『トガニ 幼き瞳の告発』 — 息詰まるほどの残酷な真実。1本の映画が国家をも動かした、衝撃の韓国映画が日本公開。

  • 2012年08月05日更新

1本の映画が投げかけた衝撃の真実。韓国中が怒りに震えた!

 本作は韓国の聴覚障害者学校で告発された、信じがたい真実の事件を描いた映画である—。
2000年から約6年にわたり、校長や教員らが複数の生徒に性的虐待を行なっていた。事件は2005年に発覚するも、加害者は法の抜け穴を味方につけ教壇に立ち続ける。事実を知り立ち上がった、韓国の人気作家コン・ジヨンは、本国のポータルサイトで半年間にわたる連載の末、小説「トガニ」として2009年に単行本を発行。たちまち激しい世論を巻き起こし、大ベストセラーとなった。更には、小説に衝撃を受けた俳優のコン・ユが映画化を熱望。そのあまりにショッキングな内容から韓国で公開されるや460万人以上を動員、多くの人々が不条理な司法制度を批判し、ついには「トガニ法」という新たな法律が誕生した。それは、1本の映画がまさに国家を動かした瞬間だった。

もの言えぬ子どもたちの叫びが、一人の教師の人生を変える。

 恩師の紹介で聴覚障害者学校に赴任することになった美術教師カン・イノ(コン・ユ)は、ある放課後、トイレから聞こえてくる子どもの叫び声を耳にする。慌てて様子を見に行こうとするが、なぜか学園専属の警備員に制止されてしまう。釈然としないイノ。この学園は何かがおかしい……。しかし数日後、決定的な現場を目撃する。寮の指導教員が女子生徒の頭を洗濯機の中に押し込んでいたのだ。ぐったりする少女を慌てて病院に連れて行くが、そこで少女はイノに学園で起きている性的虐待の事実を告げる。自身も幼い娘を持つ彼は、大きな衝撃と憤りを感じこの真実を告発することを決意する。しかし、それはイノと被害者である生徒たちにとって大きな苦難と葛藤の始まりだった……。

子役たちの熱演に思わず、怒りの涙がこみ上げる……。

 主役のイノを演じたのはドラマ『コーヒープリンス1号店』で日本でも人気を博したコン・ユ。本作では爽やかな笑顔を封印し、自身の脆弱さと葛藤する教師役を演じているが、子どもたちの希望を信じようとするまっすぐな瞳が観る者の心を揺さぶる。そして驚きを通り越しショックすら受けたのは、被害者となる聴覚障害者を演じた子役たちである。痛々しすぎる虐待シーンや、もの言えぬゆえに感情を伝え切れないもどかしさを、ベテラン俳優たちを凌駕する表現力でみごとに演じている。この衝撃的な脚本が彼らのトラウマにならないかと、本気で心配になるほどだ。

トガニ=坩堝(るつぼ)というタイトルに込められた、想像を超える恐怖から目を背けないで。

 作品資料によれば「トガニ」とは“坩堝(るつぼ)”を意味するそうである。本来、坩堝とは高温処理をおこなう耐熱式の容器のこと。出口のない密閉された空間で、ジリジリと焼かれる想像を超えた恐怖と痛み。本作は子どもたちにとってまさにそんな地獄を描いた作品であり、息詰まる法廷劇の行方からも目が離せない、告発サスペンスである。そしてまた、さまざまな利害関係に屈せず良心を貫くことができるのか、大人ならば自身の胸に手を当てざるを得ない辛辣な問題提起を含んでいる作品でもあるのだ。

▼『トガニ 幼き瞳の告発』作品・上映情報
原題:DOGANI
2011/韓国/125分
監督:ファン・ドンヒョク
原作:コン・ジヨン(『トガニ 幼き瞳の告発』蓮池 薫/訳 新潮社刊)
出演:コン・ユ、チョン・ユミ、キム・ヒョンス、チョン・インソ、ペク・スンファンほか
R18指定
配給:CJ Entertainment Japan
コピーライト:©2011 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED
『トガニ』公式ホームページ
※8月4日(土)よりシネマライズ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

文:min


  • 2012年08月05日更新

トラックバックURL:https://mini-theater.com/2012/08/05/dogani/trackback/