8月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―
- 2022年07月31日更新
8月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! あなたが観たいのは、どの映画!?
LINE UP 8/5(金)公開『甲州街道から愛を込めて』 8/5(金)公開『コンビニエンス・ストーリー』 8/5(金)公開『長崎の郵便配達』 8/5(金)公開『プアン/友だちと呼ばせて』 8/6(土)公開『とら男』 8/6(土)公開『裸足で鳴らしてみせろ』 8/11(木)公開『ぜんぶ、ボクのせい』 8/12(金)公開『キングメーカー 大統領を作った男』 8/12(金)公開『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』 8/12(金)公開『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』 8/13(土)公開『時代革命』 8/19(金)公開『セイント・フランシス』 8/20(土)公開『みんなのヴァカンス』 8/26(金)公開『サハラのカフェのマリカ』 |
更新情報:8月6日に『キングメーカー 大統領を作った男』を追加掲載しました。
『甲州街道から愛を込めて』
ほろ苦くすがすがしい、男女4人の小さな旅
“生きづらい世の中を懸命に生きる若者たちの恋とセックスを描く” 新レーベル「マヨナカキネマ」の第二弾は、生きるのがヘタな男女4人が甲州街道を車で旅する青春ロードムービー。売れないミュージシャンのリリコ、リリコの親友で都合のいい女扱いの末に彼氏にフラれたマナミ、フリーターのタイチとその彼女でメンヘラ女子のルミ。4人はひょんなことから出会い、高校時代の片思い相手に告白するというマナミのため東京から山梨へと車で向かう……。四者四様に生きづらさを抱えた彼らが、旅の途中で起こるささいなことをきっかけに自分を見つめ、それぞれが一歩を踏み出していく。キラキラした青春とはほど遠い小さな旅の物語だが、ほろ苦くもすがすがしい余韻が胸に残った。(min)
2022年8月5日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022 年/日本/82分/R15+)監督:いまおかしんじ 出演:有里まりな、古瀬リナオ、遠藤史也、和田瞳 ほか 製作・配給:キングレコード © 2022キングレコード
◆関連記事:『甲州街道から愛を込めて』— 8月公開!いまおかしんじ監督による人生負け組男女4人組の青春ロードムービー、予告編解禁
『コンビニエンス・ストーリー』
不思議の国から不思議の国にワープするファンタジー
売れない脚本家の加藤は、スランプの腹いせに恋人がかわいがっていた犬を人里離れた山中に捨ててしまう。罪悪感から探しに戻った加藤は、霧の原野にぽつんとたたずむコンビニエンスストアを見つけるが……。『大怪獣のあとしまつ』の三木聡監督が、パラレルワールドをモチーフに不条理の世界を描いたダークファンタジー。異次元に飛ぶ前からすでに現実感がなく、いわば不思議の国から別の不思議の国にワープするようで、構造自体が斬新極まりない。登場人物も、片山友希演じるこっちの世界の恋人や、六角精児のあっちの世界のコンビニ店主と、どちらの次元にも癖の強いキャラクターが現れ、主人公と同時に観客の脳内も引っかき回す。夜祭りの幻想的な風景などどこか懐かしさに彩られた映像美も見もので、映画表現の新たな可能性に触れた気がした。(藤井克郎)
2022年8月5日(金)より全国公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/日本/97分) 監督・脚本:三木聡 出演:成田凌、前田敦子、六角精児 ほか 配給:東映ビデオ © 2022「コンビニエンス・ストーリー」製作委員会
◆オススメ記事:一般社団法人外国映画輸入配給協会 発足50年記念式 外国映画ベストサポーター賞授賞式―政治学者の藤原帰一さんとAKB48の前田敦子さんが受賞
『長崎の郵便配達』
娘がたどる亡き父と原爆被爆者との心の交流
