『タンタンと私』— 世界中を魅了するコミック「タンタン・シリーズ」に隠された真実と、作者エルジェに迫るドキュメンタリー

  • 2012年02月20日更新

世界中で愛されるタンタン・シリーズ、その隠された真実。

 2012年2月4日(土)に公開された『タンタンと私』が好評を呼んでいる。世界中で愛されているキャラクター“タンタン”は、きっと多くの方がご存知だろう。くるっと立った前髪が最高にキマっていて、相棒の白い犬スノーウィと一緒に、チベットから南米、はては月世界まで冒険の旅に出かける正義感に溢れた少年記者。その誕生は1929年にまで溯るが、日本では80年代後半にファッション雑誌からブームに火が付き、一時は髪型を真似する男の子が急増。ポップな色使いのコミックは「お洒落!」と話題になった。恥ずかしながら、筆者も当時はフランス語版のコミックを買い、内容もそこそこに眺めまくっては「理想の男の子はタンタンです!」などと言っていたひとりだ……。そんなイメージと浅い知識だけで本作を観たものだから、そこに描かれた作者エルジェとタンタン・シリーズに隠された真実に驚愕することとなった。

作者エルジェの肉声が語る、知られざる苦悩を映画化。

 1971年、あるフランス人学生が、エルジェにインタビュー申し込む。しかし、エルジェ自身があまりにも深く自分を語りすぎたためだろう。このインタビューを記録したカセットテープは30年ものあいだ、人目につかない場所に保管されてきた—。熱狂的なタンタン・ファンで、エルジェの伝記映画を撮りたいと考えていたオステルガルド監督は、エルジェ財団との交渉の途中でこのテープの存在を知る。4日にもおよぶインタビューを記録したカセットテープは最悪の録音状態だったが、ノイズの間から聞こえるエルジェの声と、その隠された苦悩を耳にし、吹き替えではなく、絶対に肉声を使おうと決心してこの作品を制作した。

エルジェの心の叫びと、激動の20世紀が強く反映されたコミック。

 タンタンの作者エルジェ(本名ジョルジュ・レミ)は1907年ベルギー・ブリュッセル生まれ。少年時代はボーイスカウトに傾倒し、その頃から絵を描きはじめる。1928年には新聞の子供向け増刊号『プチ20世紀』のチーフ・エディターに抜擢され、翌29年から同紙でタンタンの連載を開始すると、すぐに大人気となった。それ以後、タンタンとスノーウィは24話におよぶシリーズで痛快な冒険を繰り広げる。正義感が強く、世界中を飛び回るタンタンは、エルジェにとって理想の自分を反映した姿だった……。

 敬虔なクリスチャンであったエルジェは、常に強い道徳観で自分自身を追い詰めていく。ドイツ軍占領下で仕事を続けた時はナチスの協力者という批判を受け、また妻以外の女性と恋に落ちたことで激しい罪悪感にとらわれ苦しむ。本作では、そういったエルジェの苦悩や、激動の時代背景がどのようにタンタン・シリーズに反映されているかを紐解いていく。改めてタンタンが単なる子供向けのコミックでは無いことを知り、驚きが隠せない。ひとりの作家の人生と、20世紀の苦悶の歴史を映し出す濃厚なドキュメンタリーとして必見の作品だ。未見の人は映画館へ急ごう!

▼『タンタンと私』作品・上映情報
2003年/デンマーク、ベルギー、フランス、スイス、スウェーデン/75分
原題:Tintin et Moi
監督・脚本:アンダース・オステルガルド
プロデューサー:ピーター・ベック
出演:エルジェ(ジョルジュ・レミ)、ヌマ・サドゥール、マイケル・ファー、ハリー・トンプソン、アンディ・ウォーホル、ファニー・ロドウェル ほか
配給:アップリンク
コピーライト:(C)2011 Angel Production, Moulinsart
『タンタンと私』公式ホームページ
※2012年2月4日(土)から、渋谷アップリンク、新宿K’s cinema ほか全国順次公開中。

文:min 


  • 2012年02月20日更新

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