『トイレット』

  • 2010年08月29日更新

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誰かと一緒においしいご飯を食べられること、ありのままの自分でよいと思えること、いつも一緒にいなくても心がつながっている家族がいること。『かもめ食堂』『めがね』の荻上直子監督の新作『トイレット』には、そんな素敵な幸せがぎゅっと詰まっている。

4年間引きこもりの長男モーリー、ロボットオタクの次男レイ、末っ子の生意気な大学生リサ。そして母親が生前日本から呼び寄せた祖母“ばーちゃん”。母親の葬儀の後に、4人と猫のセンセーとの共同生活が始まった。英語が全く話せないばーちゃんは、トイレが長く、出てくるたびにため息をつき、そしてまた自室に戻る。心の病を抱えたモーリーは母親が使っていたミシンを見つけて、ばーちゃんに手ほどきを受け、スカートを縫い始める。リサは自分を表現したいとエアギターのコンテストへの出場を決意。レイはばーちゃんがトイレの後につくため息の謎を探ろうとする。小さな出来事が次々と起こり、バラバラだった3兄妹と、そして、ばーちゃんとの心の絆が次第に深まっていく。

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全編英語の台詞の中で、聞き慣れた“ばーちゃん”という日本語の音が耳に優しく残り、あらためてこんなに素敵な言葉だったのか、と気付かされた。迷子になったばーちゃんを捜したり、餃子を一緒に作ったりするシーンなど、この家族をつなぐ愛情がほどよく、さりげなく描かれていて、心がほんわり温かくなる。

作品を引き締めているのは、荻上監督作品常連のばーちゃん役・もたいまさこの揺るぎない存在感。いつも不機嫌そうな顔をしているのに、時折見せる穏やかな表情に魅了される。また、前述の2作で監督とタッグを組んだフードコーディネーター・飯島奈美の家庭料理が何とも美味しそうで、思わずお腹がすいてきてしまう。(そして本作の個人的なおすすめはレイのインド人の同僚、アグニ。要注目。)

ばーちゃんは3人の孫たちの心のドアを叩いて、彼らが自分の足で歩き始めるきっかけを作ってあげたのだろう。言葉は通じないけれど、「そのままの自分でいいんだよ」とばーちゃんが心で語りかけてくれたことは、彼らにきっと伝わったに違いない。

無性に人に優しくしたくなり、無性に餃子が食べたくなった。
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モリオ 荻上直子監督初の小説集。『トイレット』原案となった「モリオ」他1編を収録。荻上監督の世界観をたっぷり堪能できます。

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《荻上直子監督、植村花菜さん登壇、舞台挨拶・フォトセッション・ライヴ》
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tiuemura2 2010年8月11日(水)、カナダ大使館にて映画『トイレット』のトーク&ライブ付きイベントが開催されました。荻上監督の舞台挨拶に加え、「トイレの神様」でブレイクしたシンガーソングライターの植村花菜さんが同曲を披露してくれました。こちらのイベントの様子を紹介します。

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植村花菜 映画「トイレット」について―
「素晴らしい映画。泣いたり笑ったり、監督の小粋なギャグみたいなのがちりばめられていて、心が温まる。家族っていいなと思える作品。みんな一生懸命生きていくうえで、心の葛藤とか上手く伝わらない歯がゆい気持ちとか“描かれていて”私も体験したことがあるので、すごく感情移入しながら見れた。」
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荻上監督 「トイレの神様」について―
「一つの映像が浮かんでくるような歌。本当に一つの映画を観ているような歌。感動して涙できるような歌。」
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植村花菜 トイレ掃除の意義について―
「小さい頃、トイレ掃除だけがどうしてもいやで、出来なかった時に(祖母から)『トイレにはすごいきれいな女神様がいて、毎日トイレ掃除を頑張ったら女神様みたいにきれになれるんやで』と言われ、その日から掃除をするようになった。
(中略)べっぴんになるだけじゃなくて、金運や健康運にもいいみたいなので、是非皆さん、トイレ掃除を・・・。なんか私、トイレの宣伝しているみたい(笑)」
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荻上監督 もたいさん演じる“ばーちゃん”について―
「すごく面白くて存在感のあるオーラを出してくれている。」
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荻上監督 作品について―
「ユーモアと愛情をたっぷりと込めて作った映画なので是非皆さんに楽しんでもらいたい。」
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tiuemura トーク終了後:植村花菜が「トイレの神様」を熱唱。

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▼『トイレット』作品・公開情報
日本・カナダ/2010年/109分
脚本・監督:荻上直子
出演:アレックス・ハウス
タチアナ・マズラニー デイヴィッド・レンドル
サチ・パーカー
もたいまさこ
配給:ショウゲート/スールキートス
フードスタイリスト:飯島奈美
衣装:堀越絹衣
コピーライト:(c)2010“トイレット”フィルムパートナーズ
『トイレット』公式サイト(注:音が出ます)
※2010年8月28日(土)より、新宿ピカデリー、銀座テアトルシネマ、シネクイントほか全国ロードショー。
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文:吉永くま
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