イギリスのマーガレット王女とのロマンスが映画『ローマの休日』のモチーフになったと言われるジャーナリスト、ピーター・タウンゼンド氏と、長崎の原爆被爆者、谷口稜曄さんとの交流を、タウンゼンド氏の娘でフランス在住の女優、イザベル・タウンゼンドさんが追体験するドキュメンタリー。14歳で郵便局に就職した谷口さんは、自転車で郵便物を配達中に被爆。タウンゼンド氏は戦争被害の子どもたちに関心があり、来日した際に谷口さんの証言、活動に接してノンフィクション小説を出版する。その復刊を願う谷口さんから遺志を託された川瀬美香監督が、イザベルさんをナビゲーターに、2017年に死去した谷口さんの足跡をたどる。映画に出演することで、イザベルさんが亡き父の平和への希求に触れることにもなり、改めて映画の持つ波及力を実感した。(藤井克郎)
2022年8月5日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/97分) 監督・撮影:川瀬美香 出演:イザベル・タウンゼンド、谷口稜曄、ピーター・タウンゼンド ほか 配給:ロングライド © The Postman from Nagasaki Film Partners、©︎ 坂本肖美
『プアン/友だちと呼ばせて』
話題性抜群のタッグで贈る、切なくエモーショナルな恋と友情の物語
監督は『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のバズ・プーンピリヤ(ナタウット・プーンピリヤ)、製作総指揮にウォン・カーウァイ。そんな話題性抜群のタッグで贈る、切なくエモーショナルな恋と友情の物語。NYでバーを経営するボスに、バンコクにいる友人のウードから久しぶりに電話が入る。その用件とは「白血病で余命宣告を受けたので帰ってきてくれ」という衝撃的なものだった。バンコクに戻ったボスは、ウードの元カノたちを巡る旅の運転手を頼まれ……。カーステレオから流れる音楽とウードの亡き父であるDJの声、どこかノスタルジックな画作り、散りばめられたスタイリッシュな演出は、ウォン・カーウァイの世界観も彷彿とさせ、観ているだけでも胸がキュッとする。元カノたちがウードと再会した時に見せる複雑な表情にも切なく心が疼いた。やがてボスに明かされる、ウードの本当の目的とは――。プレイボーイを魅力的に演じたトー・タナポップと、余命僅かな役に17キロの減量で挑んだアイス・ナッタラット、タイの人気俳優の共演も眼福だ。(min)
2022年8月5日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/タイ/129分)原題:One For The Road 監督:バズ・プーンピリヤ 製作総指揮:ウォン・カーウァイ 出演:トー・タナポップ、アイス・ナッタラット、プローイ・ホーワン、ヌン・シラパン、ヴィオーレット・ウォーティア、オークベープ・チュティモン ほか 配給:ギャガ © 2021 Jet Tone Contents Inc. All Rights Reserved.
◆オススメ記事
・『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』-タイの天才女子高生が手がける世界を股にかけたカンニング・プロジェクト!
・『ハッピー・オールド・イヤー』短評―記憶の断捨離は難しい!
『とら男』
元刑事が本人役を演じて未解決の殺人事件に挑む
石川県金沢市で1992年に起きた未解決事件をモデルに、事件を担当した元刑事が自分自身を演じて真相に迫るという極めて異色の作品。同県出身の村山和也監督が初の長編として手がけた。女性スイミングコーチ殺人事件の担当刑事だった西村虎男は、42年の警察人生を終えた後も事件のことが頭から離れなかった。ある日、居酒屋で東京から植物調査に来た女子大学生のかや子と出会った虎男は、彼女がメタセコイヤの葉に興味を持っていたことで事件のことを話し出す。メタセコイヤは、事件の鍵を握るアイテムだった。とにかく本人を演じた西村の存在感が圧倒的で、金沢弁全開のせりふといい、苦渋に満ちた表情といい、本物だからこその説得力に満ちている。しかも西村の推理する犯人像にまで踏み込むという大胆さで、村山監督の胆力にうなった。(藤井克郎)
2022年8月6日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/97分) 監督・脚本:村山和也 出演:西村虎男、加藤才紀子、緒方彩乃 ほか 配給:「とら男」製作委員会 ©「とら男」製作委員会
◆関連記事:『とら男』8月公開決定— 元刑事が主演!? 実在の未解決事件の真相に迫る!
