『サラエボ、希望の街角』‐サラエボ内戦を経て未来に生きる監督のサラエボへの愛

  • 2011年02月26日更新

サラエボ、希望の街角/メインある日、恋人が突然、自分とまったく異なる価値観を持ってしまったら、あなたはどうするだろうか。、職を失い希望を失いかけた時、よりよい社会を作るための信仰に傾倒していく恋人。変貌していく恋人にどう向き合うか。サラエボ内戦を経て未来に生きようとするカップルの物語。『サラエボの花』でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したヤスミラ・ジュバニッチ監督の長編第2作。2月19日(土)より岩波ホールでほか全国順次ロードショー

  

彼を理解したい。受け入れられない悩み苦しみ
サラエボ、希望の街角/サブ1サラエボで同棲するルナとアマルは結婚を前提とした恋人同士。ルナは美しく、キャビンアテンダントとして空を飛びまわる快活な女性。空港の管制塔で働くアマルを心から愛しており、一刻も早く彼の子供を授かることを望んでいた。

そんなある日、アルコール依存症により勤務中の飲酒が発覚したアマルは6か月の休職と降格処分になってしまう。仕事を失って時間を持てあますアマルだったが、ある日、かつての戦友バフリヤと出会い彼から仕事を紹介されることに。バフリヤがイスラム原理主義の教徒であることが気がかりなルナは頑なに反対をするが、アマルはルナの懇願に耳を貸さずアパートを出て行ってしまう。

ルナの嫌な予感は的中した。仕事場はイスラム原理主義者が集まるコミューンだったのだ。そこでの生活にすっかり馴染み、宗教に傾倒していくアマル。彼との溝が深まるなか、彼を理解しようと歩み寄りながらも悩み苦しむルナ。
そんなある日、望み続けた妊娠を告げられる。そのとき彼女が最後に下した決断とは…。

 恋人とうまく付き合っていくには何が重要?
サラエボ、希望の街角/サブ4多くの人が一度は話題にしたことがあるテーマだろう。食事、仕事、お金、嗜好品、友人との付き合い方など、人それぞれに個性があり、優先順位が異なるのは当然。ピッタリと合う恋人が見つかればそれに越したことはないが、多くの場合は、ズレはあってもそれ以上の愛情と歩み寄りで成り立っているのではないだろうか。

ルナとアマルもお互いに愛し合い幸せに暮らしていたが、アマルの宗教観が一転したことで2人の関係に大きな変化が生まれてしまう。元をたどれば、内戦による辛い過去の影響が大きいのは明らかだ。アマルに歩み寄りの姿はなくなる。そんな中、辛い経験を抱えながらも、自分の進む道を見失わないルナがとても輝かしく見える。決して強い人間というわけではないが、前向きに、そして自分に正直に生きようとする姿に惹かれるのである。人生の分岐点で決断を迫られたとき、彼女の凛々しく澄み切った表情を観かえしたくなるだろう。

サラエボ、希望の街角/サブ3本作は、ヤスミラ・ジュバニッチ監督の長編第2作である。1作目の『サラエボの花』は、市民の心に残る戦争の痛々しい傷跡を母娘の葛藤を通して描き、2006年ベルリン国際映画祭金熊賞に輝いた。紛争の最中に多感な十代を過ごしたジュバニッチ監督だからこそ描ける傑作である。本作とあわせて監督のサラエボへの愛を体感してみてほしい。

 

 サラエボ、希望の街角/サブ2▼『サラエボ、希望の街角』
作品・公開情報
ボスニア・ヘルツェゴビナ、オーストリア、ドイツ、クロアチア合作映画/2010年/104分
監督・脚本:ヤスミラ・ジュバニッチ
出演:ズリンカ・ツヴィテシッチ、レオン・ルチェフ、ミリャナ・カラノヴィッチ
配給:アルバトロス・フィルム
© 2009 Deblokada / coop99 / Pola Pandora / Produkcija Živa
/ ZDF-Das kleine Fernsehspiel / ARTE
●『サラエボ、希望の街角』公式サイト
※2月19日(土)岩波ホールほか全国順次ロードショー!

文:那須ちづこ
改行

  • 2011年02月26日更新

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