『ハーフ・デイズ』 - コインに委ねた1日の運命。NYの恋人同士がパラレルワールドを走り抜ける!

  • 2012年08月05日更新

NYの街を2つの運命が同時に駆け抜ける

 7月4日の独立記念日。人生の岐路に立つ恋人同士のボビーとケイトはブルックリン・ブリッジの上でコインを投げ、お互い反対方向に走り出す。その先に待つのは全く異なるパラレルワールド。ブルックリンとマンハッタンでどんな“ふたつの1日(ハーフ・デイズ)”が始まるのか。『インセプション』『ダークナイト ライジング』のジョセフ・ゴードン=レヴィット、『ジョン・カーター』のリン・コリンズという旬なキャストを起用した疾走感溢れるドラマが、NYの2つの地区で同時に展開。そのシチュエーションの面白さと、独得のスピード感に魅せられる。

スリリングな1日と平穏な1日

 1日の運命をコインに委ねた2人は、それぞれが向かった先で別のボビーとケイトに遭遇する。舞台となるのは、マンハッタンのチャイナタウンとブルックリンのケイトの実家。マンハッタンでは、タクシーの中で携帯電話を拾ったことで殺人を目撃し、犯人からも執拗に追われることになる。ブルックリンではホームパーティーの最中、家族とのもどかしい関係など、誰もが経験するような問題が浮かび上がる。

 殺人犯に追われるというスリルに満ちた時間は、恐怖を感じながらも、まさに生きているという感覚を味わう瞬間かもしれない。片や家族に囲まれた穏やかな日常の中にいるはずなのに、感情の行き違いが露呈し心の霧は晴れない。平凡な日常を送っていると非凡な人生に憧れ、非凡な生活が続くと平凡が恋しくなる。

オーディションで選出されたブレイク前の俳優たち

 2009年製作の本作。ブレイク前のジョセフとリンがオーディションを受けて、主役の座をつかんだ。セリフのほとんどない脚本を渡され、ほぼ全編がNYの街中での即興演技だったというが、その緊張感はなかなかのもの。勢いのある2人の演技はとても自然でリアルだ。

不確実性に満ちた人生もまた楽しい

 人は運命の分かれ道に立つたびにコインを投げる。事件に巻き込まれるか、愛する家族と平穏に過ごすかはその結果次第。何も変わらないようでいて、何が起こってもおかしくない人生は、不安と楽しさと意外性に満ちている。

 原題の『Uncertainty』が示す通り、この世のすべてが不確かで、選択に正解はないのだろう。この主人公たちのように、選んだ道の先にある未来を進むしかない。

▼『ハーフ・デイズ』作品・上映情報
2009年/アメリカ/カラー/101分/デジタル上映
監督・脚本・製作:スコット・マクギー、デヴィッド・シーゲル
撮影:レイン・リー
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、リン・コリンズ、アサンプタ・セルナ
配給:アット エンタテインメント
コピーライト:©2009 Uncertain Partners LLC
『ハーフ・デイズ』公式サイト
※8/4よりシアターN渋谷、ほかにて公開!

文:吉永くま


  • 2012年08月05日更新

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