映画の達人―東京学生映画祭番外編(崔洋一監督/中村義洋監督/伊藤さとりさん)

  • 2010年06月13日更新

映画の達人5r

「映画の達人」は映画界で活躍する皆さんに愛してやまない映画について熱く語っていただくコーナーです。

今回で22回目を迎えた、学生映画の登竜門である東京学生映画祭。数多くの映画人を輩出しているこの映画祭の審査をするのは、崔洋一監督、中村義洋監督、そして映画パーソナリティの伊藤さとりさん。技術のうまさだけでなく、枠組みからはみだし、感情をむき出しにした学生映画を観てみたいと語る審査員の方々の言葉は学生映画への厳しい提言であり、温かいエールでもありました。そんな映画の達人である、お三方が選ばれた「学生映画人に観て欲しい映画作品」は自分の表現したいもののルーツを探ることの大切さを知る古典作品。コンビニエンスにYou tubeやニコニコ動画で映像を楽しむこともできるけれど、深く、ルーツを知ることの大切さを語る崔監督の本音のお話をお楽しみください

 

「どうはみ出していくか?学生映画ならではの奇想天外なものをもっともっと観たい」映画の達人3r
(今回の東京学生映画祭の作品は)簡単にいうとみんなうまい。このうまさは機材の進化や編集上のテクニック向上によって一般映画、商業映画に近いレベルになっている。でもそんなことより「お前の心のうちはなんなんだ」っていう、ところをもっともっと見ていきたいというのが本音なんです。その中では、(グランプリを受賞した)ハイランド。田崎さんの作り上げてきた世界というのは、ある意味では学生映画の伝統的な世界です。こじんまりとした作品だけれど、こじんまりとした中から普遍性のようなものを感じていただけたら。
エコーズは観客賞と準グランプリのダブル受賞ですよね。あれは言ってみればうまい。でも(職業にしている人にはない)学生の自由をもって進化させて欲しい。そうすると東京の枠組みを超えて、海を渡って世界で評価されることがあるし、学生の枠組みを超えて一般公開の道もある。志というのかな、大いなる野望というのか、そういうものをもって作ること。それはうまい下手とはちょっと違うんだな。
今回残念だったのは、実験映画的なものが皆無だった。オールディーズの匂いをさせたのは8/21だけれども。もっともっと奇想天外なものを観ていきたいですね。

 

「ルーツを知っている奴は一歩突き抜けている。そういうクリエーターは強いよ。」
映画の達人2r_映画の達人4rアメリカの学生とこの前話をしたのですが、日本の学生はうまくまとまっていてはいるけれど、突き抜け感がないのかもしれないと感じた。でも、映画をやるものは先端にいて、突き抜けて欲しい。否定するも肯定するも、ある枠組みを突き破ってくるような、そういう息吹というか、想像力を観ていきたい。 学生に観て欲しい作品として、3人ともが古典を出していたけれど、古典を観ることはルーツを知ること。「なぜそのルーツに自分はたどり着きたい」と思うのかっていう批評性を持っているクリエイターというのは強い。だから、ルーツを知っている奴は一歩突き抜けているんです。エイゼンシュテインの「十月」とか「前線」とはすごくカッティング細かい。現在PV作る製作者のごくごくノーマルなテクニックになっているんだけど、20代のクリエイターたちはこのテクニックを誰が作り上げたのかを知らないんだよね。ルーツを知らないクリエイターは長続きしないんじゃないかな(笑)

ゲスト審査員三人の「若き映画人はこれを観ろ」
崔洋一監督
ラ・ジュテ [DVD]「ラジュテ」(1962年:監督クリス・マルケル)
40年以上前に作られた28分のスチール構成のモノクロの映画だけれど、多くアメリカのちょっとできる30代の監督が影響を受けた作品であることを知ってもらいたい。「マトリックス」のウォシャウスキー監督のルーツもここにある。

 

 

意志の勝利 [DVD] 意思の勝利」(1935年:監督レニ・リーフェンシュタール)
この作品はナチのプロパガンダで(当時は礼讃され)後に非難されるけど、これから百年後はどうなるのか?とても貴重な人類が共有しなければならない財産ではあるけれど、残った作品の受け止め方は変わってしまう。こういう作品に関心を持ってもらいたい。

 

 

「ハイランド」「エコーズ」(第22回東京学生映画祭グランプリ、準グランプリ作品)
映画を作る学生に、君たちと同じ所はどこか、そして君たちと違う所はどこか?刺激を受けて、何かを感じてもらいたい。
中村義洋監督
抵抗-死刑囚は逃げた [DVD]「抵抗(レジスタンス )」(1956年 監督:ロベール・ブレッソン)
シンプルな作品。余計なものをそぎ落とすとこうなるというものを観てもらいたい。

 

 

 

  

伊藤さとりさん
戦艦ポチョムキン[DVD]「戦艦ポチョムキン」(1925年 監督:セルゲイ・エイゼンシュテイン)
衝撃を受けました。トーキーの素晴らしさというか、トーキーでここまで人間を表現できることを観てください。

 

 

 

映画の達人1▼関連記事
東京学生映画祭-未来の日本映画を変える監督たち
東京学生映画祭授賞式―グランプリは早稲田大学女性監督の手に

取材、文:白玉 撮影:吉濱篤志、道川昭如
改行

  • 2010年06月13日更新

トラックバックURL:http://mini-theater.com/2010/06/13/4952/trackback/