『裸足で鳴らしてみせろ』
誰とも引きつけ合わない2人が再現する世界の音
『オーファンズ・ブルース』でPFFアワードのグランプリを受賞した工藤梨穂監督が、PFFスカラシップで撮った作品。青春ならではのうずきを、独特の発想力とみずみずしい感性で織り上げた。泳ぎが苦手な直己は、水を克服するために出かけたプールで槙と名乗る青年と出会う。盲目の養母、美鳥と2人で暮らす槙は、病で倒れた美鳥から「自分の代わりに世界を見てきてほしい」と頼まれ、直己と一計を巡らす。彼女の思いに応えようと、2人で世界各地の音を再現する描写が素晴らしい。プールに忍び込んだり、パン粉や小麦粉を駆使したりして、青の洞窟やサハラ砂漠などの空気感を醸し出す。まるで映画づくりの原点とも言える仕掛けで、おとぎ話のような世界観に心がほっこりした。一方で「磁場のように誰とも引きつけ合わない」2人の関係性の表現にも注目だ。(藤井克郎)
2022年8月6日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/日本/128分)英題:Let Me Hear It Barefoot 脚本・監督:工藤梨穂 出演:佐々木詩音、諏訪珠理、伊藤歌歩 ほか 配給:一般社団法人PFF、マジックアワー ©2021 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF
◆オススメ記事:『オーファンズ・ブルース』短評:永遠の夏のなかで、薄れゆく愛しき面影を探して
『ぜんぶ、ボクのせい』
おっちゃんと少女とボクが奏でる友情のハーモニー
児童養護施設で暮らす13歳の優太は周囲になじめず、母が迎えに来てくれることを信じてつらい毎日を過ごしていた。ある日、母の居場所を知った優太は、施設を抜け出してそのアパートに向かうが、ようやく会えた母には冷たく追い返される。行き場を失った優太は、海辺の町で軽トラックに住むホームレスのおっちゃんと出会うが……。優太とおっちゃん、それに心に空虚感を抱える少女、詩織との奇妙な友情が、今井孝博カメラマンによる奇跡的なショットの連続で紡がれる。おっちゃんを演じるオダギリジョーの味わいのあるたたずまいが素晴らしく、詩織役の川島鈴遥、オーディションで抜擢された優太役の白鳥晴都との絶妙なハーモニーが心に深く染み入る。何ともすてきなアンサンブルを構築した1992年生まれ松本優作監督の辣腕には驚くばかりだ。(藤井克郎)
2022年8月11日(木・祝)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2022年/日本/121分/PG12) 監督・脚本:松本優作 出演:白鳥晴都、川島鈴遥、オダギリジョー ほか 配給:ビターズ・エンド © 2022『ぜんぶ、ボクのせい』製作委員会
『キングメーカー 大統領を作った男』
熾烈な韓国選挙戦の裏側を描く政治サスペンス
韓国のキム・デジュン元大統領とその選挙参謀だったオム・チャンノクの実際のエピソードをもとにしたフィクションで、1960年代から70年代の熾烈な選挙戦の裏側が描かれる。1961年、長期独裁政権の打倒を目指す政治家キム・ウンボムの理想に共鳴したソ・チャンデは、彼の選挙事務所を訪問。キム陣営の影のブレーンとなり、勝つために汚い手段も取り始める。だが、ある爆破事件を機に両者の間に最大のピンチが訪れる-。撮影から照明、小道具までこだわりを見せたという本作では当時の選挙戦の様子が緻密に再現され、この時代に漂う独特の雰囲気に引き込まれる。光が当たる道を歩く政治家に対し、どんなに戦略が成功しても参謀は影でしかない。実力派俳優のイ・ソンギュンが、ソ・チャンデという天才策士でありながら自分の存在や立場に苦悩する複雑な役を見事に演じている。過酷な世界に生きる男の強さ、厳しさ、哀しさを浮かび上がらせた、深みのある政治サスペンスだ。(吉永くま)
2022年8月12日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/韓国/123分)原題:킹메이커 監督:ビョン・ソンヒョン 出演:ソル・ギョング、イ・ソンギュン、ユ・ジェミョン ほか 配給:ツイン © 2021 MegaboxJoongAng PLUS M & SEE AT FILM CO.,LTD. ALL RIGHTS RESERVED.
◆オススメ記事
・『名もなき野良犬の輪舞』― 裏社会で結ばれた哀しき男たちの絆と背信をスタイリッシュな映像で描く注目作!
