ミニシアターに行こう。

2021年11月6日（土）から11日（木）まで、東京・渋谷のユーロスペースにて『イスラーム映画祭6エクステンデッド』が開催される。この特集で上映されるのは、今年2月に同館で行われた「イスラーム映画祭6」のラインナップのうち、東京都の新型コロナウイルス感染症防止対策に基づく時短要請の影響により延期されていた全6作品。

イエメンで史上初めて製作・公開された国産の商業映画や、第一次タリバン政権崩壊から約10年後のアフガニスタンの首都カーブルを舞台にした12歳の少女が主人公のドラマなどが、毎日19時より日替わりで上映される。

また、初日の6日（土）には、2000年代のドイツで起こった移民殺害事件の遺族を取材したドキュメンタリー『痕跡』のアイスン・バデムソイ監督が出席する、オンライントークイベントが実施される。

＊＊＊＊＊＊＊＊

主宰者の藤本高之氏が2015年に立ち上げた「イスラーム映画祭」は、中東や北アフリカ、アジアに広がるイスラーム文化圏を舞台にした映画、またはそこに住む人々（ムスリムのみならず）を描いた作品を上映する“全額自己負担”の個人企画｡もともと藤本氏自身が中東やアフリカなど非欧米圏の映画が好きだったこともあるが、“9.11”以降世界中に広がったイスラモフォビアへのアンチとして映画祭を始めた。

日本で上映される中東やアフリカの映画は、欧米作品に比べて本数が少ないことに加え、紹介されても欧米の映画祭で評価されたものが多い。そのため、なるべく “現地”の目線、すなわち現地出身で現地の事情をよく知っている製作者が手掛けている映画を紹介するようにしているという。

＊＊＊＊＊＊＊＊
時折耳にするニュースからは窺いしれない、それぞれの国や地域に息づく文化や暮らし。そして、そこに生きる人々の悲しみ、喜び、怒り。この映画祭は、私たちの固定観念を取り払い、さまざまな側面から“知る”機会を与えてくれるのではないだろうか。

＜上映スケジュール＞　※各日19時開始
11月6日（土）『痕跡 NSUナチ・アンダーグラウンドの犠牲者』
11月7日（日）『私の娘の香り』
11月8日（月）『汝は二十歳で死ぬ』
11月9日（火）『青い空、碧の海、真っ赤な大地』
11月1o日（水）『ミナは歩いてゆく』
11月11日（木）『結婚式、10日前』

※詳しい上映スケジュール等は公式サイトをご確認ください。

 

イスラーム映画祭6エクステンデッド上映作品 ラインナップ

『痕跡 NSUナチ・アンダーグラウンドの犠牲者』

兄の追悼式のため、ハンブルクへ戻ってきたスレイマン。ドルトムントに住むエリフとガムゼの母娘。そして事件後、トルコに帰国したアディレとセミア母娘。それぞれがネオナチに命を奪われた兄や父、夫の思い出を語る……｡

（2019年／ドイツ／81分）　監督：アイスン・バデムソイ
（2019年／ドイツ／81分）　監督：アイスン・バデムソイ

---

『私の娘の香り』

南仏ニースのテロで家族を失ったアルメニア系移民二世のベアトリスは、父の遺言を尊重し遺体をトルコの故郷に埋葬する。同じ頃ISISから救出されたクルド人少女ヘヴィは、難民キャンプにいる姉を捜すため逃走する……｡
（2019年／トルコ＝アメリカ＝フランス／96分）　監督：オルグン・オズデミル

---

『汝は二十歳で死ぬ』

出生時に、村のシャイフから20歳で死ぬと予言されたムザンミル。父は予言に怖れ慄いて家を離れ、母は彼を過保護に育てる。成長したムザンミルはある日、洋行帰りの男スライマーンと出会い世界の広さを教えられるが……｡
（2019年／スーダン＝エジプト＝フランス＝ドイツ＝ノルウェー＝カタール／102分）　監督：アムジャド・アブー・アラー

---

『青い空、碧の海、真っ赤な大地』

ケーララのムスリム青年カシは、突然姿を消した恋人アシの故郷ナガランドを目指し、友人のスニと4,800キロの旅に出る。途中、夜盗に襲われ、バイカー集団に助けられた2人は、彼らに誘われるままプリーに立ち寄る……｡
（2013年／インド／137分）　監督：サミール・ターヒル
（2013年／インド／137分）　監督：サミール・ターヒル

---

『ミナは歩いてゆく』

アルツハイマー病の祖父と、麻薬中毒で働かない父親を養うため、学校に通いながら路上で物売りをしている12歳のミナ。彼女は、自分の元締めでもあり、父親に麻薬を売っているバシールにそれをやめるよう掛けあうが……。
（2015年／アフガニスタン=カナダ／110分）　監督：ユセフ・バラキ
（2015年／アフガニスタン=カナダ／110分）　監督：ユセフ・バラキ

---

『結婚式、10日前』

結婚式を10日後に控えたラシャーとマアムーン。だが、マアムーンは2人で住むはずだった実家の部屋を出るはめになる。一方、3年前の内戦で家を失ったラシャーとその家族は、父のいとこサリームの世話になっていた……｡
（2018年／イエメン／121分）　監督：アムルー・ガマール

▼「イスラーム映画祭6エクステンデッド」開催情報

日程：2021年11月6日（土）～11月11日（木）
会場：ユーロスペース　渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 3F
主催：イスラーム映画祭

【入場料金】
一般1500円（火曜サービスデー1200円）／会員・シニア・大学・専門学校生1200円／高校生800円（オンラインは900円）／中学生以下500円（オンラインは600円）
※詳細は、劇場に直接お問い合わせください。。

● 「イスラーム映画祭6エクステンデッド」公式サイト

編集・文：吉永くま

トラックバックURL：https://mini-theater.com/2021/11/01/6-6/trackback/