『婚前特急』前田弘二監督インタビュー ― ストーリーとキャラクター。前田監督の“刺さる”コメディとは?

  • 2011年04月26日更新

24歳のOLチエが5人の恋人たちを査定して“本当の相手”を見つける『婚前特急』。前田弘二監督が描くチエは高慢な女王様キャラでありながら、その一方で本音でぶつかってくる愛すべきキャラクター。魅力的なキャラクターを生み出す監督が愛してやまないコメディについて伺ってきました。元祖スクリューボールコメディから日本の盛りだくさんコメディまで大胆なストーリーと価値観をぶつけ合うキャラクターにあふれた前田監督コメディセレクションをたっぷりとお楽しみください。

 

大きくはみ出したストーリーと常識に囚われないキャラクター-前田監督の“刺さる”コメディとは?
5人の恋人を査定して本当の相手を探そうとする『婚前特急』。チエは高慢で嫌な女の子にとられてもおかしくない女性でありながら、自分の心に振り回され、自身を見失いながらも走り続ける愛すべきキャラクターだ。大胆なストーリーでありながら、描かれる心は繊細。突飛でめちゃくちゃだけど、生々しくてリアル。そんな『婚前特急』を生み出した前田弘二監督に心に”刺さる”コメディについて伺ってきました。前田セレクションのコメディは『婚前特急』同様、ぶつかり合うキャラクターとはみ出すように大胆なストーリーが魅力のコメディたち。ゆるぎない作家の愛情にあふれた極上コメディをチェックしよう。

最初から共感するようなキャラクターではなく、自分の価値観をぶつけられるようなキャラクターと枠からはみ出すストーリーのコメディに惹かれます(前田監督)
あらかじめ共感するように作りましたって言う感じが見えちゃうと僕は冷めちゃうんです。キャラクターを描くにあたり、普通こうだじゃなくて、その人なりの考え方、そういうものが見えると楽しいかなと。人はそれぞれに生きていると正しさがありますよね。正しさというか、自分の物差しみたいな、異なった価値観のようなもの。みんなの共通点をそこに収めましたって言う感じじゃなくて、異なったそれぞれの価値観をぶつけ合いたいんですね。
もう一つ、大胆なストーリーが好きですが、感情の描き方に鈍感にはしたくない。行動は大胆であったとしてもそうなる動機の感情はちゃんと描かないとだめ。スクリューボールコメディ―だとありえないことが起きますが、その大胆なストーリーにカサヴェステだったら感情がちゃんと丁寧に描かれていて生々しかったりする。感情の生々しさも大事にしたいし、その一方でリアリズムに縛られることなく大きく大胆に嘘をつきたいです。森崎東さんみたいに作品の中に色んなものをぶつけていきたいというもありますね。  

前田弘二のコメディはこれを見ろ!
赤ちゃん教育 [DVD]1.「赤ちゃん教育」(1938年 監督:ハワード・ホークス)
キャサリーン・ヘップバーンがむちゃくちゃなんです。スクリーンだったらもう常識から外れて欲しいなと思っていて。しっちゃかめっちゃかのほうが気持ち良いし。行動的なほうが面白い。行動っていうのは感情。感情が前に出ているから行動になる。そういうのは面白いなぁと思いますね。

ミニー&モスコウィッツ [DVD]2.ミニー&モスコウィッツ」(1971年 監督:ジョン・カサヴェテス)
全く合わない二人。応援したくなるキャラクターです。普通にすることでも(予想していない)結果を見せるので、型にはまっていない感じ。人はこうなきゃいけないとか、これが正しいんだとか、常識に縛られないなにかがあります。こっちの価値観を揺さぶってくれる感じがいい。そこが作家の愛情なんでしょう。

3. 「婚前特急」(2011年 監督:前田弘二)
『婚前特急』のチエを描くにあたり、なるべく素直にやろうと思いました。女性だからこうだっていう答えは出したくないですね。女はこうだみたいなことを決めちゃうと、そうとしか考えなくなる。それはただのパターンになってしまいますから。女性だからとこうだというようなことはなるべくやらないようにしています。

  

 

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前田弘二監督プロフィール
1978年鹿児島県種子島生まれ。三重県で美容師として2年半働いた後上京し、映画館でアルバイトするかたわら独学で自主映画制作を始める。05年、『女』『鵜野』がひろしま映像展2005においてグランプリと演技賞をダブル受賞。翌06年には『古奈子は男選びが悪い』が第10回水戸短編映像祭でグランプリを受賞する。年に73分の中編となるオリジナルビデオ作品『くりいむレモン 旅のおわり』を発表。09年にはドイツ・フランクフルトで開催されたヨーロッパ最大の日本映画祭「Nippon Connection2009」において、「Koji Maeda Special」と題された特集が組まれるなど、国内外でいま最も注目される若手監督のひとり。本作『婚前特急』は劇場公開作品デビュー作となる。

  ©2011『婚前特急』フィルム・パートナーズ

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取材・撮影・編集・文:白玉 

  • 2011年04月26日更新

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