「GEIDAI ANIMATION 03 TALK 東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻第三期生修了制作展」―次世代を担う旗手たちの作品が、渋谷にやってくる。

  • 2012年03月13日更新

技術と個性を磨いた学生監督たちの集大成。

 これからのアニメーション業界を担う旗手たちの作品が、渋谷にやってくる ― 東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の第三期生たちによる修了制作展が、”GEIDAI ANIMATION 03 TALK”と題して開催される。2012年3月17日(土)~23日(金)、会場は東京・渋谷のユーロスペースだ。

 藝大大学院の映像研究科は、学部を持たない独立研究科として2005年に開設された。アニメーション専攻が設置されたのは2008年。国立大学では初の、アニメーションに特化した専攻だ。「つくる」ことを主体としたカリキュラムのもと、次世代のリーダーを目指す学生たちが、革新的なアニメーション表現を学んでいる。

「楽しい」・「せつない」・「美しい」 ― エンターテインメント性が感じられる6作品をピックアップ。

“GEIDAI ANIMATION 03 TALK”は、技術と個性を磨いた学生監督たちの集大成。展名にこめられているのは、「作品を通じて、作り手である監督達と”TALK”をするような感覚をいだいてほしい」という思いだ。上映される全14作の短編アニメーションの中から、「楽しい」・「せつない」・「美しい」といったエンターテインメント性が強く感じられる6作品をピックアップしてご紹介する。

『トマトコンフィ』
“Tomato confit”
監督:山北麻由子
音楽:ユンヨハン
サウンドデザイン:滝野ますみ
(C)2012 山北麻由子/東京藝術大学
(5分11秒)

 ある朝、目覚めたら、頭がトマトになっていた!? ― 赤面症の兄が、究極の災難に見舞われた。しかし、それを見た弟は、さほど動じずにマイペース。兄弟の距離感が絶妙で、「心地よい関係だなぁ」と羨ましくなること、しきり。トマトソースでもトマトペーストでもなく、「トマトコンフィ」であることに、「なんて粋!」と拍手したくなる。

『櫻本箒製作所』
“The Sakuramoto broom workshop”
監督:告畑綾
音楽:木本圭祐
サウンドデザイン:崔雄
(C)2012 告畑綾/東京藝術大学
(9分16秒)

 長年、箒作りを生業に暮らしてきた老夫婦。いつものように向きあって、いつものようにそれぞれの作業をしていたとき、夫は妻のある「変化」に気づいた ― わずか10分弱の映像の中に、この夫婦がふたりで培ってきた人生と信頼関係、なにより「想い」が、あふれんばかりに見える。胸の芯を指先で強かにつままれるような、せつなくて静謐な物語。

『浮世床』
“Ukiyodoko”
監督:唐澤和也
音楽:比良彩那
サウンドデザイン:鈴木勝貴
(C)2012 唐澤和也/東京藝術大学
(8分)

「歌舞伎座で別嬪に出逢って……」と、のろけ話を始める男。仲間たちは身を乗りだして話に耳を傾けるが ― 落語『浮世床』の『夢の逢瀬』を原作に、「不易流行」がテーマになっている。江戸時代が舞台かと思いきや、巧みな手法でテンポよく「現代」が交錯する。声をあげて笑いながら、「昔も今も、人の性質は変わらないのだ」としみじみ実感する瞬間は愉悦。

『Look at Me!』
“Look at Me!”
監督:飯田千里
音楽監督:香取良彦
音楽:宗近智美
サウンドデザイン:高橋郁美
(C)2012 飯田千里/東京藝術大学
(5分35秒)

 遊園地で、持ち主にうっかり落とされてしまったクマのキーホルダー。しかし、バッグに自分をつけてくれていた少女は、園内で新しいキーホルダーを買って ― このままCMやプロモーション・ビデオに使われても不思議でないほど、ポップかつヴィヴィッドで爽快感のある作品。キュートで温かいラストには、思わず涙腺がゆるむ。

『開かれた遊び、忘れる眼』
“Open Play, Forgetting Eye”
監督:ALIMO
音楽:羽深由理
音響効果:関根鈴花
(C)2012 ALIMO/東京藝術大学
(8分39秒)

 シュルレアリストが1925年に考えだした言葉遊びの一種「甘美な死骸」が核になっている、前衛的な作品。次から次へと流れるように描かれる絵と、その絵があるがまま音になったかのようなヴィオラの旋律 ― 絵と音のマリアージュが、瞠目するほど美しい。音楽と映像の相性というものについて考えさせられ、その素晴らしい成功例をここに見たと気づく。

『xx』
“xx”
監督:モリシタトヨミ
音楽・音響:對馬樹
(C)2012 モリシタトヨミ/東京藝術大学
(7分50秒)

「xx」は、女性を形作る染色体。こどもからおとなへと成長せざるをえない少女の動揺や恐怖が、暗喩的なモチーフで描かれている。「赤」が象徴的かつ鮮烈に使われている映像の中には、愛らしい少女たちによる酷なシーンもあるが、それが見たままの意味ではなく、女性特有のどのような「変化」を表しているかは、おのずと想像がつくだろう。「こどもであること」を捨てなければならなかったときの葛藤が蘇り、「おとなであること」の概念についても考えさせられる。

▼「GEIDAI ANIMATION 03 TALK 東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻第三期生修了制作展」東京会場・開催情報
日時:2012年3月17日(土)~23日(金) 各日21:00よりレイトショー
会場:ユーロスペース
料金:当日900円/前売800円
主催:東京藝術大学大学院映像研究科
協力:横浜市文化観光局
「GEIDAI ANIMATION 03 TALK 東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻第三期生修了制作展」公式サイト
※上映スケジュール、関連イベント等の詳細は、上記の公式サイトをご参照ください。

文:香ん乃


  • 2012年03月13日更新

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