『夏少女』— 早坂暁が反戦・反核の思いを込めて描いた、ひと夏のファンタジー
- 2019年08月01日更新
完成から23年の時を経て初の劇場公開へ
『夢千代日記』ほか数々のドラマ・映画脚本を手掛けた、日本を代表する脚本家・早坂暁。彼が自身の原爆体験を踏まえて執筆した幻の名作映画『夏少女』が、この夏に公開される。
桃井かおりを主演に迎え、『若者たち』『不撓不屈』などの名匠・森川時久監督がメガホンを執った本作が完成したのは、1996年。製作時の諸事情から四半世紀ものあいだ封印されていたが、早坂暁生誕90周年の今年、奇跡的にオリジナルネガが発見されて初の劇場公開を迎えることとなった。
不思議な少女と一家が過ごすひと夏のファンタジー
瀬戸内海に浮かぶ人口3000人の小さな島に住む、12歳の少年マモル。母(桃井かおり)は郵便船の船長として家計を支え、父(間寛平)は一日の大半をゴロゴロと寝そべりながら雑貨屋を営んでいる。一見、平穏に暮らす家族だが、母も父もそれぞれがヒロシマに落ちた原爆の傷跡を心に抱えていた……。
ある日、マモルはヒロシマの河原で“原爆瓦”を拾って供養している老女に出会い、瓦の一片を手渡される。それを境に、マモルの前には赤い服を着た美しい少女が現れるようになる。しかし、少女の姿はマモルの家族にしか見えていないようだ。彼女は、ヒロシマの過去と現在をつなぐ化身なのか ……?
穏やかな日常にも色濃く残る原爆の傷跡
美しい海と自然に囲まれた島で暮らすマモルの家族。少しだらしのない父親と、働き者の母親のあいだで、元気にスクスクと育ったマモルだが、12歳になった夏休みに両親が抱える苦悩を初めて聞かされる。
父は幼いころにヒロシマで被爆し、母も胎内被曝をしていた。その血が我が子へ受け継がれていくことへの不安を両親はずっと抱えて生きていた。両親のなかで終わっていない戦争を漠然と感じるマモルだが、そこへ赤い服の少女が現れる——。
▼『夏少女』作品・公開情報
(1996年/日本/91分)
監督:森川時久
脚本:早坂暁
出演:桃井かおり、間寛平、矢崎朝子、藤岡貴志、影山仁美、朱門みず穂、高原駿雄、川上夏代、坂田明(特別出演)
製作:内野谷典昭、鍋島淳、中川紗知子
撮影:東原三郎 照明:三荻国明
美術:竹内公一 録音:本田孜 音楽:桑原研郎 監督補:須藤公三
配給:© 『夏少女』上映委員会
※2019年8月3日(土)より2週間限定、ポレポレ東中野にて終戦記念モーニングショー上映
文:min
- 2019年08月01日更新
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