・韓国ノワール映画に新たな歴史を刻んだ新鋭監督―『名もなき野良犬の輪舞』ビョン・ソンヒョン監督インタビュー
『ストーリー・オブ・マイ・ワイフ』
狂おしくもどかしい大人の愛
『心と体と』でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したハンガリーのイルディコー・エニェディ監督が、狂おしくもどかしい大人の愛を描く。1920年マルタ共和国。友人と「カフェに最初に入ってきた女性と結婚する」という賭けをした船長のヤコブは、そこでリジ―という美しい女性に出会う。彼はリジーと夫婦となり幸せな時間を過ごしていたが、やがて彼女の友人デダンに嫉妬を覚えるようになる……。妻になったはずの女が腕からすり抜けていく苛立ち。広大な海で船を操る船長がたった一人を制御できない不安。一貫してヤコブの視点で描かれており、観る側も彼の感情に共鳴し、奔放な妻の言動に共に振り回されることになる。マルタ共和国からパリ、ハンブルグへと移る舞台とこの時代への憧憬も手伝い、絵画のような映像で綴られる甘美でほろ苦い物語に陶酔した。(吉永くま)
2022年8月12日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/ハンガリー・ドイツ・フランス・イタリア/169分/PG12)原題:A felesegem tortenete 監督・脚本:イルディコー・エニェディ 出演:レア・セドゥ、ハイス・ナバー、ルイ・ガレル ほか 配給: 彩プロ © 2021 Inforg-M&M Film – Komplizen Film – Palosanto Films – Pyramide Productions – RAI Cinema – ARTE France Cinema – WDR/Arte
『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』
絶望から復活した天才ソングライター
60年代のカリフォルニア・サウンドを代表するザ・ビーチ・ボーイズの創設メンバーで、天賦の才能を持つソングライター、ブライアン・ウィルソン。その栄光と挫折、再生に迫る密着ドキュメンタリー。今回のインタビュアーでもある古い友人とともに、車で思い出の地を巡る。ヒット曲や新曲などが散りばめられた本作では、アーカイブ映像や著名人のコメントをはさみながら、自身の言葉で半生を語る姿が映し出されるが、それは一言では言い表せないほど波乱に満ちている。若くしての成功、周囲との確執、薬物依存、精神科医による洗脳、バンドメンバーで故人となった弟たちへの思い、2番目の妻との出会い、そして復活。懐古や追憶というよりもむしろ、現在進行形の人生に焦点を当てている。その楽曲は長い間多くの人を魅了し、心の糧となってきた。今も精神的な不調を抱えながら愛する音楽とともに生きる彼に、感謝とエールを送りたくなる。(吉永くま)
2022年8月12日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/アメリカ/93分)原題:Brian Wilson: Long Promised Road 監督:ブレント・ウィルソン 出演:ブライアン・ウィルソン、ジェイソン・ファイン、ブルース・スプリングスティーン、エルトン・ジョン、アル・ジャーディン ほか 配給:パルコ ユニバーサル映画 Ⓒ 2021TEXAS PET SOUNDS PRODUCTIONS, LLC
◆オススメ記事:『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』
『時代革命』
香港デモ隊の若者たちが体験した圧倒的な臨場感
2021年のカンヌ国際映画祭でサプライズ上映され、観客の度肝を抜いた衝撃のドキュメンタリー。2019年6月、香港で民主化を求める大規模なデモが発生する。参加者の大半は、10代を含む若者たちだった。映画は、そんな彼らの思いと行動を、覆面インタビューと生々しい実録映像を交えて示していく。デモ隊の中では、パパやママ、トラックなど、お互いにニックネームで呼び合う家族のような絆が生まれ、当局との闘争に勇気を奮い立たせていく。中文大学での攻防で成果を上げた彼らは、次に理工大学に立てこもるが、ここで大きな悲劇が起こる。キウィ・チョウ監督は、最前線でカメラを回し続けた女性ジャーナリストの映像なども駆使し、若者たちが何に憤慨し、どんな世の中を願っているかをつぶさにすくい取る。この臨場感には、圧倒されたという言葉以外、見つからない。(藤井克郎)
2022年8月13日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2021年/香港/158分)英題:REVOLUTION OF OUR TIMES 監督:キウィ・チョウ(周冠威) 配給:太秦 © Haven Productions Ltd.
