カンヌ国際映画祭 コンペ部門でイム・サンス監督が『下女』お披露目

  • 2010年05月16日更新

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12~23日の日程で開催されているカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で、韓国イム・サンス監督作品『下女』(英題:The Housemaid)が上映された。韓国映画界の傑作と語られる故キム・ギヨン監督の1960年の作品を、50年経った現在、再びスクリーンに蘇らせた同作。2年前『シークレット・サンシャイン』でカンヌ主演女優賞に輝いたチョン・ドヨンがヒロインを演じ、またまた圧倒的な存在感を見せつけた。

カンヌが再びチョン・ドヨンにひれ伏す?!

使用人として仕える上流階級の家の主人と愛人関係になり、一家に修復不能な崩壊をもたらす―ヒロインの役柄をこう説明すると、なんともおどろおどろしい。しかし『下女』の主人公は、こんな泥沼を少女のような天真爛漫さで、愚直なまでに従順に這い回る。演じるチョン・ドヨン。息子の死によって心を閉ざしたシングル・マザーを熱演した『シークレット・サンシャイン』から2年。結婚・出産を経てスクリーンに帰ってきた彼女は、むしろ以前より若々しく、同作では時折10代のような幼い表情を見せている。その同じ女性が深夜、妻の目を盗んで家の主人の性の僕と化するのだから、妖しいったらない。

食物連鎖の最も低いところに位置する“下等人間”。ヒロインは自分が「それ」であると受け入れ、「それ」に徹して奉仕する。しかし、自分が支えとすべきものが何もないと気がついた時、彼女は思いもよらない行動に出る・・・。
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gejosb 記者会見に臨むドヨン。

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まさに“カメレオン女優”である。早くもカンヌ2冠目が転がり込んできたりして・・・そう期待させて余りある、情感あふれる名演を見せる。

半世紀も前の作品、しかも「上流階級と使用人」などという一見時代錯誤とも思えるテーマの作品をリメイクしたことについて、イム監督は記者会見で、「韓国の社会はこの50年で大きな変化を遂げた。急速に発展した。しかし、(観客の)反応は変わったのだろうか?ということを忘れてはならない」と語っている。映画祭前には自身の作品を「コンペティション部門でもっとも退屈でない映画」と言い放ったという監督。「我々は人が見たくなる作品を撮るのです」と、改めて今作品に対する自信をのぞかせた。

そんな監督の言葉に筆者が説得力を感じるのは、プレス向け上映で体験した客席の反応だ。深夜の上映回だったにもかかわらず、随所で笑い声が上がり、クライマックスでは息を呑む音が響き、上映終了後には湧き上がるような拍手が起こった。コンペティションの結果がどうなるかは分からない。しかし、イム監督は確かに、観客を興奮させる映画作りに成功していた。

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gejokaiken 記者会見中のイム監督(中央)。右はドヨン、左は裕福な家庭の主人を演じたヨン・ヨジョン。

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取材・文:新田理恵
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