作健太の『胸が痛い』、山本政志の『アルクニ物語』の5本は、あまり演技経験、制作経験のないシネマ☆インパクト受講生をいきなり実践の場に立たせて撮った作品だ。

 だから、見たことのない顔だらけ。でも、その顔が気になる。

 二十代から七十代まで、いろいろな場所で生活を営んでいる出演者たちは、これこそ、2012年に生きる人たちの顔の代表だと思える。

『この森を抜ければ』
監督:瀬々敬久

撮影期間2、3日、低予算、慣れない俳優たち、制約の中で5人の監督の手腕が映える。

 演技の巧さには期待できない。撮影はたった2日。予算も少ない。しかし、それこそ、監督の才能の見せどころではないか。

 講座初日の自己紹介とその後のエチュードから台本を書き、短い時間の中で、新人俳優たちのたどたどしく光る部分を、瞬時に見つけ、作品に生かしていく。

 ほぼ、参加者全員が出演させるという制約によって5本はほぼ群像劇である(深作監督作だけひと組の男と女の物語)。事前に出演できない人もいる、と断りがしてあったが、監督たちは皆、ほぼ全員に見せ場を作っていた。そこもまた監督たちの包容力が試されることになる。全員の良いところを使いながら、作品を成立させるってなかなかヘヴィーだと思うのだが、参加監督たち、強ええ。

『ポッポー町の人々』
監督:鈴木卓爾

共通点は、三叉路、坂道。それ以外は5人5様の世界が広がる。

『2.11』は、謎の集団と彼らによって突如ビルを占拠された人々の破壊と祝祭の様がクレージー。『この森を通り抜ければ』は、放射能が風に乗ってやってくる直前、ある町の人々の思いや行動。俳優が自己紹介で発表した詩が効果的に使われている。『ポッポー町の人々』は大震災の1年後の設定で、日比谷のデモに参加して撮った画が印象的。『胸が痛い』は、ダメな男女のダメなんだけど後を引く愛の物語。『アルクニ物語』は、閉ざされた空間の中の人間の営みを強烈な腕力で描く。いまおかしんじ監督が俳優として参加しているのも見どころのひとつ。

 5作は、5人の監督の個性で、全く違ったテイストではあるが、早稲田、雑司ヶ谷界隈をロケ場所にしているところが共通点。

 三叉路と急な坂道だけは必ず入れるという決まりを作ったそうで、その場所は、各作品を繋いでいる。

 Yになった三叉路は、行く道に迷う現代を表しているみたいだし、急な坂道はしんどい現実を表しているみたいな気もしてしまう。

『胸が痛い』
監督:深作健太

描きたいことを描く。その気迫に圧倒される。

 映画のチラシにあった大森監督の「誰にも望まれてない映画を作る覚悟を自分自身に、そして参加者に問いました」という言葉にガツンとやられた。

 受講生はお金払って、すごく過酷な体験を買っているとも言える。この映画の宣伝活動も手分けしてやっているのだ。作品の中で裸をさらけ出している人たちもいる。それを拒んで、受講を辞めさせられた人もいるとか。大震災のこと原発のことにも斬り込んで。誰にも何も言わせない、描きたいことを描く、そういった気迫のある作品群だ。

 迷ってもしんどくても、たった2週間で映画という行動を続けることが、どれだけエネルギーになることか。それを見せつけられる映画たちだ。

『アルクニ物語』
監督:山本政志

▼「シネマ☆インパクト第一期」作品・公開情報
『2.11』(2012年/日本/カラー/29分)
監督:大森立嗣 
『この森を通り抜ければ』(2012年/日本/50分)
監督:瀬々敬久
『ポッポー町の人々』(2012年/日本/86分)
監督:鈴木卓爾
『胸が痛い』(2012年/日本/40分)
監督:深作健太
『アルクニ物語』(2012年/日本/35分)
監督:山本政志
製作:シネマ☆インパクト
コピーライト:(C)シネマ☆インパクト
「シネマ☆インパクト」公式サイト
※オーディトリウム渋谷にて9月1日(土)~14日(金)ロードショー。

文:木俣冬


  • 2012年09月01日更新

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