◆オススメ記事:『香港画』短評―ごく普通の若者が遭遇する自由への弾圧
『セイント・フランシス』
不安を抱く30代半ばの女性を変えたものは
34歳独身で、大学も中退しレストランの給仕として働くブリジット。親友は子供の話に夢中だし、周りからは同情的な視線を向けられる。うだつのあがらない日々を過ごすブリジットだったが、ナニー(子守り)の短期仕事先の6歳の少女フランシスや彼女のレズビアンカップルの両親との出会いにより、少しずつ変化の光が差すようになり……。生理や妊娠、中絶などに関するあけすけな描写やブリジットの言動に、初めは戸惑うものの、劣等感や不安を抱く30代女性の姿が何ともリアルで突き刺さる。人種問題や女性の心身の変化などシリアスな場面を織り込みながらも、重くなり過ぎない適度な軽さと明るさが本作の魅力。ちょっとませた少女フランシスとの交流でブリジットの心がほどけていく様子は、手詰まりの人生からの解放を予感させる。(吉永くま)
2022年8月19日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/アメリカ/101分)原題:Saint Frances 監督:アレックス・トンプソン 出演:ケリー・オサリヴァン、ラモーナ・エディス・ウィリアムズ、チャリン・アルヴァレス ほか 配給:ハーク © 2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED
『みんなのヴァカンス』
学生たちの出演で繰り広げる抱腹絶倒のコメディー
夏の夜、パリのセーヌ河畔で出会ったアルマに恋をしたフェリックスは、家族とヴァカンスに出かけたアルマの後を追って、南フランスのキャンプ場に行くことにする。親友のシェリフとともに、出会い系アプリで見つけたエドゥアールの車に相乗りをして出発するが、フェリックスのせいで事故を起こし、エドゥアールも2人と一緒にキャンプ場に足止めを食らうはめになる。わがままなフェリックス、気のいいシェリフ、偏屈なエドゥアールという3人のキャラクターにアルマをはじめとした女性たちが絡んで、抱腹絶倒の場面が続出。主な出演者はフランス国立高等演劇学校の学生たちだが、シナリオなのかアドリブなのか分からない当意即妙の掛け合いが楽しい。未成熟の個性を巧みに弾き出したギヨーム・ブラック監督の演出力に酔いしれた。(藤井克郎)
2022年8月20日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2020年/フランス/100分)原題:À l’abordage 監督・脚本:ギヨーム・ブラック 出演:エリック・ナンチュアング、サリフ・シセ、エドゥアール・シュルピス ほか 配給:エタンチェ ©2020 – Geko Films – ARTE France
『サハラのカフェのマリカ』
砂漠の街道沿いに漂うまったりとした時間
アルジェリアのサハラ砂漠を突っ切る街道沿いにたたずむ1軒のカフェを舞台にしたドキュメンタリー。精巧に作り込まれたような、それでいて何とも自然に漂っている感覚が魅力的な作品だ。カフェを切り盛りする女主人のマリカは、1匹の猫と2匹の犬と一緒にここで暮らしている。1994年から店を開いていて、結婚したことはなく、子どもはいない。街道を行き交うドライバーとときどき会話を交わす程度で、そう代わり映えのしない毎日を過ごしている。近くにガソリンスタンドができてカフェが併設されるらしいと聞いても、動じる様子はない。1986年生まれのハッセン・フェルハーニ監督は、客との会話から浮き上がるマリカの人生に思いをはせながら、この殺風景ながらもどこか幻想的な風景をただただ映し出す。まったりとした時間が、妙に心地いい。(藤井克郎)
2022年8月26日(金)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2019年/アルジェリア、フランス、カタール/104分)原題:143 Rue du Désert 英題:143 Sahara Street 監督・撮影:ハッセン・フェルハーニ 配給:ムーリンプロダクション © 143 rue du désert Hassen Ferhani Centrale Électrique -Allers Retours Films
ページトップへ戻る
- 2022年07月31日更新
トラックバックURL:https://mini-theater.com/2022/07/31/8-new-movies-in-theaters-6/trackback/