『ケイト・レディが完璧(パーフェクト)な理由(ワケ)』―「サラ・ジェシカ・パーカー+キャリア・ウーマン=スタイリッシュ」かと思いきや……?

  • 2012年06月07日更新

一見、「パーフェクト」なケイト・レディの実情は……?

 サラ・ジェシカ・パーカー演じる主人公が、仕事に、子育てに、(もしかしたら)恋に奔走するコメディ『ケイト・レディが完璧(パーフェクト)な理由(ワケ)』が、2012年6月2日(土)より、シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。『セックス・アンド・ザ・シティ』やアメリカのロマンティック・コメディのファンなら、アンテナがびくんっと反応せずにはいられない設定だろう。

 しかし、サラが演じる一見「パーフェクト」なケイト・レディは、実はまったく格好よくなくて、仕事にも家庭にも「いっぱいいっぱい」になっているのである。

 舞台はボストン ― ケイト・レディ(サラ・ジェシカ・パーカー)は投資会社のファンド・マネージャーとして、出張だ会議だプレゼンだ、と仕事に忙殺される毎日を送っている。家に帰れば、愛する夫のリチャード(グレッグ・キニア)と、かわいい子どもたち ― 6歳のエミリー(エマ・レイン・ライル)と、幼いベン(セオドア&ジュリアス・ゴールドバーグ) ― が待っている。「仕事にもプライベートにも、充足感と幸せを覚えている」と彼女は実感しているはずだった。あるとき、ニューヨーク本社の責任者ジャック・アベルハンマー(ピアース・ブロスナン)に高い評価を受けたケイト・レディは、彼と組んで重要な案件に取り組むことになる。これまで以上に出張が増えて忙しくなったことにより、家族と接する時間も更に少なくなってきて……。

女性が男性と肩を並べて働いているように見えるアメリカでも、「このテーマ」がいまだ映画の題材になりうる現状。

 先進国において、「女性の社会進出」や「キャリア・ウーマン」という言葉は、既に死語だろうと見なしたくても、実際には、一部のコミュニティや表面的な場でしか「男女平等」は成り立っていないと実感している人は多いだろう。ケイト・レディがぼさぼさの髪で娘のかよっている学校へ行くと、プロポーションもファッションも抜群の「専業主婦」のママたちが、社交辞令を並べながらも彼女の髪へ蔑んだ視線を送る。子どもの用事を理由に会社に遅刻したケイト・レディは、「婦人科の検診を受けていた」と上司に嘘をつかざるをえない。ケイト・レディと女友達の会話に、「女が子どもを理由に仕事を休むと疎まれて、男が同じ理由で休むと賞賛される」といったような台詞が出てくる。ケイト・レディは姑に、「私たちの時代は、女性は家庭を守ったものだわ」という感じに嫌味を言われる。日本でもよく見かけたり体験したりする光景だが、「発展しているように見えるアメリカでも、こういうテーマがまだ映画の題材になりえてしまうのか」と、驚きのため息を漏らさざるをえない。

大口をあけて笑って、魅力的なキャストの笑顔にうっとりしたはずなのに、心の片隅に残る「現実」。

 本作はコメディなので、「やろうと思えば、いくらでも深刻に考えられるテーマ」も、明るくポップに描かれている。ピアース・ブロスナンが演じる、フェロモンむんむんの「独身男」ジャックが、ケイト・レディを「女」として見て……、というお約束のロマンス要素もばっちりとある。大口をあけて笑って、ピアース・ブロスナンやグレッグ・キニアの笑顔にうっとりして、サラ・ジェシカ・パーカーの服や靴を目で楽しんで ― 気軽に見られる都会的なコメディだが、笑いと幸福感に浸ってエンドロールを迎えたはずの心の片隅に、「女性が仕事と家庭を両立するための問題」が確実に残る。本作に共感する女性はもちろん、本作をご覧になった男性にも、「あなたの周りにもいるはずの、働く女性」のことを、映画のあとにお茶を飲んでいるあいだだけでもよいから、具体的に思いだしていただきたくなる。

▼『ケイト・レディが完璧(パーフェクト)な理由(ワケ)』作品・公開情報
製作年度2011/制作国 アメリカ/ 本編尺 90分
原題:I Don’t Know How She Does It
出演:サラ・ジェシカ・パーカー 『セックス・アンド・ザ・シティ』
ピアース・ブロスナン 『ゴーストライター』
グレッグ・キニア 『グリーン・ゾーン』
クリスティナ・ヘンドリックス 『ドライヴ』
監督:ダグラス・マクグラス 『Emma エマ』  
脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ 『プラダを着た悪魔』
原作:アリソン ピアソン 「ケイト・レディは負け犬じゃない」
画像コピーライト:(C)2011 IDK USA, LLC. All Rights Reserved.
『ケイト・レディが完璧(パーフェクト)な理由(ワケ)』公式サイト
※6月2日(土)より、シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー!

文:香ん乃


  • 2012年06月07日更新

トラックバックURL:https://mini-theater.com/2012/06/07/kate/trackback/